[写真]=Getty Images
背水の陣で臨んだホームのオーストラリア戦、終了間際のオウンゴールで2-1と競り勝ち、辛うじて2位以内でのグループステージ突破に可能性を残した。ただ、依然としてグループ4位という立ち位置は変わらず、一つも落とせない試合が続く。この状況下で挑むアウェイ連戦の初戦は、ベトナム代表との決戦だ。
過去に日本とベトナムは国際Aマッチで3試合を戦っており、結果は日本の3戦全勝。最初の対戦は2007年7月16日に行われた、アジアカップのグループステージで、当時日本を率いていたイビチャ・オシム監督の愛弟子・巻誠一郎が2ゴールを記録し、4-1で勝利を収めている。なお、南ベトナム(ベトナム共和国)とも国際Aマッチでは4回の対戦があり、結果は日本の3勝1敗。1973年5月20日にはW杯アジア・オセアニア予選で対峙し、釜本邦茂の2ゴールなどで4-0と勝っているが、この白星は日本の記念すべきW杯予選初勝利でもあった。
ベトナムと2度目に相対したのは、2011年10月7日のキリンチャレンジカップ2011。ホームズスタジアム神戸で開催されたゲームは、24分に李忠成の挙げたゴールが決勝点となり、1-0で勝利。原口元気が途中出場でA代表デビューを果たした試合だったことも、付け加えておきたい。
直近の対戦は2019年1月24日のアジアカップ準々決勝。二つのVARが話題となった試合だ。一つ目は24分、CKから吉田麻也がヘディングでゴールを陥れたが、VARによってハンドの判定が下り、得点が取り消される。二つ目は55分、堂安律がペナルティエリア内で倒れ、一旦プレーは続行されたものの、改めてVARの確認により主審はPKを指示。堂安が自ら沈め、1-0で準決勝進出を決めた。
成長著しいベトナムで采配を振るのは、韓国人のパク・ハンソ監督。2002年のW杯でフース・ヒディンク監督のアシスタントコーチを務めた64歳の指揮官は、2017年9月にベトナム代表監督へ就任すると、兼任していたU-23代表を率いて、AFC U-23選手権で同国初のファイナリストに。2018年にはアジア大会のグループステージで日本を撃破し、56年ぶりのベスト4進出へチームを導き、東南アジア最大の大会・スズキカップでも優勝を成し遂げるなど、その手腕は“パク・ハンソマジック”とも称され、国民の絶対的な支持を集めている。
攻撃の中心はMFグエン・クアン・ハイ。2017年にベトナム史上初めてU-20W杯に出場した“新・黄金世代”の中心人物でもあり、高精度キックや切れ味鋭いドリブルでチームのアタックにアクセントを加えていく。今回の最終予選でも、初戦のサウジアラビア戦では得意の左足で先制点を叩き込み、中国戦でも極上のスルーパスでゴールを演出。その攻撃センスでアウェイのスタンドを黙らせている。日本もこのレフティには注意せざるを得ない。
得点感覚に優れたFWグエン・ティエン・リンの存在も見逃せない。“新・黄金世代”を最前線で牽引してきたストライカーは、アジア2次予選で5得点をマークすると、最終予選でもここまで2ゴールを記録。グエン・クアン・ハイのラストパスから奪った中国戦の得点のように、一瞬で裏へと抜け出すスピードは抜群で、常に矢印がゴールに向かう姿勢は相手にとって非常に厄介だ。
ここまでベトナムは4戦全敗と結果は出ていないものの、初戦のサウジアラビア戦は退場者が出てから3失点を喫しており、前半は1点をリードするなど、互角の戦いを繰り広げた。また、ホームのオーストラリア戦は0-1の惜敗。アウェイの中国戦でも、終了間際の同点弾でスタジアムを凍り付かせる一幕も。アディショナルタイムの失点で2-3と敗れたが、内容としては勝ち点3を獲得していてもおかしくないパフォーマンスを披露している。決して楽に勝てる相手でないことは、肝に銘じておく必要があるだろう。
勝ち点3のみが求められる一戦は、日本時間の11日21時キックオフ。試合の模様はDAZNで独占ライブ配信される。
文=土屋雅史
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