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【コラム】最高のW杯イヤー幕開けなるか…2冠を目指すC大阪、山口蛍が先発復帰へ

2017.12.31

天皇杯を制し、最高の2018年を切れるか [写真]=JL/Getty Images for DAZN

 尹晶煥監督体制1年目の今季は明治安田生命J1リーグで3位、JリーグYBCルヴァンカップ制覇と大躍進を遂げたセレッソ大阪。残されたラストタイトルの天皇杯もファイナルへと勝ち上がり、2冠に王手をかけた状態だ。2018年の元日に埼玉スタジアム2002で行われる横浜F・マリノスとの最終決戦に勝てば、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)本戦出場権も手中にできる。仮にプレーオフに回れば1月30日が公式戦。オフがほとんどなくなってしまうため、彼らにとって勝つか負けるかは極めて大きな問題なのだ。

 そんな大一番に頼もしい男が戻ってくる。右ふくらはぎを痛めて3週間離脱し、12月のEAFF E-1 サッカー選手権 2017 決勝大会も棒に振った日本代表MF山口蛍である。23日の準決勝・ヴィッセル神戸戦はスタンド観戦となった背番号10だが、今週から全体練習に合流。30日の紅白戦もフルにこなし、スタメン復帰が確実となった。今季J1におけるインターセプト回数で断トツのトップに輝いた守備職人の戦術眼とハードワークがあってこそ、セレッソは大舞台で安定感ある戦いを見せられる。ボランチコンビを組むソウザも「彼は偉大な選手。チームに多くのプラスをもたらしてくれる」と太鼓判を押していた。

 今季の山口は負傷離脱した12月を除いてクラブと代表でフル稼働した。柿谷曜一朗や杉本健勇ら他の主力はあくまでJ1中心だったが、山口は天皇杯も2回戦の新潟福祉大戦からフル出場。3回戦のアルビレックス新潟戦は延長を含めて120分間戦い抜き、ゴールまで奪っている。4回戦の名古屋グランパス、準々決勝の大宮アルディージャ戦もピッチに立ち、欠場したのは準決勝の神戸戦だけ。「準決勝以外は全部出てるし、ルヴァン組のメンバーと一緒にやってきたという意味でも天皇杯には思い入れがある。優勝できなかったら悔いが残るし、最後勝って終わりたい」と鉄人ボランチは今一度、闘志を奮い立たせた。

 加えて言うと、2018年はFIFAワールドカップ ロシアが開催される重要な年。天皇杯決勝を制して最高の一歩を踏み出せれば、今後に勢いが出てくるに違いない。山口自身も「勝っていいスタートを切りたい」と前向きにコメントした。が、その一方で「(前回ACLに参戦した)2014年の教訓をしっかりと生かさないといけない」とも強調していた。

 2014年を思い返してみると、まずセレッソに南アフリカW杯でMVPに輝いたディエゴ・フォルランが鳴り物入りで加入。ACLにも参戦したが、クラブは開幕から低迷し、中盤をコントロールする山口も苦悩の日々を強いられた。苦境を引きずりつつブラジルW杯に参戦したが、日本の勝利に貢献することはできなかった。クラブに戻って再起を懸けたが、直後の8月には右ひざを負傷。半年間もの長期離脱を余儀なくされ、チームのJ2降格を黙って見つめているしかなかった。これほど波乱に富んだシーズンは彼自身のプロキャリアにはなかっただろう。

山口蛍

初のW杯は苦い結果に終わった [写真]=Getty Images

「前回もACLがあった年に落ちてるから、チームとしてどうやって乗り切るかを考えなきゃいけない。まずリーグで結果を残して、なおかつACLもうまくいけばいいと思ってます。代表とかW杯はその先にある。前回(ブラジルW杯)の自分はずっと代表に入ってたわけじゃなくて、セレッソと代表の行き来にも慣れていなかったけど、今回はずっとやってて試合数も多く消化してるから、前とは全然違うと思う。継続的にいいパフォーマンスをすることがロシアにつながる。だからあんまり先のことを考えず、チームのことを優先してやっていきたいです」と本人も地道な日々の積み重ねの重要性を改めて口にする。

 セレッソではもちろんのこと、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表にとっても彼の存在は必要不可欠である。というのも、他のボランチ陣を取り巻く状況が不透明だからだ。ベテランの主将・長谷部誠(フランクフルト)は右ひざが芳しくなく、何試合も続けてプレーするのが難しくなっている。今年急成長した井手口陽介(ガンバ大阪)もイングランド・チャンピオンシップのリーズへ移籍することが濃厚に。英国労働許可の問題からスペインかオランダへレンタルに出される見通しで、新天地でどうなるかは分からない。E-1で存在感を示した34歳の今野泰幸(G大阪)、11月の欧州遠征で評価を高めた長澤和輝(浦和レッズ)も指揮官の絶対的信頼を勝ち取ったとは言い切れない。やはり、山口抜きのロシアW杯は考えられないと言っても過言ではないのだ。

山口蛍

2018年は自身2度目のW杯出場を目指す [写真]=Getty Images

 それだけのクオリティを備えた選手だと強烈に示すべき場が今回の天皇杯決勝だ。横浜FMの攻撃のキーマンである天野純、中町公祐ら中盤を完全制圧し、仕事らしい仕事をさせないこと。そして機を見てゴール前へ突き進んでいくことが山口に課せられた大きな仕事である。杉本不在の前線を普段以上にサポートし、ゴールに直接的に絡む動きを見せられればさらに理想的。本人も「尹監督になってからいろんなアドバイスを受けて、攻撃面の意識も高まった」と語っているだけに、今回は得点という結果をぜひとも残してほしい。日本のダイナモの一挙手一投足に注目しながら、新年最初のビッグゲームの行方をしっかりと見極めたいものだ。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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