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【インタビュー】林大地 サッカーに打ち込む日々、目に見える結果を得るために

2021.10.04

 3月に追加招集として初めて合流したU-24日本代表でインパクトを残し、東京オリンピックでは5試合に先発出場したFW林大地

 試合を重ねるごとに成長する姿を見せた“ビースト”は、今夏にサガン鳥栖からシント・トロイデンへと移籍、初の海外挑戦を果たす。その林に、移籍後の状況や東京オリンピックを経てのA代表への道筋などを聞いた。

インタビュー=川端暁彦
取材協力=アシックス

―――まずは改めてこのタイミングで移籍を決断した背景を教えていただけますか。

林 オリンピックが大きなきっかけです。普段一緒にプレーできないような選手たちとプレーするのも、1カ月にわたってともに過ごすことも含め、本当に刺激的な毎日でしたから話が来たときに迷うことはなかったですね。

―――即決だったのですね。

林 オリンピックが始まる前からシント・トロイデンから興味を持っている話を受けていましたが、大会中に改めて正式なオファーをいただくことができました。すぐ「行きたいです」と答えていました。「ずっと海外でプレーしたいと思っていた」といったことはなかったのですが、自分の手の届く範囲にそういう話が来たら、自然と「行こう」と思っていたという感じですね。

―――海外でプレーするということに不安を感じて慎重に環境面などを検討する選手もいますが、そうではなかったですか?

林 クラブの環境とかは一切気にしていなかったですね。行ってその場で見て、「ああ、こんな感じのところなんだ」というくらいです。鳥栖もサッカーにすごく打ち込める環境でしたが、ここも同じ印象を持ちました。誘惑がないというか、しっかりサッカーに向き合っていける場所だなという感覚でした。せっかくヨーロッパに挑戦するのだから、今まで以上にサッカーへ向き合いたい気持ちが強かったので。

―――今は練習場と家を往復する日々という感じですか。

林 そうです。朝行って練習して帰って来る感じですね。昨日は試合で、今日は走りのトレーニングだったんですが、家に帰ってきたら、あとは飯をしっかり食って、体のケアをして寝ようかなという生活です。

―――ストイックに生活しているんですね。

林 ヨーロッパに行くから急に生活を正したというわけではなく、鳥栖の頃から意識してやっています。ミョンヒさん(鳥栖の金明輝監督)からも、「私生活は大事だ」と言われてきたので、自分としては引き続きやっているイメージです。その上で、こちらへ来てから新しく感じたことがあれば、さらに採り入れてやっていきたいと思っています。

林大地

[写真]=Getty Images

―――練習の印象はいかがですか。欧州へ渡った選手は、試合以上にトレーニングで違いを感じることが多いようですが。

林 そこは一番強く感じていますね。めっちゃ練習します、本当に。鳥栖もJリーグで一番練習しようというスタンスでやっているチームだと思いますが、そこを超えるんじゃないかなというくらい、すごくたくさん練習しますね。

―――それは練習の「量」ですか? 先ほど走りの練習があったとも言われていましたが。

林 そうですね。量もありますし、走りの練習もあります。今日も試合翌日なんですけど、結構長い距離を走ってきましたよ。日本だと試合の次の日はリカバリーに充てることが多いですけど、今のチームの監督のやり方は試合の次の日でも練習をやるんです。45分くらい公園でしっかり走って、それで次の日は休みになるという流れですね。

―――練習でのぶつかり合いみたいなところはどうですか。

林 そこもやっぱり違いますね。まず足の長さから違いますし、あとやっぱりデカいので(笑)。もう、迫力があります。スライディング一つを取っても、190センチくらいの選手が体を目一杯使って来るので、これはなかなか日本だと味わえないですし、「うわ、ヨーロッパに来たな」という感じになっています。

―――林選手はJリーグだと決して小柄ではないですが、ベルギーだと小柄に見えますよね。

林 めっちゃ、ちっちゃいです(笑)。「せーの!」でガッとぶつかったりしたらデカい相手が絶対に勝つので、そこのタイミングをズラしたりとか、ちょっと潜り込みながらターンするプレーとかは、Jリーグでやっていた時よりも意識しています。

―――試合にはうまく出せている場面もあったかと思います。

林 いや、もっと出したいですね。

―――いきなり点も取りましたが、まだ手応えを感じるような段階ではないですか。

林 あの得点で自信が付いたのはあります。いいスタートは切れたと思うので、あとはそれを積み重ねていけるかだと思います。

―――実際、ヨーロッパでプレーしてみて、伸ばさないといけないと感じているところはどこでしょう。

林 タフさですね。うまさや自分の得意なシュートの形まで持って行くこととかありますけど、まずは目の前のぶつかり合いで負けない、1対1で負けない、しんどいときに死にものぐるいで追い付くとか、付いていくとか、そういうタフさがこっちでやっていくために一番必要だなと思います。それは練習から感じています。

―――FWのポジション争いについてはどうでしょう。

林 日本人の選手たちとポジションを争っている感じですね。鈴木優磨くんも残りましたし、原大智もいて、伊藤達哉もいますから。コミュニケーションが取れるという意味では武器にもなるのですが、前の選手が多いので、フォーメーション次第ですが、出られない選手も出て来ると思います。でもそこで譲る気はないので。

林大地

[写真]=Getty Images

―――結果を出してその争いに勝っていくと、その先にA代表も見えてくるかもしれません。

林 そこは自分で決められることではないですが、森保一監督やスタッフの皆さんから「アイツを連れていきたい。選びたいな」と思ってもらえるようなプレーを見せたいと思います。

―――森保監督は林選手の成長度の大きさを非常に高く評価されていました。

林 オリンピックが終わったあと、森保さんからも自分に「すごく成長したと思う」と言ってもらえました。同時に「もっともっと成長できると思うから、もっともっと成長してほしい」という言葉もいただきました。本当にそのとおりだと思いますし、もっと成長して、また森保さんから「選びたい」と思ってもらえるようになりたいですね。

―――オリンピックは素晴らしいパフォーマンスでしたが、得点だけはありませんでした。チームの結果を含めて悔いもあるかなと想像します。

林 得点がなかった点は、自分が誰よりも納得いってないところです。いくら「成長したね」とか「良かった」と第三者の方が言ってくださったとしても、ゴールを奪えなかったのは、一番納得いっていないですね。

―――やはりFWはゴールを奪ってこそという考えですか。

林 前からそう思っていましたが、ベルギーに来てなおさら点を取ることの重要性を感じるようになっています。去年チームで一番点を取った(鈴木)優磨くんも「評価されるのは点だ」と言っていたので、やっぱりFWにとって得点、目に見える結果が大事だと思っています。そのためにも、私生活から正して、練習ではしっかり準備して、試合では結果を残し続けていく。自分ができることは、それしかないと思っています。


【林に聞く“アシックスブランド”】


―――アシックスのスパイクの印象を教えてください。

林 僕は足の横幅が広いので、なかなか合う靴がないんですが、アシックスのスパイクは横幅が気にならずに履けますし、めっちゃ軽いんです。しかも壊れにくいので助かっています。

―――軽さと壊れにくさは両立が難しいイメージですが、気にせずに履きつぶすイメージですか?

林 これまで派手に壊れたことがないです。僕はプレースタイルがガチャガチャしているし、動きもスムーズではないタイプですけれど大丈夫ですね。一足でも長い期間履けますし、今使っている二足とも結構履いていますね。

―――シント・トロイデンでは練習量が多いお話も出ました。日本と練習場やスタジアムのピッチコンディションの違いもあると思います。

林 こちらのピッチは芝というより、沼のような感じですね。芝生の深いところまでえぐれたりしますけど、今のところ滑ったりはしていません。僕は取替式のスパイクではなく、固定式ポイントのスパイクを履くんですが、しっかりプレーできています。

―――試合の前後半でスパイクを交換するそうですね。

林 汗をかくので、前半用と後半用を持って行っています。汗でズレたり、靴が気になって交換するのではなく、気分で新しいものを履くようにしています。ずっとそうしてきたので、願掛けみたいなところもありますね。

―――アシックスという日本を代表するブランドを着用する意識はいかがでしょう。

林 声をかけていただいた大学生時代から丁寧にいろいろなことを対応していただきましたし、今もそうです。海外に来てからも、日本のように荷物を簡単に送ることが難しい中でも、何かあったらすぐに動いていただき、サポートしていただいているので、すごく感謝しています。スパイクはサッカー選手に大事なものなので、自分の足に合ったスパイクを履きながらプレーできることはすごくありがたいです。

―――「林大地が履いているから履こう」という子どもたちが増えてくれると嬉しいですね。

林 そうですね。あとはベルギーでアシックスのスパイクは珍しいので、選手たちがめっちゃ見に来て、「アシックスのスパイクはいいのか?」と聞いてくるので「履け」と言っています(笑)。

―――今後は宣伝部長の役割も期待されますね(笑)。

林 いいのか聞かれるたびに「買ってこい」と言っておきます(笑)。

By 川端暁彦

2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

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