フィリピン代表やバルセロナで活躍したパウリーノ・アルカンタラ(前列中央) [写真]=アフロ
文=後藤健生 Text by Takeo GOTO
写真=アフロ Photo by AFLO
日本代表の1試合最多得点記録は15ゴール。1967年9月27日のメキシコ五輪予選のフィリピン戦で、不世出のストライカー、釜本邦茂が「ダブルハットトリック(6得点)」を達成した。この大会、日本はライバルの韓国とは3-3の引き分けに終わったが、フィリピン戦の大量得点によって得失点差で上回って首位で予選を突破。メキシコ五輪での銅メダル獲得につなげた。
では、「日本代表の最多失点記録は?」というと、実はこれもフィリピン戦で15失点なのだ。最多得点と最多失点が同じ相手で、しかも同じ15点というのはとても珍しい偶然だ。
1917年5月10日、東京・芝浦で開催された第3回極東選手権大会での出来事だった。
「極東選手権」というのは日本、中国、フィリピンの3カ国による総合競技大会。アジア大会の前身である。第1回大会は1913年に開かれ、日本が本格参戦したのは東京開催となった第3回大会からだった。当時の日本は陸上や水泳こそ強かったが、野球以外の球技では中国、フィリピンに歯が立たなかった。
サッカーの日本代表は、日本で初めて本格的にサッカーに取り組んだ東京高等師範(筑波大学の前身)が選ばれた。当時は単独チームが代表として出場していたのだ。全日本選抜が初めて結成されたのは1930年のことだった。
極東選手権大会の初戦で日本(東京高師)は中国(香港の南華体育会)に0-5で敗れ、2戦目のフィリピンにも2-15で大敗と喫した。この年の東京は気温が低く、フィリピンの選手たちは寒さに悩まされたというが、それでも実力差は明らかだった。
当時は中国もフィリピンもアジアのサッカー強国だった。
香港は1842年に英国植民地となっており、地元の若者たちは英国人のクラブと切磋琢磨することで実力をつけていた。
フィリピンは16世紀以来スペインの統治下にあったが、1898年の米西戦争の結果、アメリカの植民地となった。そのアメリカがスポーツを奨励したためフィリピンではスポーツが盛んになり、スペイン国内でサッカー人気が高まったこともあって、スペイン系フィリピン人たちはサッカーが大好きだった。さらに、香港の大学に留学するフィリピン人も多く、彼らはそこでもサッカーに取り組んだ。
日本のサッカー界にとってフィリピンは目標となった
ところで、極東選手権大会のフィリピン代表にはパウリーノ・アルカンタラというFWがいた。日本戦でも前半の3分に先制ゴールを決めたアルカンタラは、実はバルセロナのエースストライカーだったのだ。
アルカンタラは1896年にフィリピン中部パナイ島のイロイロ市でスペインの軍人とフィリピン人の母親の間に生まれ、少年時代にバルセロナに移り住んだ。そして、15歳の時にバルセロナのトップチームにデビューし、いきなりハットトリックを達成したのだった。
その後、アルカンタラは20歳を前に大学進学のためにフィリピンに帰国。医学を学びながらフィリピン最強の「ボヘミアンSC」でプレーしていた。そして、東京高師が日本代表となったように、ボヘミアンSCが極東選手権大会のフィリピン代表となったのだ。
第3回極東選手権の翌年にバルセロナに復帰したアルカンタラは、その後、1927年までプレーして生涯得点は369。これは長くクラブの最多得点記録だった(87年後に記録を塗り替えたのはリオネル・メッシ)。引退後はバルセロナ会長やスペイン代表監督を歴任した。バルセロナの公式サイトには「El Primer Crac(最初のスーパースター)」として現在でも大きく紹介されている。
英国の専門書を片手にサッカーを学び、横浜の外国人クラブに挑戦することで強化を図っていた当時の東京高師の学生たちは、アルカンタラのことも、バルセロナのことも知らなかっただろう。彼らがワールドクラスの選手に太刀打ちできるわけはなかった。
極東選手権で大敗を喫したことで、中国とフィリピンは日本のサッカー界にとっての目標となった。敵地マニラでの第7回大会(1925年)では長時間の船旅や慣れない気候に苦しんだ日本(大阪サッカー倶楽部)は0-4と完敗。日本(早稲田WMW)が初めてフィリピンを破ったのは1927年に上海で開かれた第8回大会だった(2-1)。東京で行われた1930年の第9回大会では初めて結成された全日本選抜が7-2と大勝。1934年の第8回大会ではアウェー、マニラのリサール・フィールドでも全日本選抜が4-3と競り勝った。
その後、フィリピンではアメリカ生まれのスポーツであるバスケットボールが盛んになったためサッカーは弱体化していた。しかし、最近ではフィリピン協会がヨーロッパ生まれのフィリピン系選手を積極的に招集して代表強化が進んでいる。、FIFAランキングでもタイやシンガポールより上の114位(2018年9月現在)となっており、再び国際舞台で日本と相まみえる日も近いのかもしれない。
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By サッカーキング編集部
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