[写真]=Getty Images
「自分は日本代表のキャップ数が15,16くらいやし、偉そうには言えないけど、4年前のアジアカップやロシア・ワールドカップを経験させてもらった。そういうのをちょっとでも伝えられたらなと。僕もまだまだ(香川)真司くんたちに聞くことがいっぱいあるし、上と下のパイプ役ができたらと思ってます」
3月の2連戦(コロンビア戦、ボリビア戦)でロシアW杯以来の日本代表復帰を果たした昌子源は、森保ジャパンにおける自身の立ち位置を客観視することができた。長谷部誠や本田圭佑らが代表を離れ、今回は吉田麻也や長友佑都も招集見送りとなった。チームリーダーを担ってきた先輩たちが不在の中、「自分たちが20代半ばの世代が中心になっていかなければならない」と思いを強めたという。
以前、昌子は「麻也くんが(ロシアW杯)ベルギー戦の後、『クルトワにアタックしてファウルで止める必要があったかもしれない』と言っていたけど、それが海外で戦っていくためのずる賢さや駆け引き。麻也くんはそこに気づいている」と神妙な面持ちで語っていた。その後、海外で戦う先輩たちを追い掛けるように、自身も1月にフランスへ渡った。
そして今、コロンビア、ボリビアとの2試合を終え、リーグ終盤戦に備えている。昌子が所属するトゥールーズは現在14位(残り9試合)。2部との入れ替え戦に回る18位との勝ち点差は10あるが、残留を確実なものにするためにも目の前のポイントを拾っていく必要がある。
3月31日のパリ・サンジェルマン(PSG、リーグ首位)戦を皮切りに、リール(同2位)、マルセイユ(同4位)、サンテチェンヌ(同5位)といった上位陣との対戦が残っており、油断はできない。
それでも、昌子は「パリが相手だからといって、チャレンジしなかったら意味がない。安パイなプレーをしていても成長はないから」とあくまで強気なプレーを見せることを意識している。さらに、「自分は代表に初招集されてから3年出れんかったけど、安パイで良いという意識が強くて、遠慮して声を出せなかったり、パスを出せるところでワンテンポ遅れたとか、そういうことが理由だったと思うんです」と未熟だった自分を述懐し、攻めに行く守りを実践していくことを今一度決意したという。
実際、コロンビア戦ではラダメル・ファルカオにスライディングタックを仕掛けたシーンがあった。ボールを奪う寸前でかわされてピンチを招いたものの、それも果敢にチャレンジした結果だった。
「日本では『スライディングは最終手段だ』と教わってきた。できるだけ最後までついて行ってマイボールにすることを意識してきたけど、フランスではFWと五分五分に並んでいてもスライディングで奪いにいくという感覚なんです。確かにセルヒオ・ラモスとか(ジェラール・)ピケも結構滑ってるなってイメージがあったけど、守備の価値観の違いがそうさせるんですよね」(昌子)
大量5失点で大敗を喫したリヨン戦後、昌子は自身のプレーをそう分析していた。日本と海外の違いを比較しながら、プレースタイルにも変化を加える。その成果を代表戦という大舞台で披露することは容易ではない。それでも、昌子はコロンビアの強力な攻撃陣を相手に、果敢にタックルに行ったのだ。
彼の父で兵庫県サッカー協会技術委員長の力さん(現・姫路独協大学監督)は、「源は頭でイメージしたことをすぐに実践に移せる能力を幼少期から備えていた」と話してくれたことがある。先天的とも言える才能でトライを繰り返し、異国の守備文化をモノにできれば、大きな成長を遂げられるし、トゥールーズの1部残留、ひいては日本代表の守備ラインの強化にも貢献できるはずだ。
6月にはコパ・アメリカが開催される。南米の強豪たちとの正真正銘の真剣勝負ができる公式戦だ。しかし、昌子はその大舞台のことをいったん横に置いて、5月25日のリーグ最終節(ディジョン戦)まで全身全霊を注ぐ所存だ。キリアン・ムバッペ(PSG)をはじめ、ニコラス・ペペ(リール)やフロリアン・トヴァン(マルセイユ)、ワフビ・ハズリ(サンテチェンヌ)といったストライカーたちと対峙し、飛躍のきっかけをつかんでほしい。それを代表に還元できれば日本の守備力もアップする。
冨安健洋や畠中槙之輔といった若手からも刺激をもらいながら、中堅世代のセンターバックはさらなる高みを目指し続ける。
文=元川悦子
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By 元川悦子