最終予選のラストマッチ・サウジアラビア戦に向けて調整する日本代表 [写真]=Getty Images
9月5日に日本代表はアジア最終予選のサウジアラビア戦に臨む。オーストラリアに勝利し、すでに首位での予選突破を決めている日本。サウジアラビア戦の勝敗は最終順位にも影響しないが、ラストマッチを勝利で締めくくり、本大会に向けた良いスタートにしたいという雰囲気は感じられる。
「誰も呼ばれることが保証されていないというのは分かっていると思います。今回、マコ(長谷部)と真司(香川)がいなくなりましたけど、呼ばれた27人のミッションというのはW杯を決めることだったと思うし、最終予選をどう良い形で締めくくれるか。ここまでいろんな意味で苦しんできたし、最後は良い形で終えたいという気持ちは強いです。そういう意味でも、出た選手はポジション争い、メンバー争いを含めて、この試合がスタートになる」
3月のUAE戦から起用され続けるGKの川島永嗣もそう語る様に、すでに本大会に向けた競争意識がチーム内で高まっている。ただ、一方のサウジアラビアはUAEに1-2で敗れ、オーストラリアを得失点差で上回るものの、日本に勝利できなければ3位でプレーオフに回る可能性が高い。仮にオーストラリアが早く行われるホームのタイ戦で大勝すれば、サウジアラビアが日本に僅差で勝利してもオーストラリアを上回れない可能性はある。
サルマン皇太子が試合の入場券を買い占め、サポーターに無料提供するという話も出ているが、キング・アブドゥラー・スタジアムが異様な雰囲気になることは間違いない。現地時間20時半のキックオフ時の気温は30度弱で、当然日射しも無いため、イランのテヘランで行われたイラク戦よりプレーしやすそうだ。海岸線沿いのため湿度は高く、これは選手にとっては有難いかもしれない。
日本がホームで2-1と勝利した試合は終盤にシュートのこぼれを押し込まれる形で失点したのの、80分過ぎまでは日本が優勢に試合を進めながら2得点を奪う理想的な試合をした。ゴール前に守備を固めるタイプでもなければ、前線から圧倒的なプレスをかけてくる相手でもない。
2010年の南アフリカW杯でオランダを準優勝に導き、日本にも勝利したファン・マルヴァイク監督はコンパクトな守備陣形を植え付けてはいるものの、その中でのタイトな守備を徹底できていない部分もある。
守備陣の個々の身体能力は高いが、前回のUAE戦でも見られたのはクロスに対してサイドバック(SB)がしっかりとコースを切れず、オマル・ハウサウィとオサマ・ハウサウィの長身のセンターバック(CB)コンビがボールに被るケースもしばしば見られる。シンプルなクロスもタイミングが良ければ効果的だが、素早いパス交換で揺さぶりをかけて上げれば、よりCBをボールウォッチャーにすることができそうだ。
攻撃はボランチのアル・ハワジュとアル・ハイブリを中心に、丁寧にパスをつないでアタッキングサードで縦に仕掛けるスタイルだが、テンポはそれほど早くないため、日本の中盤がオーストラリア戦で見せた様に厳しくチェックしていければ、危険な位置に持ち込まれるまでにリズムを崩すことは可能だ。
ただし、いざボールを運ばれると10番のアル・シャハラウィを筆頭にアル・アビド、アル・ジャシム、アル・シェフリという3人のセカンドアタッカーが独特のリズムでペナルティエリア侵入を狙ってくる。そこで下手に足を出すと簡単に倒れ、いわゆる“中東の笛”が発動する危険もある。
日本は予選を通して吉田麻也がディフェンスリーダーとして出場を続けてきたが、新しい組み合わせをテストするチャンスでもある。ただ、そこで連携不足を突かれて後手の守備を強いられるとファウルのリスクも増えるので、どういう組み合わせになるにしてもCB同士のポジショニングやSBとの距離感などを試合前、試合中と共有して対処していきたい。
サウジアラビアでもう1つ危険なのは直接FKだ。左利きのアル・アビドと右利きのアル・ジャシムはどちらもキックが正確で、スナップの利いたボールで直接ゴールを狙うことができる。特にアル・アビドのキックは危険度が高いため、ハリルホジッチ監督が要求するファウルをしない“デュエル”を徹底して、危険な位置のFKを回避していきたい。
CKや間接的なFKでは184センチのCBオマル・ハウサウィと185センチのオサマ・ハウサウィ、180センチのFWアル・シャハラウィなどがターゲットマンになるが、オーストラリアほどの圧力は無いため、日本のディフェンスもマークを外さなければ対処できる。ただし、ここもPKの危険が隣り合わせになるので要注意だ。
“完全アウェイ”という雰囲気の中で、先発メンバーにフレッシュな選手も含まれると予想される日本代表がいかに普段通りのサッカーをして、サウジアラビアを上回れるか。世界への新たなスタートに相応しい勝利を期待する。
文=河治良幸
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By 河治良幸