昨年11月以来の代表復帰を果たした中島翔哉は、コロンビアDF陣を翻弄し続けた [写真]=Getty Images
コロンビアの屈強なDF陣が激しくボールを奪いに来ても、抜群のボディバランスと巧みな体の使い方で寄せ付けず、積極果敢にゴールを狙い続けた……。
昨年11月以来の日本代表復帰となった中島翔哉(アルドゥハイル/カタール)は22日、躍動感溢れるパフォーマンスを披露し、日産スタジアムに集まった6万3000人を超える大観衆の度肝を抜いた。“背番号10”は香川真司に譲ったが、堂々たるプレーの数々は“エース”と呼ぶにふさわしい。「中島がアジアカップに参戦していたら結果は違っていたかもしれない」と感じたサポーターや関係者は少なくなかっただろう。
異彩を放った一挙手一投足
中島は今年1月末、カタールリーグへ戦いの場を移した。その後はAFC・チャンピオンズリーグにも参戦したが、日本人にとって馴染みが薄い地域ということもあり、どのような成長を遂げていたか日本で報道される機会も少なかった。
「成長するために行きましたし、楽しむために行きました。チームメイトも監督も素晴らしいので、色々なところを吸収できていると思います。アジアカップでもそうでしたけど、カタールの選手はボールを奪うのが上手ですし、攻撃も個人で行ける。チームも両方を持っているので、自分もそこを磨きたい。守備でボールを奪う時のポジショニングのアドバイスもよく監督からもらうので、本当に色々なことを学べていると思います」
本人は今回の代表合流直後にこう前向きに語っていたが、未知数な部分が大きかった。中島には欧州の強豪からもオファーがあったとされており、カタール移籍を選択したことに疑問を呈す関係者も多かった。それだけに、彼の一挙手一投足には大きな注目が集まった。
迎えたコロンビア戦、シュートこそ相手GKの好守に阻まれたものの、持ち前のテクニックを駆使したドリブル突破に加え、敵の間を突く戦術眼の鋭さも見せつけた。終始ファールで止められる場面が目立ち、間違いなくコロンビアにとって最大の脅威となっていた。同時に彼は、カタール行きが正解だったことを堂々と実証したのだ。
『ハードワークするファンタジスタ』になることができれば…
さらに、カタールに行ったことで大きく変わったのが守備の献身性だ。この日はボールを失ったら一目散に相手のところに駆け寄り、激しいチャージで奪い返した。試合後、中島自身も守備の重要性を以下のように語った。
「アルドゥハイルの監督にすごく言われるので(苦笑)。あんまり言ったら怒られるかもしれないけど、それがすごく成長につながっていますし、これまでよりもボールを奪えていたと思う。そういうのを求めてカタールに行ったのもあるので。もっと取れるチャンスがあったし、そこから攻撃できるチャンスもあるので、もっとやりたいなという気持ちはあります」
彼が『ハードワークするファンタジスタ』になってくれれば、森保ジャパンにとっても心強い。これまではともに2列目でトリオを形成する南野拓実や堂安律の守備意識に助けられていたが、中島が泥臭い仕事を果たしてくれれば、逆に周りの選手の守備負担が軽くなる。香川や乾貴士らとの共存など、日本代表攻撃陣の可能性を広げられるという期待も広がっていく。
「『この選手じゃなきゃサッカーできない』というのはチームじゃない。自分が出ても出なくても、色々な選手と色々な組み合わせによって日本代表がある。それを僕は見せていきたい」
限られた時間でも新たなオプションが
コロンビア戦にフル出場したことで、26日のボリビア戦はベンチスタートになる可能性が高い。だが、ジョーカーとしてピッチに立つことも想定できる。先発と異なり、限られた時間で結果を出すことが求められるが、逆に“違い”を見せつけることができれば、日本代表にとって新たなオプションにもなり得るだろう。
「サッカーを楽しみたい」と口癖のように繰り返す小柄なアタッカーが理想とする領域はまだまだ高い。そこに上り詰めるためにも、次のボリビア戦では、さらに一味違う新たな風をチームに吹き込んでほしいものだ。
文=元川悦子
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By 元川悦子