格上を相手にしても臆することなく、体を当てにいく昌子(右)[写真]=Getty Images
ロベルト・レヴァンドフスキを徹底的に封じる。決勝トーナメント進出が懸かった大一番で、センターバックの昌子源に託されたタスクはいたってシンプルだ。
ここまでのプレーは、ワールドカップ初出場とは思えない堂々としたものだった。コロンビア戦ではラダメル・ファルカオを、セネガル戦ではエムバイェ・ニアンをほぼ完璧に抑え込んだ。「試合中に弱点を見つけて勝負するのは得意」と豪語するとおり、昌子は試合中にトライ&エラーを繰り返しながら、頭の中にあるデータを順次アップデートしていく。だから相手が強ければ強いほど、90分間での変化は大きい。試合開始時とはまるで別人のように見えることさえある。
昌子の順応性の高さを初めて目の当たりにしたのは、2016年のクラブワールドカップだった。レアル・マドリードとの決勝ではあのクリスティアーノ・ロナウドのパワーとスピードに適応し、最終的には対等にわたり合った。昌子が世界と張り合えるポテンシャルを示した大会だったと言える。
昌子はその順応性をW杯の舞台でも発揮しているように見える。しかし、本人は「試合中に自分が成長しているとは、正直思っていない」と言う。たった2試合で足元がうまくなるわけでも、いきなり空中戦に強くなるわけでもない。「もし、みなさんが『あいつ成長したな』と感じてくれているとすれば、それは自信によるものだと思います。それがこの大会のすごさですね。こんなにも自信をつけさせてくれるんやって」
自信に満ちたプレー、集中力の高さ……いわゆる“ゾーン”に入っているのではないか。と聞くと、意外な答えが返ってきた。
「いや、メンタル的にはいっぱいいっぱいです。例えば、19番(=ニアン)とマッチアップしていて、明らかに不利な時は自分でも分かる。そういう時に『今、こいつにボールが入ったらどうしよう』と弱気になることもあった。DFはやられたら、違う意味で注目されますからね」
いつも以上に大きな声でそう主張するのだから、本当に「いっぱいいっぱい」なのだろう。ただ、そんな状況でも普段どおりのプレーができるのは、これまでに“積み上げてきたもの”があるからだ。「Jリーグの試合では、頭の中でいくつかのプレーをシミュレーションして、常に最善のプレーをしようと意識している。瞬時に選択肢を2、3出して、パッと選ぶ。それをW杯の舞台でも、落ち着いてやれている」
レヴァンドフスキを封じるというタスクを遂行できれば、また一つ大きな自信を手にすることになる。そして、こういう成長機会は多ければ多いほどいい。決勝トーナメントで難敵と対峙する機会を得るためにも、ここで負けるわけにはいかない。
取材・文=高尾太恵子
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By 高尾太恵子
サッカーキング編集部