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【コラム】浦和のアジア制覇に貢献…ACL決勝でも“デュエル”の強さを発揮した長澤和輝

2017.11.27

ACLをきっかけに日本代表入りを果たした [写真]=Getty Images

 敵地・サウジアラビアでのAFCチャンピオンズリーグ2017(ACL)決勝第1戦を1-1のドローに持ち込んでから1週間。浦和レッズは25日夜、ホームでアル・ヒラルとの決勝第2戦に挑んだ。5万7,727人の大観衆によってスタンド一面に描かれた「2007→2017 アジア王者」というコレオグラフィーも埼玉スタジアム2002の熱気をより一層、ヒートアップさせた。ケルンの本拠地・ラインエネルギーシュタディオンの雰囲気を知る長澤和輝も「胸が熱くなった」と率直な思いを吐露した。

 大サポーターの力強い後押しを受けた浦和の選手たちは高度な集中力を維持して見せる。10年前のアジア制覇を知る男・阿部勇樹が統率する最終ラインは一丸となって相手の攻めを跳ね返し、攻撃陣も機を見てカウンターを繰り出す。大会MVPを獲得した柏木陽介も、決勝弾を叩き出したラファエル・シルバもインパクトを残したが、90分を通して圧巻の“デュエル”を見せ続けた長澤抜きに、この一戦は語れなかった。屈強なDFとのマッチアップでも引けを取らず、2人に囲まれても確実にボールをキープする。後半途中からは柏木とポジション交代してボランチに陣取り、守備面で献身的なハードワークを披露。その躍動感溢れる一挙手一投足に魅了された人も少なくなかったはずだ。

「相手はボールを持てるチームで、ハードに行って奪った方が後ろが楽なので、攻守においてガンガン行こうと思ってました。1対1で負けない。ボールを奪われないといった細かいところで負けなければ、少しずつ勝利に近づいていくと思っていたので、それを意識してプレーしました。陽介くんとポジションを交代した時は、自分は前で少し休んでいたので体力が残っていた。あそこでハードに守備をして、前の選手につなげられればと思っていた。最後の時間帯でラファが決めてくれたので良かったです」と背番号15を着ける173センチの小柄なダイナモはプロキャリア初のタイトル獲得に満面の笑みを覗かせた。

ACL決勝も中盤で躍動した [写真]=Getty Images

 長澤はご存知の通り、専修大学からJリーグを経ずにドイツ・ブンデスリーガ1部のケルン入りした異色の経歴の持ち主である。しかしながら、2014年1月から2016年12月まで足掛け3シーズンを過ごしたドイツ時代は左ひざじん帯損傷の影響もあってリーグ戦出場は通算21試合のみ。成功には程遠い結果に甘んじた。2016年1月に浦和移籍を決断するも、ミハイロ・ペトロヴィッチ前監督の構想には入れず、J2のジェフユナイテッド市原・千葉へのレンタル移籍を余儀なくされる。同年の千葉ではレギュラーとして活躍。満を持して今季から浦和に戻ったが、指揮官には千葉時代を含めた実績を高く評価されず、シーズン前半は構想外に近い扱いを受けることになった。

「ケルンの時も出られない時期が長かったけど、常にアピールしていましたし、出ていない時に何ができるかで出た時が変わると思う。プロサッカー選手に出られない苦労はありますけど、仕事なのでやるしかない。今年も常にいい準備をしてチャンスをもらえるようにしようと考え、折れないでやってきました」と長澤はしみじみと述懐する。

 7月末にペトロヴィッチ監督が成績不振で解任され、堀孝史監督が就任した後もすぐにチャンスが巡ってきたわけではなかった。長澤は同じ中盤の矢島慎也らとしのぎを削り、8月27日の第24節の清水エスパルス戦でようやくJ1初出場を果たす。ACL準決勝・川崎フロンターレ戦はベンチ入りにとどまったが、9月27日と10月18日に行われた上海上港との準決勝ではピッチ上で躍動。10年ぶりのファイナル進出の原動力となった。

 この目覚ましい働きぶりを目の当たりにした日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は彼に一目惚れし、11月のブラジル代表(フランス/リール)、ベルギー代表(ベルギー/ブルージュ)の2連戦に抜擢。ベルギー戦ではアクセル・ヴィツェル(天津権健)を相手に堂々とマッチアップし、欧州の強豪相手でも十分にやれる能力をを示した。そして、今回のACL優勝である。本人も「ストーリーとしては出来すぎ」とこの3カ月間の劇的過ぎる環境の変化を改めて口にしていたが、それを引き寄せられたのも、彼自身が積み重ねてきた地道な努力の賜物に他ならない。

代表デビュー戦でインパクトを残した [写真]=Getty Images

「堀さんがもたらしたのは、競争意識を植え付けたこと。長澤選手にしろ、矢島選手もそうだけど、いろんな選手が出たし、どんな選手が出ても高いクオリティでプレーできる雰囲気を練習から作ってくれた。ミシャさんは自分たちの良さを出すスタイルだったけど、堀さんは相手の良さを消しながら、自分たちの良さを出すというスタイル。勝利に徹する意味ではこの戦い方の方が自分たちらしく戦える」と槙野智章は今季途中の指揮官交代でチームが得た効果を評していたが、その最大の産物が長澤だと言っても過言ではない。相手を消すスタイルを採ろうとするのなら、デュエルや接近戦に絶対的な強さを誇る長澤のような選手が必要不可欠であることを、多くの人が再認識したはずだ。

 長澤にとって次なるターゲットは12月6日に開幕するFIFAクラブワールドカップ UAE 2017。EAFF E-1 サッカー選手権に参戦できなくなった以上、2018 FIFAワールドカップ ロシア行きを手繰り寄せるためには、クラブW杯での猛アピールが必要不可欠だ。ケルン時代に手が届かなかった欧州最高峰のレアル・マドリードに挑める可能性もあるだけに、彼自身も胸が高鳴っているだろう。

「まずは初戦からしっかり行ければいい」と本人が言う1戦目は、12月9日のアルジャジーラ(開催国王者)とオークランド・シティ(オセアニア王者)の勝者と対戦する。そこに勝てればレアルとの戦いが待っている。長澤がそのレベル相手にどこまでやれるのかが、今から非常に楽しみだ。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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