サウジアラビア戦に向けてトレーニングを行う柴崎岳 [写真]=Getty Images
2018 FIFAワールドカップロシア本番に向けたサバイバルの重要な一歩となる5日のサウジアラビア戦(ジェッダ)まで2日。8月31日の最終予選大一番・オーストラリア戦(埼玉)を2-0で制し、6大会連続となるW杯の切符をつかんだ日本代表は2日から現地に乗り込み、最終予選ラストマッチでの勝利に向かっている。長谷部誠(フランクフルト)、香川真司(ドルトムント)の離脱によって中盤の構成が変化すると見られる中、前回出番なしに終わった柴崎岳(ヘタフェ)のスタメン出場も日に日に現実味を帯びている。
「オーストラリア戦で自分が出るとしたら、負けているシチュエーションか、点が欲しいシチュエーションだと思っていました。日本は勝っていたし、追加点も入りましたし、そういう時は、僕は使われないなと。自分はそういうタイプかなと思っています。それでも代表のやり方、監督やチームのやりたいことも分かった。戦術理解度というのは高まったと思います」と彼は大一番をベンチで過ごした悔しさを糧に、次こそ存在感を示していく考えだ。
今回はボランチ2枚にトップ下という正三角形の中盤になる可能性が高いだけに、柴崎が入るとしたらトップ下だろう。この位置にはエース復権を狙う本田圭佑(パチューカ)やオランダでコンスタントに活躍している小林祐希(ヘーレンフェーン)がいて競争は極めて厳しい。柴崎はそれをしっかり認識したうえで、「勝ち抜く自身はある」とキッパリ言い切っている。
「どこにも競争はあると思っていますし、別に中盤に限った話ではないので。競争が多いのは日本代表にもいいこと。W杯も11人だけで戦うわけではないし、23人誰が出ても同じような力を発揮しなければいけない。いろいろな特徴の選手がいて、試合によってスタイルを変えられるような選手が必要になってくると思うので、まずは23人の中に入っていけるように頑張りたいです」
これだけ余裕あるコメントを口にできるのも、鹿島アントラーズでFIFAクラブワールドカップを戦い、レアル・マドリードとの大一番でゴールを挙げ、スペイン2部・テネリフェで実績を残して1部のヘタフェへとステップアップしたからこそ。その成長を今、ピッチ上で示すことが肝心なのだ。
仮に柴崎がサウジアラビア戦のピッチに立つことになれば、2015年10月のイラン戦(テヘラン)以来の代表戦でのプレーとなる。あの時の彼は屈強かつ大柄な相手選手につぶされ、ボールを奪われるなど、持ち前のテクニックと創造性をまるで出せずに終わった。この時染みついた「デュエルに弱い選手」というイメージが、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の評価を急降下させ、2年もの間、代表招集見送りとなる大きな要因となったのだ。
当時エースに君臨していた本田が「相手の球際やフィジカルコンタクトに慣れるには海外へ出ていくしかない。岳についてもそうだと思う」と話したように、彼は明らかにトップレベルでの国際経験が不足していた。その屈辱をバネにこの2年間、自分に足りないものを体得する努力を積み重ねてきた。こうした日々の成果が問われるのは、まさに今なのだ。
「スペインに行っただけでなく、日本にいた時もいろんな優勝経験もさせてもらいましたし、目に見えるところだけはなくて、精神的なところでも向上している。今の自分をしっかりと表現したいなと思っています」と柴崎は静かに語る。2年前と同じ中東の地で「デュエルの面でも十分戦える」という評価を受けることができれば、彼は代表定着に大きな一歩を踏み出せる。今回のリベンジの場を絶対にムダにしてはいけない。
加えて、もともとのストロングポイントである攻撃センスを遺憾なく発揮することも必要だ。ヘタフェ移籍後は、ボランチや攻撃的MFを本職としていた鹿島時代以上に前目の役割を担うことが多い。それだけゴールに直結する仕事を研ぎ澄ましてきたということ。本人もその部分を強く意識している。
「この代表チームはダイレクトでゴールに直結するようなプレーが求められているので、そこは意識してやっていきたい。ただ、試合の感覚とかリズムが一定ではいけないので、しっかりと流れを見ながら、自分の中でこうした方がいいと思うことがあれば、しっかり実行に移していきたいと思います。
ロシア本大会までの9カ月間で高めたいところ? やっぱり得点力…ゴールに絡むプレーを多くしていきたいですね。もともと自分の長所の部分でもあるので、その長所をさらに伸ばしていけるように。W杯に向けてまだまだ成長しないと戦っていけないと監督も言っていましたし、これから9カ月を有効に使えるようにしたいです」
そう話す柴崎は来年5月には26歳になる。長年の夢であるW杯の大舞台に立つとうと思うなら、今回が最大のチャンスに他ならない。そのためにもサウジアラビア戦で確かな足跡を残すことが肝要だ。
「まあ、やるしかないので」という柴崎の覚悟のほどを、ぜひとも完全アウェイの舞台で見せてほしいものだ。
文=元川悦子
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By 元川悦子