FOLLOW US

【コラム】決戦を前に改めて考える――なぜ、日本はオーストラリアに勝てないのか

2017.08.29

昨年10月の対決ではPKを沈め、1-1の引き分けに持ち込んだオーストラリア [写真]=Getty Images

◆立ちはだかる難敵

 なぜ日本は勝てないのか?

 今月末に決戦を控えるオーストラリアのことだ。5分け2敗。過去のワールドカップ予選において、日本は一度も勝っていない。言わば、天敵である。

 そもそも論として、アジアレベルなら普通に強い。しかも、日本の嫌なことばかり仕掛けてくる。だから、余計に戦いにくい。

 第一にロングボールだ。いくら最終ラインを押し上げて戦おうとしても、後ろからガンガン放り込まれて、気づけば撤退に次ぐ撤退。日本の苦手な肉弾戦でセカンドボールを拾われ、いとも簡単に失点――という筋書きである。何度そんな光景を見てきたことか。日本サッカーには、いまだアバウトな放り込みに対する「免疫」がないように見えて仕方がない。例えば、2年前の東アジアカップでも190センチを超える長身FWをターゲットにした北朝鮮や韓国のロングボール戦法を食らって、守備組織が崩壊。最下位に沈む要因となった。

 第二にハイクロスだ。オーストラリアのFW陣と言えば、日本が何度も痛い目に遭ってきたティム・ケーヒルをはじめ、横(外)から入ってくるボールにも滅法強い。特にサイドバックが中に絞る日本の大外(ファーサイド)は中央以上に高さがなく、そこを狙われると、対応はさらに難しくなった。

 Jリーグにロングボールを中心に攻めてくるチームは、まずいない。外からハイクロス勝負というケースも稀だ。空路より陸路、球は転がせてナンボ。そんなチームが大半である。かつて名古屋グランパスに在籍していたオーストラリアの巨人ジョシュア・ケネディが2年連続でJ1得点王を獲得したことがあるが、これも「高さを生かせば楽勝」というJの死角を物語る事例と言えるかもしれない。また、尹晶煥(現セレッソ大阪監督)が率いていた時代のサガン鳥栖などはロングボールを有効に使って、Jの強豪を大いに苦しめていた。

 球を大きく蹴り上げ、味方が落下地点へ突進していくキック・アンド・ラッシュは、どこかラグビー的だ。これをラグビー大国のオーストラリアがやると、妙にハマる。日本はその迫力に押されて、受け身に回ってきた。

長谷部誠

高さとフィジカルに苦しめられる場面も [写真]=Getty Images

 おまけに攻めるのも厄介だ。守備ブロックに侵入しても、リーチの長さ、タックルの深さ、コンタクトの強さに手を焼いて、最後の一線を越えるのが難しい。外から崩そうとしても肝心のクロスが「人間山脈」に阻まれて、なかなかフィニッシュに結びつかない。こうして攻めあぐねた末に球を失って、例のロングボールを浴びるわけだ。技術とパスワークという長所が封じられ、高さと強さに乏しい短所ばかりが顕在化する。日本にとって、これほど戦いにくい相手もいないだろう。

 こうした例は日本だけではない。1990年代後半、王国ブラジルもロングボール戦法を操る北欧の巨人ノルウェーを大の苦手にしていた。当時の監督だったマリオ・ザガロが「あんなものはサッカーじゃない!」と吐き捨てた話は、あまりにも有名だ。

 もっとも、現代では極端なロングボール戦法へ走るチームは減っている。アンジェ・ポステコグルー監督就任以降のオーストラリアも、その一つだ。体格差の少ないヨーロッパ勢相手には、ロングボールの効果が薄い。パスをつないで攻めるスタイルへ一大転換を図った。これは朗報か――と思いきや、現在の日本は球を奪ってからダイレクトに相手ゴールへ迫るカウンター型を志向している。従来とは大きく異なる「世界標準」仕様だ。過去の戦いの図式から攻略法を探っても、あまり意味がない。実際、昨年10月11日のアウェー戦では日本がガッチリ守って速攻を狙い、1-1のドローで終えている。両国の立場が入れ代わったような戦いぶりで、勝ち点1を持ち帰った。

◆では、どう戦う?

日本代表

31日の大一番に向けて調整を進める日本代表 [写真]=佐藤博之

 オーストラリアの「陸路攻め」は日本にとって好都合だ。少なくとも、前線からのプレスをロングボールであっさりスキップされるケースは少ない。うまくプレスを連動させて、相手のパスワークを寸断し、中盤から前で球を奪えば一気にチャンスが広がるだろう。

 だが、理屈はそうでも、実践できるかどうかはまた別の話だ。活動期間の少ない代表の宿命か、プレスの嵌め方や連動性に波がある。しかも、高温多湿ならプレスの強度も微調整が必要だ。ハードワークは当然でも、それが行き過ぎてオーバーワークに陥っては元も子もない。
また、噛み合わせの問題もある。予想されるオーストラリアのシステムは3-4-2-1。日本が4バックのゾーンで守備ブロックを組めば、マッチアップにズレが生じやすい。その穴を埋める工夫がないと、プレスが嵌まらず、いいようにパスを回される恐れがある。

 特に高い位置でフリーになりやすいウイングバックを、どう捕まえるか。これにサイドMFをぶつけて自陣に押し込まれると、逆襲へ転じるのが難しい。前方のパスコースが1トップとトップ下の2枚しかないからだ。

 おまけに、オーストラリアは球を失った後のカウンタープレスが速く、鋭い。下手をすると自陣から球を逃がせず、2次攻撃を浴びる危険もある。こうなれば負けパターンへ一直線だ。そこで意識的にラインの裏へ人と球を送り込んで、一時的に押し返す細工が必要だろう。そのための「弓と矢」を用意できるかどうか。

 戦術面では(1)ウイングバック封じ(2)前線のキープ(3)ライン裏狙い――の3点がポイントになりそうだ。そもそも指揮官の志向するプレス・アンド・ラッシュを機能させるには、どれも必須のテーマだろう。

 無論、タイとの最終戦で勝ち点3を見込めるオーストラリアが慎重策に出る可能性もある。いざとなれば、ロングボールを使ってくるかもしれない。そんな厄介な罠が張りめぐらされた一戦でもあるわけだ。相手の出方次第で、柔軟に打つ手を変えられるか。イレブンが同じ意図をもって難局に当たらなければ、無事では済まない。そこで正しい進路を指し示す羅針盤が必要だろう。その意味でも、これまで以上にベンチ(指揮官)の手腕が問われているはずだ。

文=北條聡

【PR】「ABEMA de DAZN」で
日本代表戦を楽しもう!

ABEMA de DAZN

「ABEMA de DAZN」は、ABEMAでDAZNスタンダードのコンテンツ(※)が視聴できるプラン。 Jリーグ、ラ・リーガ、セリエA、リーグ・アンなどすべてのDAZNスタンダードコンテンツがABEMAで楽しめる。

さらにW杯アジア予選は日本戦全試合を配信。特にアウェイゲームはDAZN独占配信のためお見逃しなく。

月額プランは4,200円(税込)、年間プランなら32,000円(税込)で月あたり2,667円(税込)とお得だ!

※プロ野球、DAZN LINEAR、追加有料コンテンツ(ペイ・パー・ビュー)は対象外。

  1. 「ABEMA de DAZN」の年間プランなら月あたり2,667円(税込)でお得!
  2. W杯アジア予選、Jリーグ、ラ・リーガ、セリエAなどコンテンツが盛りだくさん!
  3. コメントしながらのライブ観戦追っかけ再生見逃し配信など楽しみ方も充実!

【PR】アウェイはDAZN独占配信!
アジア予選観るならお得なDMM×DAZNホーダイ!

「DMM×DAZNホーダイ」とは、DMMプレミアムとDAZNスタンダードをセットで利用できるプラン。

単体契約ならDMMプレミアム月額550円(税込)、DAZNスタンダード月額4,200円(税込)のところ、本プランなら月額3,480円(税込)だからとってもお得です。

W杯アジア最終予選の日本代表戦は全試合配信。アウェイ戦はDAZN独占配信のため、本サービスを契約して日本の勇姿を見届けよう!

  1. 「DMM×DAZNホーダイ」なら単体契約より月額1,270円(税込)も安い!
  2. W杯アジア最終予選Jリーグをはじめとする様々なスポーツ、アニメ・エンタメが見放題!
  3. 新規入会月から最大3カ月間、「DMMポイント」を550ポイント付与!

SHARE

SOCCERKING VIDEO