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【コラム】“スピードお化け”クアドラードと対峙…長友佑都は4年前のリベンジを果たせるか

2018.06.18

コロンビア戦に向けてトレーニングを行う長友佑都 [写真]=Getty Images

 いよいよ2018 FIFAワールドカップ ロシア初戦・コロンビア戦が目前に迫ってきた。13日からベースキャンプ地・カザンで最終調整を行っていた日本代表も17日夕方に決戦の地・サランスクへ移動。臨戦態勢に突入している。

 オーストリア・ゼーフェルトでの事前合宿まではチームを固定せず、多彩な可能性を追い求めていた西野朗監督だが、15日から前倒して行った非公開練習ではメンバーをある程度、決めた様子。攻撃陣は12日のパラグアイ戦(インスブルック)で躍動した香川真司(ドルトムント)と乾貴士(エイバル)が軸になりそうだが、守備陣はヴァイッド・ハリルホジッチ前監督時代から不動だった最終ライン4枚のスタメン出場が濃厚と見られる。

 中でも、左サイドを担う31歳の金狼・長友佑都(ガラタサライ)は相手キーマンの一人であるフアン・クアドラード(ユヴェントス)を完封しなければならない重要な役割を担う。4年前のブラジル大会直前では、イタリア・セリエAの直接対決で完勝し、絶対的な自信を持ってクイアバに乗り込んだが、肝心な本番で宿敵にいいように崩されてしまった。

「ズタズタにされて試合が終わった後、僕がピッチに座っているところにコロンビアの選手が寄ってきて励ましてくれたけど、あれは悔しい光景でしたね」と本人も述懐する。明るい性格のクアドラードももちろんその中に加わっていたはず。それが長友の屈辱感を増幅させた部分はあったに違いない。その後も好敵手とは長く同じリーグで戦い続けてきたが、今度こそ絶対に負けるわけにはいかない。その思いを背番号5は今、脳裏に刻み込んでいるはずだ。

長友佑都

長友は4年前に味わった悔しさを忘れていない [写真]=Getty Images

「僕が後ろに張り付いているだけでは、彼も守備をしなくてやりやすい。だから駆け引きが必要ですね。一番気をつけなきゃいけないのは、僕が中途半端な位置に上がってボールを取られた後。クアドラードのスプリントはえげつない。まさに“スピードお化け”。そういうプレーで彼を乗せたくない」と長友は自戒を込めて語っていた。

長友佑都

クアドラードとはこれまで何度もマッチアップしてきた [写真]=Getty Images

 クアドラードを完封できれば、左アタッカーでの先発が予想される乾の守備負担も減らせるし、全体が高い位置を取れるはずで、そういう形に仕向けていきたい。今こそ「エースキラー」として君臨してきた男の底力を発揮すべき時だ。8年前の南アフリカ大会を思い返しても、長友が初戦・カメルーン戦(ブルームフォンテーヌ)でサミュエル・エトオを止めたからこそ、本田圭佑(パチューカ)が挙げた虎の子の1点を守り切ることができた。その再現を3度目の大舞台で見せるしかない。

「今大会を見ても、守備が固いチームが生き残っている印象が強い。11人でしっかりブロックを作って前からみんなが戦っているチームが勝っていますね。モロッコに勝ったイランなんかも、ホントに硬かったし、前の選手はメチャクチャ走っていた。それに連動して後ろも集中してラインの上げ下げもコンパクトにしていた。そういうところが大事ですね」と長友もしみじみと話したが、堅牢な守備を前面に押し出さなければコロンビアに対する4年越しのリベンジは果たせない。西野体制発足後の3試合で6失点を喫している日本がそれだけの堅守を構築できるのか。すべては長友ら守備陣のリーダーシップと声出しにかかっていると言っても過言ではない。

 今回のチームに南ア経験者は5人いるが、この4年間を通してコンスタントにピッチに経ち続けてきたのは長友1人である。川島永嗣(メス)は浪人生活を強いられた2015年夏から1年近く代表から外れ、長谷部誠(フランクフルト)も右ひざのケガで苦しい時期を強いられている。本田と岡崎に至っては、ハリルホジッチ前監督から厳しい評価を受け、代表落選危機に瀕した。それだけに、コンスタントに右肩上がりの軌跡を辿ってきた長友の存在は大いに頼もしい。「年齢で判断するのはサッカーを知らない人」とSNSで発言して炎上したことも笑い飛ばせる強靭なメンタリティは苦境に瀕する今の代表に必要不可欠と言っていい。

 加えて、食トレやヨガなどあらゆる努力を重ねてトップコンディションを維持し続ける貪欲な姿勢も素晴らしい。ハリルホジッチ前監督が「長友は真のプロフェッショナル」と発言するのも当然のこと。そういう人間には何としても8年ぶりの成果を挙げてほしいものである。

「今回のワールドカップは今までの中で成功したいという気持ちが一番強い」と本人もしみじみ語っていたように、ロシアが代表キャリアの集大成になるのは確かだ。同い年の本田、岡崎らとともにプレーするのもあと数日になってしまうかもしれない。だからこそ、悔いの残らない戦いをしてほしい。長友ならば仲間を鼓舞し、刺激を与えながら、いい方向へとけん引してくれるはず。この男が西野ジャパン最大のキーマンになる可能性は大いにある。いずれにせよ、背番号5のコロンビア戦の一挙手一投足に注目するしかない。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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