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【コラム】スピードスター・伊東純也、ハリル御前でさすがの存在感…欧州遠征の代表入りなるか

2018.03.12

ハリルホジッチ監督が視察に訪れたC大阪戦で存在感を発揮した伊東純也 [写真]=J.LEAGUE

 3月の日本代表欧州遠征(23日=マリ、27日=ウクライナ)メンバー発表が15日に迫る中、10日に行われた2018明治安田生命J1リーグ第3節、柏レイソル対セレッソ大阪戦。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が直々に見守る中、開始4分にいきなり大仕事を見せたのが、前日25歳の誕生日を迎えたばかりの柏のスピードスター・伊東純也だった。

 マテイ・ヨニッチの不用意なパスを江坂任がインターセプトした瞬間、背番号14は右サイドを一目散に駆け上がり、ペナルティエリア右の深い位置でボールを受けた。

「シュートを打とうかと思ったけど、クリス(ティアーノ)が開いていたんで、そこに普通に出しただけ」と本人が言うように、シンプルに折り返したラストパスをヴァンフォーレ甲府時代からの相棒FWが合わせる。まさに電光石火の一撃で、柏は先制点を奪ったのだ。

 このシーンのみならず、伊東は爆発的なスピードでたびたび相手ゴール前を脅かした。クリスティアーノの右サイドからのスローインに鋭く反応した39分のチャンス、武器であるドリブル突破からキム・ボギョン目がけてマイナスクロスを入れた61分の場面などがその象徴。4日前のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)・傑志戦での決勝ゴールで実証した通り、一瞬の動きで決定的な仕事のできる彼の怖さを、C大阪守備陣も随所に感じたことだろう。

「何回かチャンスは作っていましたけど、そこでもう1点取れるようにやらなきゃいけないかなと。個人でマークを外したりってところはもっとできると思う。個の打開を増やしていかないといけないですね」と彼は1-1のドロー決着に終わった不完全燃焼感をにじませた。ただ、残念ながら25歳初ゴールもお預けとなったが、最近の自身の好調ぶりには少なからず手応えをつかんでいる様子だった。

 実際、ワールドカップイヤーに突入してからの伊東の快進撃は目覚ましいものがある。

伊東純也

今季は好調なスタートを切った [写真]=Getty Images

 1月30日のACLプレーオフ・ムアントン戦、2月4日のちばぎんカップ・ジェフユナイテッド千葉戦の2試合連続ゴールに始まり、ACLとJ1の超過密日程をフル稼働。決定的チャンスに顔を出す回数も目に見えて多くなり、傑志戦では値千金の決勝弾も決めた。今季は積極的なメンバー入れ替えを行っている下平隆宏監督も伊東を全試合に出場させている。それもチームの絶対的主力と位置付けているからこそだ。

「今季はJリーグで優勝して、ACLでも優勝して、個人的には代表に入っていきたい。スタートから充実していますし、自信を持ってプレーできている感があるので、やっぱりメンタルは重要だと思います」と神奈川大学を出て2015年に甲府入りするまで無印だった男はしみじみと言う。

 同じ横須賀出身で逗葉高校の同期でもある小野裕二(サガン鳥栖)とは対極のような人生を歩んできたが、「10代の時に目立たなくてもプロになることが目標だった。最終的にプロになれたからそれでよかった」とマイペースを貫き、ここまでやってきた。プロ入り後の成長曲線は凄まじく、代表デビューとなった昨年12月の東アジアカップ(E-1選手権)でも大きなインパクトを残すことに成功。一気にロシア行きの有力候補に躍り出たのだ。

伊東純也

昨年のE-1選手権で日本代表デビューを果たした [写真]=Getty Images

 伊東が争う右サイドのポジションは、これまでベテラン・本田圭佑(パチューカ)を筆頭に、最終予選で活躍した久保裕也(ヘント)、浅野拓磨(シュトゥットガルト)がしのぎを削る形になっていた。だが、本田が最終予選後に外れ、久保もクラブではセカンドトップでプレーしており、サイドでの経験値を積み重ねられていない。浅野に至っては今年に入ってからクラブで一度も試合に出ていない。これにはハリルホジッチ監督も苦言を呈している。指揮官の秘蔵っ子と言われた宇佐美貴史(デュッセルドルフ)が新たな右サイドの候補者として浮上しつつあるものの、やはり爆発的スピードで相手をキリキリ舞いさせられる伊東のようなタイプは必要だ。海外組を含めたフルメンバーのいる代表チームで、マリ・ウクライナという屈強なフィジカル誇る相手に彼がどこまでやれるのか。それはぜひとも見てみたいポイントだ。

 酒井宏樹(マルセイユ)という柏の先輩が右サイドバックに陣取っているのも、伊東にとっての強みになり得る。

「宏樹さんは帰国するたびにレイソルに顔を出して、僕らに声をかけてくれる。本当に優しい先輩です。代表で右サイドのタテ関係でやれれば僕も嬉しい。ぜひやってみたいです」と彼も意欲を示している。E-1選手権では背後にいた植田直通(鹿島アントラーズ)らとの連携に苦しみ、韓国戦では失点に絡むミスも犯してしまったが、後ろに国際経験豊富なDFがいれば、伊東にとっては安心だ。3月の欧州遠征でその形が見られれば非常に興味深い。

「ハリルさんが来ていたことは知らなかった。特に意識してなかったけど、選ばれれば頑張ります」と本人はセレッソ戦後に淡々とコメントしていたが、メンバー入りへの強い意気込みは見て取れた。果たしてその思いは届くのか。指揮官の決断が待たれる。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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