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“欧州組”として凱旋した伊東純也…挑むのは堂安律、久保建英とのレギュラー争い

2019.06.04

伊東純也は日本代表のレギュラー争いに挑もうとしている [写真]=Getty Images

「ベルギーでのタイトル獲得? 半分と言うか途中からの優勝なので、ちょっと喜びは薄かったですけど、次のシーズンが大事かなと。来シーズンはチャンピオンズリーグもありますし、色々なことを経験できるので、大事にやりたいと思います」

 キリンチャレンジカップ2連戦に向けて始動した日本代表。“欧州組”になって初めて代表合宿に参加した伊東純也KRCヘンク)は、半年前とは少し違う雰囲気を醸し出していた。

 今年1月に開催されたアジアカップでは、柏レイソルの先輩・酒井宏樹(マルセイユ)の傍らで遠慮がちに行動していた。ところが、今回の合宿では周囲と笑顔で会話する場面が見受けられ、硬さが取れたように映った。それも“欧州組”の仲間入りを果たした効果かもしれない。

 異国で実績を積み上げたことは、もちろん大きい。伊東は2月にベルギーへと赴き、2月21日のヨーロッパリーグ・決勝トーナメント1回戦、スラビア・プラハ戦で新天地デビューを飾った。そこからコンスタント出場機会を得て、3月にはリーグ初得点を決めた。ヘンクはプレーオフ1に進出すると、重要局面でもゴールを記録した。伊東の活躍もチーム躍進の原動力となり、2010-11シーズン以来8シーズンぶりのリーグタイトルを手にした。

海外挑戦1年目からリーグタイトルを獲得した [写真]=Getty Images

 矢のようなスピードで駆け上がり、ゴールに突き進むという特長は新天地でも十分通用し、フィリップ・クレメント監督からの信頼を勝ち取るまでに時間はかからなかった。もともと口数が少なく、外国人相手の意思疎通で苦労するのではないかと見られたが、「まずは環境に慣れることと、監督に試合に出してもらえるように練習からしっかりやることしか考えてなかった。あんまりいろんなことを考える暇もなかったです」と無心になれたのが奏功したのだろう。

 欧州における「冬の移籍」はシーズン途中からチームに加入することを意味する。そこから競争を勝ち抜き、出場機会を得ることは容易ではない。「もともと僕は好きなことへの集中力がすごくて、サッカーもそうですけど、ポケモンとかゲームも極めてました」と少年時代を述懐したことがあったが、高度な集中力がここ一番で発揮されたからこそ、伊東は難局を乗り切れたのだ。

[写真]=Getty Images

 一回り成長して戻ってきた日本代表では、より大きな存在感を発揮したいところだ。森保一監督はここまで右サイドのファーストチョイスとして堂安律(フローニンゲン)を起用してきた。が、その堂安も今季はリーグ戦5得点と前年(9得点)を下回る結果に終わっている。

「去年より体の調子はよかったけど、点がついてこなかった。そのへんはメンタルから来るものなのか分からない。アジアカップで空回りして感情のコントロールが難しかった」(堂安)

 20歳のレフティーが壁にぶつかっている。となれば当然、伊東にとっては絶好のチャンス到来ということになる。ただ、今回はもう1人、規格外のアタッカーが名を連ねた。代表初招集となった久保建英(FC東京)だ。

「彼のプレーはあんまり印象はないです。ハイライトとかは見ますけど」と伊東は淡々としていたが、将来の代表を担う逸材との競争は避けられない。定位置獲得は熾烈を極めるが、タテに抜けるスピードは誰にも負けない。そこは自信を持てる最大の武器だ。その推進力に加えて、今は一工夫加えたプレーも出そうとしている。

「仕掛ける部分はベルギーでも通用すると思いました。向こうの監督に求められていたのは、中で受けてのターンとか。そこもうまくできたかなという印象はあります。サイドハーフで張っているじゃなくて、中で受けたりするプレーは森保さんにも求められている。ヘンクで色々経験して自分も幅が広がっていると思いますし、もっとチャレンジしたいです」

森保ジャパン発足直後の強化試合では2試合連続ゴールを決めた [写真]=Getty Images

 森保ジャパン発足では初戦当初のコスタリカ戦、続くパナマ戦で連続ゴールを挙げた。しかし、その後は7試合無得点に終わっている。それだけに、“ゴール”という形で強烈アピールを見せる必要がある。

 森保監督「このキリンチャレンジカップは9月から始まる2022年カタール・ワールドカップ アジア予選に向けての強化」と話している。2018年のロシアW杯出場を逃した伊東にとっては、29歳になる3年後は勝負をかけるべき大舞台だ。欲を前面に出さず、飄々とした姿勢が彼の良さでもあるが、ライバル心を前面に押し出してもいい頃だろう。勇敢で貪欲な伊東純也を見ることができるのか。まずは5日のトリニダード・トバゴ戦での一挙手一投足が楽しみだ。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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