「GEKIRON~激論~」のコーナーでは、「日本らしいサッカーとは?」というテーマについて、この日のスタジオゲストだった中西哲生氏、岩本輝雄氏、河治良幸氏が討論した。
河治氏が挙げた「日本らしいサッカー」のキーワードは「イメージシンクロ」。この言葉をセレクトした理由について、河治氏は次のように説明した。
「誰かが考えているビジョンを周りがしっかり共有して、同時的に動いていく。バランスだったり、攻守の切り替えだったりというところは欧州のチームなどが非常に素晴らしいですけど、基本的には個でやっています。日本の選手は個もあるんだけど、そこにしっかり連動を加えていくというところがすごく大事だなというのは、今回(ロシア・ワールドカップ)も感じた。そこがはまった時はいい形になったので、それをもっともっと増やしていけるように、長期的にプランを練っていければいいのかなと思いました」
番組MCを務める岩政大樹(東京ユナイテッドFC)は、連動性の距離感について「他の国に比べると、もう少し距離が近い中での連動ということですかね」と解釈。「世界の基準である程度いいバランスで立つと、パスのレンジが長くなるじゃないですか。日本の場合はもう少し近くして、移動しながら、(味方が)分散しているところと少し寄っていくところを意図的に作れるといいのかな、と思います」と、日本人にとっての適度な距離感を保ちながら、連動性を持ったプレーをすることの重要性を説いた。
中西氏はロシアW杯を振り返って「ボールを持って崩すということに関しては世界の中でもやれる。技術は絶対に通用する」と断言した上で、「そこに関しては確固たる自信を持っていい。それがあった上でイメージシンクロをしていくことが大切」と語った。
続いて岩本氏が挙げたキーワードは「相手を見たプレー」。「相手がどんなシステムでこようが惑わされることなく、その場その場で判断できる選手をそろえていく必要がある」と語り、実例として決勝トーナメント1回戦のベルギー戦でベルギーの選手たちが見せたプレーを挙げた。
「日本としては(ベルギーの)両ウイングバックは使われたくなかった。センターバックの3人とダブルボランチはパス回しがうまくて、ウイングバックにものすごいパスが出てくるので、そこをケアするために、乾(貴士)は『右のセンターバックにボールが入った瞬間に、ウイングバックへのパスコースを切れ』と言われていたらしいんですよ。それでボランチにパスを入れさせて、柴崎(岳)で取りましょうというプランを考えていたらしいんですよ。そして始まって1分ぐらいでそのシチュエーションになったんですけど、ベルギーの右センターバックの選手はコースを切られたと思ったらドリブルで前に運んだ。それで日本がボールを奪うためのプランが簡単に崩れましたよね。日本の選手もそういう判断ができるようになれば、上に行けるのかなと思います」
中西氏は「自己犠牲」をキーワードに挙げ、現役時代に名古屋グランパスでアーセン・ヴェンゲル監督の下、ドラガン・ストイコビッチとともにプレーした経験から、このようなエピソードを語った。
「彼ら(ヴェンゲルとストイコビッチ)がすごく称賛していたことで、日本人の特性の一つでもあると思うんですけど、自分が輝くのではなく、誰かを輝かせるために自分が犠牲になることをいとわない精神は、ヨーロッパでは失われたものだとヴェンゲルから言われたんですよ。僕も当時はボランチをやっていて、ボールを取ったらストイコビッチに預けるということをよくやっていました。あとは空走り。前の選手を追い越す空走り。これが本当に大事で、日本人は30メートルぐらいのダッシュを何本もするという強度はすごく得意なんですよ」
献身性は日本人選手にとって大きな武器だが、中西氏は“走りの質”についても言及した。
「しかも、そこにちゃんと正しい知識も備えていなければならない。どうランニングをするのか。斜めに走るのか、ハーフスペースに入るのがいいのか、そういう賢さって、今回の香川(真司)選手や乾選手を見ても分かると思うんですけど、立ち位置や自分が走り込むことによって他の選手を生かすことも含めて、非常にリテラシー(与えられた材料から必要な情報を引き出し、実行する力)が高い。サッカー選手は賢くないとこれから苦しいと思うんですよね。その中で日本人は何も考えなくても自己犠牲の精神を発揮できるので、まだ進化するチャンス、ベスト8の壁を破るチャンスはあると思います」
毎週金曜日21時から放送されている『スカサカ!ライブ』。次回は7月27日(金)21時からの放送で、ロシア・ワールドカップの大会総括などをお届けする予定。岩政がプロデュースするインタビューコーナー「今まさに聞く」はKASオイペン 豊川雄太篇の前編を放送する予定となっている。
By サッカーキング編集部
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