[写真]=三浦彩乃
「(自分が入った)後半は押してる時間帯もあったので、その時に仕留めていたら気持ち的にも違ったと思いますね。ただ、こういう雰囲気を味わえるのは数少ない選手だけ。この悔しさは無駄にはできないので、来年はもっと活躍できるようにしたいです」
12月7日のJ1最終節。横浜F・マリノスが15年ぶりのリーグ制覇を成し遂げる傍らで、悲願のタイトルを逃したFC東京の面々は悔しさを噛み締めた。開幕前にサガン鳥栖から移籍し、自身初の優勝争いを体験した20歳のFW田川亨介もその1人だ。
前半終了時点で2点リードを許し、大量得点を奪わなければならない状況で、長谷川健太監督はシーズン終盤になって調子を上げてきた田川を、キャプテンの東慶悟に変えて投入。前線に厚みを加えてゴールをこじ開けようとした。田川は持ち前のスピードで前線に飛びし、サイドからのクロスに反応するなど、チャンスを迎えた。が、チアゴ・マルチンスの体を張った守備に防がれ、ネットを揺らせない。結局、劇的弾を叩き出した前節(浦和レッズ戦)の再現は叶わず、試合終了。今季はJ1リーグ11試合出場で1得点と、新天地1年目は不完全燃焼のまま幕を閉じた。
それでも彼は、東京五輪イヤーの2020年に大勝負に出るつもりだ。
「FC東京に移籍してきてから守備の仕事がなかなか難しかった。周りの選手に教えてもらいながらやってきましたけど、最初は思うように試合に出られず、苦しみましたね。(5月のU-20ワールドカップでの)ケガが治り、終盤になってようやくやり方が分かってきてベンチにも入れるようになった。今季J1のゴールがゼロで終わらなかったのはメンタル的にも大きいですし、1点取ったことで次につなげられたかなという気持ちにもなれた。来季は頭から飛ばしていってスタートから使ってもらえるようにアピールしたいです」
ディエゴ・オリヴェイラと永井謙佑というFC東京自慢の強力2トップからポジションを奪うのは容易なことではないが、自らのパフォーマンスをそのスタンダードに引き上げなければ明るい未来は開けてこない。本人も「あれが(Jで試合に出る)基準だと思う」と語っており、彼らがピッチ上で見せている得点力やチャンスメーク、守備の貢献度をといった強みを上回るインパクトを残していく構えだ。
その布石を打つためにも、10日から韓国で開幕するEAFF E-1選手権2019での活躍が待たれるところだ。田川は小川航基、上田綺世とともにFWの一角に名を連ねている。U-22日本代表の実績では2人より劣るものの、森保一監督に評価されているからこそ、五輪本番を半年後に控えたこのタイミングで抜擢されたのだろう。
「ここでチャンスをもらったのは本当に有難いこと。だからこそ、ハードワークして前から守備することだったり、裏に抜ける作業だったり、前線でしっかり起点になるような動きをして、自分のストロングを出していくことが大事だと思います。僕は年齢的に一番若いけど、それは全然関係ない。競争なので、得点にこだわって練習から積極的にやっていきたいです」
今年のU-20ワールドカップで披露したスピードと強さ、ゴールへの推進力は凄まじいものがあった。イタリア戦で負傷交代する直前まで見せていた高度なインテンシティーの高さをつねに出せるようになれば、U-22日本代表の生存競争も、FC東京でのポジション争いも制することも不可能ではない。
「あの大会で改めて感覚的につかめたものはありますし、スピードやパワーの部分は小川くんや綺世にはない部分。そこは絶対に負けたくないところでもあります。『この世代では自分が一番なんだ』という強い気持ちを持ってE-1選手権を戦いたいと思います」
過去を振り返れば、今や日本代表の絶対的1トップに上り詰めた大迫勇也も2013年の韓国大会でチャンスをつかみ、少しずつ実績を積み上げてブレイクを果たしている。2015年中国大会の宇佐美貴史や2017年大会の伊東純也らもその1人。田川が同じ道のりを歩まないとも限らないのだ。
加えて言うと、今大会の舞台となる韓国は奇しくも2017年にU-20ワールドカップに飛び級参戦した思い出の地。ともに戦った久保建英や堂安律、冨安健洋は一足先に海外へ羽ばたき、A代表入りを果たしている。彼らから刺激を受け、持てる力の全てを出し切ってほしいものである。
文=元川悦子
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By 元川悦子