日本代表に選出された三竿健斗 [写真]=Getty Images
10月12日のパナマ代表戦(新潟)、16日のウルグアイ代表戦(埼玉)の2連戦に向け、森保一監督率いる日本代表は8日から事前合宿を開始した。9月はロシアワールドカップに参戦していない若手中心の陣容だったが、今回はベスト16進出に貢献した選手たちが続々と名乗りを挙げている。ボランチの柴崎岳(ヘタフェ)はご存知の通り、その一人。今季のラ・リーガでは2試合しか出場機会を得ていないが、ロシアでの攻守両面に渡る輝きは文句のつけようがないレベルだった。その彼を加えたボランチ争いは熾烈を極めそうだ。
今回のメンバーでボランチの候補は4人。新体制初陣となった9月のコスタリカ代表戦でキャプテンマークを巻いた青山敏弘(サンフレッチェ広島)、遠藤航(シント・トロイデン)、三竿健斗(鹿島アントラーズ)、そして柴崎という顔ぶれだ。三竿は4人の中で最も若い22歳。序列的にも目下のところ一番下と言わざるを得ない。ただ、直近のACLで2試合続けてMOMに選出され、7日に行われたJ1第29節・川崎フロンターレとの上位対決でも中村憲剛を徹底マークして攻撃の起点を封じるなど、メキメキと力をつけているのは間違いない。身長は181cmと4人の中で最もフィジカル的に恵まれているうえ、ボール奪取力と危機察知力が高いのは大きな強みと言っていい。
ロシアワールドカップの前は「ただ呼ばれることだけでひと段落していたというか、試合に出るところまで行っていなかった」と本人も認めるように、どこかで若手ならではの遠慮があったという。しかしながら、落選という大きなショックを味わったことで「これからは自分が(代表の)中心にならないといけない。そんなに簡単ではないけど、どんどん挑戦していかないといけない」と意識をガラリと変化させている。目の色を変えている様子は鹿島での一挙手一投足から色濃く感じられる。とりわけ、その印象が強かったのは、10月3日のACL準決勝第1戦の水原三星戦。序盤に2失点という最悪の入りから、逆転勝利の原動力になったのだ。三竿は「いい準備ができていなかった」と反省しきりだったが、徐々に本来の対人プレーの強さを見せ始め、屈強な韓国人選手たちと対峙してもやられることはなくなった。そして1-2で迎えた終盤、鹿島が総攻撃をかけた時には、ワンボランチになって中盤を支え、前線と守備陣のつなぎ役として躍動。セルジーニョと内田篤人の終盤2ゴールを後押しする役割を担うと同時に、自らチームをコントロールしようという意気込みを強く押し出した。
「後半はみんなイケイケになっていた。そういう時にはサイドのスペースが狙われるので、そこをずっと意識していた。GKがキャッチした後には穴を埋めるような仕事はできたかなと。センターバックと協力しながら、うまく守れたと思います」と本人も安堵感をにじませた。しかしながら、代表で定位置を確保しようと思うのなら、もっと発信力を高めないといけない。強引に周りを動かすくらいの気概を示せるようにならなければ、強力なライバルたちを蹴落とすことはできないのだ。三竿自身もチームメートの韓国人守護神の立ち振る舞いから考えさせられる部分があったようだ。
「1-2で迎えたハーフタイムにスンテが『もっとやらなきゃダメだ』って語気を強めた。スンテはACLで優勝した経験があるから、死に物狂いでやらないと優勝できないと言いたかったんだと思います。そういった経験をしている人が言うことはすごく心に響く。自分はこの試合の最初、全然いいパフォーマンスができてなかったので、人に言える立場ではなかったけど、きちんと仕事をしてから言えるようにならないといけないと思います」
日本代表で8年間キャプテンマークを巻いた長谷部誠(フランクフルト)も、言うべき時には容赦なく苦言を呈する厳しさを持ち合わせていた。「若い頃はリーダータイプではなかった」とベテランボランチも述懐したことがあるが、人の上に立つことで言動が変わっていったのだ。22歳の三竿にもそうなれる可能性は少なからずある。もともと帰国子女で立教高校出身のインテリだけに、自分の立ち位置を冷静に客観視できてしまうのだろうが、そういう殻を破って周りに注文を付けるくらいの勇敢さを示していい時期に来ている。そこがボランチを争う3人のライバルを追い越していくための必須条件ではないだろうか。
9月のチリ代表戦が北海道胆振東部地震の影響で中止になった関係で、出場時間は少なくなってしまったが、今回の2連戦では必ず1回はスタメンでピッチに立てるはず。そのパートナーが青山なのか、遠藤なのか、柴崎なのかは分からないが、誰と組んでも相方をしっかりとサポートしながら、自分の良さを出すことが強く求められる。若さとアグレッシブさ、失敗を恐れないチャレンジ精神も出さなければ、森保監督の心を動かすことはできない。逆に言えば、そういう伸びしろを存分に出せれば、三竿が一気に上に上り詰めることもあり得るということだ。この2連戦が「代表キャリアの分かれ目」というくらいの重要な節目になる可能性もあるだけに、名門・鹿島唯一の代表選手にはそのチャンスをつかんでほしいものだ。
文=元川悦子
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By 元川悦子