エースのネイマールを欠くブラジル代表は母国で南米王者になれるのか [写真]=Getty Images
6月6日、ブラジル代表に衝撃が走った。アジア王者・カタールとの国際親善試合、21分に10番を背負うネイマールが負傷。涙を流しながらロッカールームへと引き上げた。試合後、右足首の靭帯損傷と診断され、チームからの離脱が発表された。
絶対的エースを欠く中、母国で迎えるコパ・アメリカ2019で4大会ぶりの優勝を果たせるのか。ブラジルを紐解く3つのポイントを紹介する。
① 主軸はロシアW杯から変わらず…ネイマールの代役はネレスか
チッチ監督は2016年6月の就任以降、先発メンバーをほぼ固定し、完成度を高めてきた。一方で招集メンバーが流動的な代表チームにおいて、その選択は時に裏目になることも。昨年のロシア・ワールドカップでは、大会直前に愛弟子レナト・アウグストが負傷。万全のコンディションで臨むことができず、3試合の途中出場にとどまった。また中盤の要・カゼミーロが出場停止となったベルギー戦、その代役として先発したフェルナンジーニョがOGを記録するなど精彩を欠き、準々決勝敗退という結果に終わっている。個人の能力、先発11人の完成度は世界でも屈指だが、チーム全体の総合力不足を露呈した。
ロシアW杯ではベスト8という結果だったものの、ブラジルサッカー連盟はチッチ監督の続投を決断。エデル・ミリトン、ルーカス・パケタ、リチャーリソンと若き才能を招集し、コパ・アメリカに向けて底上げを図ってきた。中でも22歳のリチャーリソンはW杯以降の全ての国際親善試合に出場し、ここまで5得点をマーク。3トップ右のポジションを確固たるものにしている。またネイマールが抜けた3トップ左は、今シーズンのアヤックス躍進を支えたダビド・ネレス、そして中央には欧州王者・リヴァプールに所属するロベルト・フィルミーノが入る見込み。W杯からフルモデルチェンジした3トップで今大会に臨む。
② ベースは“堅守速攻”…課題は引いた相手を攻め崩せるか
ブラジルには『フッチボール・アルチ(芸術的なサッカー)』という言葉がある。勝利はもちろんのこと、華麗にパスをつないで相手を翻弄し、“美しく勝つ”ことを意味する言葉だ。その逆を表す言葉が『フッチボール・ヘズルタード(結果重視のサッカー)』である。たとえ相手にシュートを100本打たれても、ワンチャンスをものにして勝てばそれでいい。その『フッチボール・ヘズルタード』をまさに体現しているのが、チッチ監督率いるセレソンだ。手堅く守ってカウンターという“らしくない”必勝パターンを確立し、南米予選では破竹の9連勝。ドゥンガ体制で窮地に陥っていたチームを見事に立て直した。
しかしながら、W杯では得意の攻撃パターンをなかなか繰り出すことができず、苦戦を強いられた。対戦国はネイマールらのスピードを生かすまいと、自陣で守備ブロックを形成。グループステージのコスタリカ戦、終わってみれば2−0で勝利したものの、ゴールネットを揺らすまで91分間を要した。また、準々決勝のベルギー戦では逆に御株を奪われるような高速カウンターを食らい敗れている。
今大会も対戦国は万全のブラジル対策を取ってくることが予想される。勝利のためにはボールを握りながら堅固な守備を打ち破らなければならない。そういった意味では中盤のアルトゥールはキープレーヤーだ。長短を織り交ぜたパスで相手のギャップを突くことができる選手で、そのプレースタイルから“ブラジルのイニエスタ”と評されたこともある。またネイマールの代役として追加招集されたウィリアン、欧州移籍の噂も絶えないエヴェルトンは得意のドリブルで途中出場から流れを変えられる。攻撃のジョーカーにも注目だ。
③ 30年ぶりの母国開催…優勝は“最低条件”
改めて言う必要性もないだろうが、ブラジルの目標は『優勝』だ。それ以外の結果であれば準優勝だろうがグループステージ敗退であろうが、『失敗』とみなされることは間違いない。W杯以降、チッチ監督に対する風当たりも少々強くなっており、今大会の結果によっては去就問題に発展する可能性もある。
グループステージの顔ぶれは比較的恵まれたと言っていいだろう。開幕戦の相手であるボリビアはコパ・アメリカ出場12カ国でFIFAランキング最下位(63位)。ここで気持ち良く勝利し、波に乗っていきたいところだ。仮にグループステージを首位で通過すると、グループBとCの1位は決勝トーナメントで逆の山になるため、最終決戦まで強豪国と当たることもない。そして何よりもブラジルには大勢のサポーターが付いている。国家斉唱から圧倒的なホーム感を醸し出す“12番目の選手”の存在は頼もしい限りだ。
もう間も無く、カタールW杯に向けた長く厳しい南米予選も始まる。その前哨戦ともなる今大会、タイトルを勝ち取り“ブラジル健在”を世界にアピールしたい。
文=三島大輔
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By 三島大輔
サッカーキング編集部