ゴールキック時、GK茂木はエリア内に降りてきた三國にパスを出すという選択肢を持つ
「やっぱり面白いことになるぞ」
4月16日に行われたU-20日本代表と全日本大学選抜の練習試合。U-20W杯のメンバー発表前最後の強化試合というのがオーソドックスな注目点なのだが、試合が始まってから目を奪われたのは、「新ルール対応」だった。
今年6月からサッカーの競技規則が新しくなるのだが、5月のU-20W杯ではそれが先行して実施されることとなっている。ハンドリングの基準変更、FKに際して攻撃側が壁に混じってはいけなくなるなど色々あるのだが、「サッカーを変える可能性がある」と目されているのがゴールキックとペナルティーエリア内FKに関するルール変更である。
「やってみないと分からない部分もあると思っていたので、審判の方に特別にお願いし、この練習試合で先行して実施しました。特に大きな変更であるゴールキックとFKに関する二つのルールについてお願いしたんです」(U-20日本代表・影山雅永監督)
平たく言ってしまうと、従来のゴールキックはペナルティーエリアの外に蹴る必要があったのが、新ルールではペナルティーエリアの中にいる選手にボールを出すことが可能になった。つまり、キックオフのときのようなチョイ出しからドリブルで持ち出すようなプレーも可能だ。多くのチームにおいて、ビルドアップの形はゴールキックをベースにして構築されているので、ここが変わればビルドアップのやり方のトレンドが大きく変わっていく可能性もある。
試合では両CBを外に開かせつつ、ボランチの1枚を最初からエリア内に配置するような形や、CBの片側だけ開いてもう一方がGKの横でボールを受ける形などいろいろと試行していたが、「まだまだいろいろな使い方や考え方があると思います。ゴールキックを一つの戦術的な形として使えるんじゃないかと思うし、ビルドアップのやり方は変わってくるはず」とDF菅原由勢(名古屋グランパス)が話したように、他にも新しいパターンは考えられるだろう。クイックゴールキックのようなアイディアもあり得る。
逆にプレスをかける側の考え方も変化を余儀なくされる。ビルドアップ側に有利にも思える変更だが、必ずしもそうでもなさそうだ。従来は相手のフィールダーがボールを触るまで関与できなかったのに対し、新ルールではゴールキックをした瞬間からチェックに行くことが可能となる。相手がペナルティーエリア内で最初のボールを受ける形を基本とするなら、キックと同時にそこへプレスに行ってハメてしまう戦術的な形を整備することも考えられるだろう。
今回の練習試合では互いのルール理解も浅く、特別に練習をしたわけでもないので新しい現象はそれほど起きていないが、来たるU-20W杯では各国が新ルールに適応した形を整備してくるはず。実際、日本サッカー協会のテクニカルスタッフの一人は「これは本当にしっかり準備をしないとダメだと実感しました」と意欲を燃やしていた。
「ゴールキックは一つのセットプレーなので」と影山監督が話したように、試合の中で繰り返し発生する「ゴールキック」のシチュエーションの様相が変わることは、必ず試合に影響を及ぼすはず。GKへのバックパス禁止やオフサイドルールの変更がトレンドを変えたように、ルールの変更とともにプレーが変わってくるのはサッカーの歴史が証明するとおり。U-20W杯は各国の戦術家たちが智恵を絞っての「新しいビルドアップ戦術」「新しいプレッシング戦術」が観られる大会になるかもしれない。
文=川端暁彦
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By 川端暁彦