“空席”の多い前線で招集されるメンバーは? [写真]=Getty Images
12月8日に開幕するEAFF E-1サッカー選手権(旧・東アジアカップ)。ワールドカップに出場する日本代表の最終選考とも言うべき大会にあって、最大の注目点と言えるのがFW陣のセレクションだ。何しろ、国内組は圧倒的に少数派。11月の欧州遠征メンバーにおけるFW登録7名のうち、5名は原口元気、浅野拓磨ら海外組の選手たち。残る2名でも、興梠慎三(浦和レッズ)はクラブW杯出場時にはこの大会へ招集できない。となると、現時点で招集が確定的なのは杉本健勇(セレッソ大阪)ただ一人という見方もできる。欧州遠征でメンバー入りしていない本田圭佑や岡崎慎司も選外となることから、かなり「空き」の大きいポジションと言える。
過去の招集パターンから、ハリルホジッチ監督はセンターFWに2枚、両ウイングに4枚の選手を最低でも呼んでくる可能性が高い。国内組でFWとして今年に入ってからの招集歴があるのは小林悠(川崎フロンターレ)のみ。これまでの実績に加えて、J1リーグでここまで19得点を挙げている今季のパフォーマンスを考えても、招集は濃厚だろう。ポジションは過去の起用法からして、やはり右ウイングか。
が、この後の候補となると、「次点」と目されていた齋藤学(横浜F・マリノス)も負傷離脱中で、ほぼ「白紙」に近い。今季のJリーグでのプレーぶりに加えて、ハリルホジッチ監督の嗜好も考慮に入れつつ、候補選手を考えてみたい。
J1リーグのゴールランキングでは興梠、杉本、小林の3人が突出しているが、それに次ぐ第4位に入っている川又堅碁(ジュビロ磐田)は、かねてからハリルホジッチ監督の「興味」が伝えられる存在。パワフルに体を張れることに加えて動き出しも良い、センターFWらしいセンターFWであり、有力候補だろう。そして第5位に入る金崎夢生(鹿島アントラーズ)もやはり無視できる選手ではない。オフ・ザ・ピッチでの行動が問題視されてメンバー外になった過去があるとはいえ、能力・実績に関しては申し分ないのも確か。ウイングでの起用も考えられる幅もある。あとは指揮官のジャッジ次第だ。
長身FWでは長沢駿(ガンバ大阪)もW杯予選の予備登録メンバー入りしている候補選手の一人。育成年代では中盤でプレーしていたこともある柔らかさも備えるタイプ。また実績で言えば、大久保嘉人(FC東京)や豊田陽平(サガン鳥栖)といったベテラン勢の名前も出てきそうだが、二人とも今シーズンに残している数字を思うと難しいか。一方、伏兵は21歳の鈴木優磨(鹿島)だ。クラブW杯での活躍もあり、“戦闘能力”に秀でたプレーぶりもハリルホジッチ監督好みだろう。W杯アジア最終予選の予備登録メンバーには選ばれており、実績より可能性を買う場合に、招集候補に浮上してくる。
センターFW兼任の選手を含め、ウイングの枠を埋める候補は豊富にいる。稀少な左利きでトップ下での起用も考えられる遠藤康(鹿島)は当然名前の挙がる選手だろうし、土居聖真(鹿島)もこのレベルで十分にやれる選手だろう。W杯アジア最終予選において最後に予備登録メンバーに追加されたハイポテンシャルの新星・江坂任(大宮アルディージャ)も無視できない。そして、やはり伊東純也だ。超快足を飛ばしたプレーは攻撃でも守備でも有効で、国際試合でも通用するはず。Jリーグでのプレーを思えば、試さない手はないとすら思える。
そしてもちろん、日本代表での実績を持った選手たちの名前も挙がる。柿谷曜一朗、清武弘嗣(ともにC大阪)は今さら紹介するまでもない選手たちで、当然ながら有力候補。永井謙佑(FC東京)もハリルホジッチ監督が早くから招集していた選手であり、スピードという“武器”が明確にあるタイプである。
また、最近の指揮官が強く求めているサイドの守備で効くハードワーカーということなら、水沼宏太という選択肢も浮かぶ。縦への突破力や上下動で無理が利く選手ということなら、今季チームが低迷しているとはいえ、柏好文(サンフレッチェ広島)も候補か。ゴール数はやや物足りないものの、小川慶治朗(ヴィッセル神戸)も守備で効きながら攻撃に出て行けるタイプだ。阿部浩之(川崎F)もケガさえなければ候補だったと思われるが、現状では厳しいか。
こうした本命枠に対して、“超”のつく伏兵を挙げるなら、J2で得点ランク2位の22得点をマークしている渡大生(徳島ヴォルティス)か。U-19日本代表だったこともあるが、専ら下部リーグで力をつけて今季大ブレイク。Jリーグの中でも一番“ノっている”選手なのは間違いない。あるいは、東京五輪世代の若手の潜在能力を買うという手もある。三好康児(川崎F)、遠藤渓太(横浜FM)が今季その力をJ1舞台で発揮している。まだまだ実績は足りないが、可能性を買うという考え方はあり得るだろう。
いずれにしても、“空席”の多いポジションである。ここから数試合でのパフォーマンスで指揮官の目にとまり、一気に抜擢を受ける選手が出て来たとしても何ら不思議はない。もともとFWは、代表チームで「滑り込み選出」が最も起こりやすいポジションである。選考までの残り数試合、注目しがいのあるポイントと言えそうだ。
文=川端暁彦
By 川端暁彦