スタメン6人変更という大胆な決断を下した西野朗監督 [写真]=Getty Images
「非常にデリケートな3戦目になると思います」と西野朗監督が語った通り、慎重な試合運びが求められた28日のポーランド代表戦(ボルゴグラード)。日本代表の2018 FIFAワールドカップ ロシアH組突破の行方が懸かる大一番は繊細なゲーム運びを目指していたはずの指揮官の想定をはるかに超える混乱に見舞われた。
19日の初戦・コロンビア代表戦(サランスク)と24日の第2戦・セネガル代表戦(エカテリンブルク)で先発を固定したのとは対照的に、大量6人を入れ替えて挑んだこの試合。前半を0-0で折り返したところまではシナリオ通りだったに違いない。
前半の終わり頃から右足首の不調を訴えていた岡崎慎司(レスター)が後半立ち上がり早々にプレー続行不可能となり、予定より早く大迫勇也(ブレーメン)を投入せざるを得なくなったことが躓きの始まりだった。「(後半)10分、15分くらいって言われてたけど、急でしたね。アクシデントもあったので」と大迫はアップもそこそこにピッチに登場する羽目になった。
前線の大黒柱が入って攻めが活性化すると思いきや、逆に停滞感が色濃くなり、迎えた59分。山口蛍(セレッソ大阪)がMFラファウ・クルザワ(グールニク・ザブジェ)を倒して与えたFKから、あっさりとヤン・ベドナレク(サウサンプトン)に先制点を許してしまう。
「マンツーマンでやっていて、僕と岳(柴崎=ヘタフェ)がゾーンで守っているので、ファーに来たボールは個の責任だと思う」と吉田麻也(サウサンプトン)もマークを外した酒井高徳(ハンブルガーSV)の問題点だとズバリ指摘したが、この1失点がチームに重くのしかかる。ここからの日本は明らかに冷静さを失い、バタバタ感が否めなくなった。西野監督は低調だった宇佐美貴士(デュッセルドルフ)に代えて乾貴士(ベティス)を投入し、攻めを活性化しようとするが、さすがの乾も空回りしがちだった。
残る1枚の交代カードをどうするか……。その行方を誰もが固唾を飲んで見守っていた80分手前、コロンビアがセネガル相手に1点を先制したという報が届く。すると日本ベンチの様子が一変。直後にキャプテン・長谷部誠(フランクフルト)が一目散にアップゾーンへ駆け寄り、本田圭佑(パチューカ)や香川真司(ドルトムント)、さらにはタッチライン際にいた長友佑都(ガラタサライ)に状況を伝えた。
この時点で日本とセネガルは同じ勝ち点4で得失点差も同じ。ただ、フェアプレーポイントで日本がセネガルをイエローカード2枚下回っている。このまま警告をもらわず、0-1で敗れても、セネガルが追いつかなければ日本は2位通過できる……。指揮官はこのリスクに賭け、落ち着かせ役の長谷部を投入。終盤10分弱はただ単に後ろでボールを回すだけ。スタジアムの大ブーイングもお構いなしに貪欲に2大会ぶりの16強を手に入れることだけに集中した。ロシアのファンはもちろん、世界中から冷たい視線を注がれるのを覚悟で、冷徹に結果だけを突き詰めたのだ。
「非常に厳しい選択。万が一という状況はピッチ上でも考えられましたし、他会場でもあり得た。間違いなく他力の選択だったことでゲーム自体、負けている状況をキープする不本意な選択をしている自分にも納得いかなかった」と指揮官は苦渋の決断だったことを打ち明ける。長谷部も「サッカーの世界ではいろんな議論があると思うけど、真実は結果の中にしかない気がします」と西野監督の胸中を代弁していた。
ただ、そもそもこういう状況を招いた最大の原因は6枚替えという大胆すぎる采配にあったのではないか。セネガル戦の前に「2戦目で突破を決めに行く。3戦目は敗者復活戦」だと語った指揮官が、このポーランド戦でこれまでとは違った新風を吹かせなければならないと考えたのはよく分かる。実際、長谷部と乾はイエローを1枚ずつもらっていたし、セネガル戦からの試合間隔が中3日と非常に短かった。加えて、気温35度超の酷暑というボルゴグラード特有の環境も重なった。こうした要素を踏まえれば、数人の先発入れ替えは必須だった。ただ、今の日本はようやく確固たるベースができたばかり。それを大きく変えないためにも、入れ替えは最大3、4人という見方が根強かった。
ところが、西野監督はスタメンの過半数を変更。岡崎と武藤嘉紀(マインツ)を2トップに並べるという大胆すぎる策を講じた。その結果が序盤からの低いインテンシティと攻守のバランスの悪さだった。立ち上がりの時間帯こそ武藤が積極的にゴールに飛び出す動きを見せたが、その彼も肩に力が入りすぎたのか、シュートを打つべきところとパスすべきところの判断が的確ではなかった。岡崎も持ち前の泥臭さと献身性を前面に押し出してはいたものの、ケガでの交代というネガティブな流れを作り出してしまった。
タテへの推進力を発揮すべき酒井高と宇佐美の両ワイドにしてもプレーが単発で、厚みのある攻撃を演出できなかった。とりわけ酒井高は本職でない前目のポジションに戸惑い、攻守両面で中途半端感が否めなかった。おそらく指揮官はポーランドのキーマンの1人だった左サイドバックのマチェイ・リブス(ロコモティフ・モスクワ)対策で彼をこの位置で起用したと目されたが、肝心なリブスがベンチスタート。アテが外れたのも彼にとっての難しさにつながったことだろう。
スタメン抜擢された残り2人の山口と槙野智章(浦和レッズ)も奮闘は目に付いたが、山口はゴールに直結するFKを与え、槙野も手を使った守備でしばしば危ない雰囲気を醸し出していた。もちろん今大会初先発の緊張感や重圧は多少なりともあったのだろうが、国際経験豊富な2人ならいいプレーができたはず。今回は物足りなさを感じさせた。
このように西野監督の6人替えがポーランド戦の混乱の引き金になったのは認めざるを得ない。H組2位通過と主力の休養というプラス要素は残ったものの、ここまでの快進撃の勢いが削がれたのも事実だ。果たして今回の采配が7月2日のベルギー代表との8強を賭けた大一番にどう出るのか。そこが気がかりだが、何とか中3日で前向きな方向へとスイッチを切り替えてもらうしかない。
文=元川悦子
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By 元川悦子