サウジ戦はベンチスタートが予想される浅野拓磨 [写真]=Getty Images
2015年6月、格下・シンガポール代表戦でスコアレスドローというまさかのスタートを強いられ、2年以上も苦戦を強いられた2018 FIFAワールドカップ ロシア・アジア最終予選がいよいよ終焉を迎える。5日のアジア最終予選ラストの相手はサウジアラビア代表。彼らはワールドカップの切符を手に入れられるのか否かというギリギリの状況に立たされており、日本戦は極めて重要。「一番大事なのは明日の試合に勝つこと」とかつてフェイエノールトで小野伸二(北海道コンサドーレ札幌)を指導したオランダ人指揮官、ベルト・ファン・マルワイク監督も今一度、気を引き締めていた。
日本はすでに最終予選突破を決めているが、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「最終予選で簡単なゲームはない。この大きな挑戦を乗り越えていかなければいけない」と強調。9カ月後のロシアを視野に入れながら、あくまで真剣勝負に臨む考えだ。しかしながら、8月31日のオーストラリア戦(埼玉)からメンバーの入れ替えは行うはず。吉田麻也(サウサンプトン)が「新しい選手も何人かトライすると思う」とコメントした通り、彼が予選を通じて担ってきたセンターバックも新たなコンビが出るだろう。
前回出場機会のなかった本田圭佑(パチューカ)、柴崎岳(ヘタフェ)らも先発の有力候補。前線は1トップに岡崎慎司(レスター)、右に本田、左に原口元気(ヘルタ・ベルリン)、トップ下かインサイドハーフの一角に柴崎が陣取る格好になりそうだ。逆三角形の中盤であれば、柴崎と井手口陽介(ガンバ大阪)がインサイドハーフに並んで、山口蛍(セレッソ大阪)がアンカーを務める可能性が高く、柴崎がトップ下に入る場合は、井手口と山口がボランチを形成する見通しだ。
いずれにせよ、オーストラリア戦で値千金の決勝弾をたたき出した快速FW浅野拓磨(シュトゥットガルト)は今回はベンチスタートになると見られる。
「雰囲気も独特だと思うけど、ピッチに立ったらあまり感じることなくできる。アウェイにはアウェイの楽しさがあるし、僕は好きですね。そういう中で、どの状況で使われようが僕の出すべきところは変わらない。しっかりピッチに立ったら100パーセント出せるようにいい準備をしておきたいですね」と本人もどんな役割でもスムーズに担う自信がある様子。所属するシュトゥットガルトでも先発とサブを交互に繰り返している分、どちらも感覚的に理解している点は心強いと言える。

豪州戦では値千金の決勝点をマークした [写真]=Getty Images
今回の右FW候補を見ると、本田はパチューカでトップ下やインサイドハーフなど中のポジションを主に担っているし、久保裕也(ヘント)も2シャドウの一角などよりゴールに近いFW的な位置でプレーすることが多い。つまり、生粋のサイドアタッカーは浅野だけ。そこは彼の大きなアドバンテージに他ならない。
「チームでも常にサイドでやっているので、意識したくなくてもしなくちゃいけない日々なので、自然と工夫もしていますし、常に悩みながら一歩ずつ成長していっている感じですかね」と本人も苦悩の中から自分なりの得点パターンや崩しの形を体得しつつあるという。こうした生みの苦しみがあったからこそ、オーストラリア戦で長友佑都(インテル)のクロスに一瞬で反応し、鋭い飛び出しからゴールを奪うことができた。裏を飛び出すのは浅野の真骨頂だが、Jリーグ時代はあれだけ難しい角度からのボールを合わせることは簡単にはできなかった。1シーズンをドイツ・ブンデスリーガ2部で過ごし、地道な努力を積み重ねてきたからこそ、今があるのだろう。
サウジアラビアはDFのクロス対応にやや難がある。8月29日もその課題を露呈する形で失点している。この日の朝のミーティングでサウジアラビアの映像を見せられたという浅野もそのあたりの特徴はしっかりと頭に入れて、しつこく弱点を突いていく仕事が求められてくる。
「クロス(への反応)という部分では僕はすごく課題を持っているので、何本ミスってもどんどんチャレンジしていきたいですね。ワールドカップに向けての競争もここから始まる。本番までそんなに時間も長くないので、自分の持ってるものをどんどん出しつつ、チームとしてしっかり戦える選手になっていかないといけないと思います」と浅野の目は9カ月後の大舞台へと向いていた。
もともと備えていたた敵陣を切り裂くスピードと機動力に加え、サイドのスペシャリストとしてシュトゥットガルトで研ぎ澄ませてきたゴールへの嗅覚を最大限駆使して、サウジアラビア戦でも短時間で得点という結果を出すこと。それができれば、浅野はロシア行きにまた一歩前進する。サイドアタッカーのポジションは凄まじい競争にさらされているだけに、ここで再びインパクトを残すことは非常に大きな意味を持つ。彼にはそれだけのポテンシャルの高さをアジア最終予選ラストマッチで力強く示してほしいものだ。
文=元川悦子
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By 元川悦子