長友は推進力のあるクアドラードとマッチアップすることになりそうだ [写真]=Getty Images
日本には「病は気から」ということわざがある。病気は気の持ちようで、良くも悪くもなるという考え方だ。それはスポーツの世界にも置き換えることができるのではないだろうか。
日本は19日にコロンビアとのグループリーグ第1戦を迎える。独特な緊張感が漂う初戦は、世界トップレベルの選手たちでさえも本来の力を100パーセント発揮するのが難しい。自身2度目の大舞台を迎える吉田麻也は試合前日、「2回目だから(雰囲気に)のまれない、ということはない。緊張するだろうし、ナーバスになると思う」と素直な気持ちを語った。足がすくんで当然、ビビって当然。ワールドカップとはそういう舞台だ。吉田はそのすべてを受け入れて、目の前の敵と戦おうとしている。
格上のコロンビアに勝利するのが簡単ではないことは分かっている。正直、引き分けに持ち込むことすら難しい。それほどの実力差がある相手に、日本が同等か、もしくは上回れるものがあるとすれば、それはメンタルだ。
日本人はメンタルが弱い――。そんな言葉をよく耳にするが、それこそ気の持ちようで、良くも悪くもなる。アトランタ五輪での経験を持つ西野朗監督は、そのことをわきまえている。「大舞台のピッチの上で、選手たちが本来持っているものを素直に出せるかというとやはりネガティブな要素がある。少なくともコロンビアよりも有利な精神状態でピッチに送り出したい」
長友佑都も精神面の重要性を説く。例えば、相手にボールを保持される時間が増えた時に「持たれている」と思うか、「持たせている」と思うか。それをどう捉えるかによって、チームに及ぼす影響は変わると話す。
「相手にボールを『持たせている』という感覚で、精神的な余裕を持っていないといけない。『持たれている』という感覚で、ヤバいと思ってしまったら焦りが出てくる。焦れば良い判断ができなくなる。一人が焦ると、それがみんなに広がって、連動性がなくなってしまう」
要は“発想の転換”ができるか。「みんなが長友くんのようにポジティブになれればいいけど」と笑いながらも、酒井高徳はその考えに賛同する。たとえ押し込まれていてもチャンスを与えていないのであれば、自信を持ってプレーすべきだ。
ポジティブな思考は、西野監督が言う「攻撃への勇気」につながる。「スタートから受け身になる戦いだけはしたくない。自分たちからアクションを起こして、試合を支配していきたい。守備から攻撃にどれだけ勇気をもっていけるか」。コロンビアが相手だからと言って、ただ守っているだけでは勝機は見えない。ラインを上げる、ボールを奪いに行く、縦パスを入れる、敵陣に仕掛ける……。ここぞという時に勇気を持ってアクションを起こせるかが、勝利を引き寄せるポイントになる。
カッコ悪くても、泥臭くあがいてもいい。ここまできたら「もう開き直るしかない」とは本田圭佑の言葉だ。「チームとしてとにかく全部を出し切る」。そのためにもメンタルだけは決して受け身になってはならない。
「メンタル面」については国内合宿からコロンビア戦前日までの取材を通じて抱いた懸念もある。日本はグループリーグ突破という目標を3試合のトータルで考えているのかという点だ。初戦は大事だが、すべてではない。私が最も不安を覚えたのは、ガーナ戦での突然の3バック導入でも、スイス戦での不甲斐ない戦いでもない。西野監督の「(テストマッチは)2試合ともコロンビアを想定して戦う」という言葉だ。
初戦でコートジボワールに逆転負けを喫した4年前、敗戦のショックから立て直すエネルギーも、そこからの逆転のシナリオも持ち合わせていなかった日本は、静かに大会を去るしかなかった。今の日本代表はどうだろうか。もしコロンビアに敗れてしまったとしても、まだ2試合ある。そうポジティブに考えることができる“リバウンドメンタリティ”こそが、グループリーグ突破のカギになるのではないか。ちなみに、前回大会で初戦を落としながら決勝トーナメントに進んだのは3カ国。ギリシャとウルグアイ、そして前監督のヴァイッド・ハリルホジッチが率いたアルジェリアだった。
取材・文=高尾太恵子
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By 高尾太恵子
サッカーキング編集部