広島GK大迫敬介 [写真]=金田慎平
3月24日のウルグアイ代表、28日のコロンビア代表との2連戦から本格始動する第2次森保ジャパン。メンバー発表は15日に予定されており、どういう陣容になるか大いに注目される。
森保一監督は「ベースはFIFAワールドカップカタール2022のメンバー」と語っていたが、気になるポジションの1つがGKだ。
カタールW杯で全4試合に出場した権田修一は清水エスパルスに所属。本人は欧州移籍を目指したが、1月末までに新天地を見出すことができず、今季はJ2でプレーしている。指揮官はトップリーグ以外の選出に難色を示しているようで、権田は外れる可能性がある。
また長年、日本代表を支えてきた39歳のベテラン、川島永嗣(ストラスブール)も代表活動に一区切りをつける意向を表明。現在、肩のケガでリハビリ中ということもあり、選外になるだろう。
となると、軸を担うのは、カタールW杯メンバーのシュミット・ダニエル(シント・トロイデン)と、ポルティモネンセで定位置をつかんだ2018年ロシアW杯メンバーの中村航輔の両欧州組。シュミットは31歳、中村は28歳と円熟期で3年後を目指すのは全く問題ない。シュミットも「次のW杯に出なければ、カタールに行った意味がない」とギラギラした野心を抱いている。
その2人に追いつけ、追い越せで向かっていく若い世代も必要だ。これまでの序列だと東京五輪代表の正守護神だった谷晃生(ガンバ大阪)が一歩リードと見られてきたが、ここへきて大迫敬介(サンフレッチェ広島)が凄まじい追い上げを見せているのだ。
もともと大迫は2019年のコパ・アメリカとEAFF E-1選手権に抜擢されるなど、東京五輪世代ではトップを走るGKだった。が、2020年にチームで林卓人とのポジション争いに敗れ、15試合出場にとどまったことも響き、谷に東京五輪のレギュラーを奪われてしまった。その後は2022年EAFF E-1選手権の中国戦には出場したものの、カタールW杯は落選。
「いろいろ複雑な気持ちがありましたけど、すごく刺激をすごくもらえました」と自身が立てなかった大舞台に思いを馳せた。
ただ、彼はまだ23歳。GKとしてのキャリアはここからだ。2023シーズンは代表復帰への布石を打つ必要がある。その意気込みもあって、大迫は開幕3試合で存在感を示している。
3月3日の横浜F・マリノスとの大一番は大きな見せ場の1つだった。ここまで北海道コンサドーレ札幌に0-0、アルビレックス新潟に1-2と未勝利の彼らにしてみれば、昨季王者を叩いて上位浮上のきっかけをつかみたかった。その思惑通り、開始早々の4分に満田誠の右からのクロスを東俊希が押し込み、広島はいち早く先制。大迫は攻撃陣の援護射撃を受ける形になった。
そして、彼自身も12分に西村拓真との1対1をストップして勢いに乗る。19分にクロスをうまく合わせられて失点を喫したが、やられたシーンはこの1回。後半も終始安定感を維持し、試合終盤にはヤン・マテウスの抜け出しを鋭い飛び出しで阻止。大迫のおかげで勝ち点1を逃さずに済んだ。
「相手に流れを渡さないところだったり、1対1の場面は自分もいい感覚を今、つかんでいるので、自信を持って止めることができた。さらに自信を深めることができたし、気持ち的にもすごい余裕が生まれているのかなと思います」と本人も充実感をにじませた。
これでチームが勝利し、下馬評通りに優勝争いに絡んでくれば、大迫の序列はもう一段階上がるだろう。そうなるまでの間、今は辛抱の時期かもしれない。
「開幕からそうなんですけど、試合の入りはすごくいいのに、追加点が取れなくて流れが相手に行ったりしてしまう。自分中心にもっと我慢強く戦わないといけないですし、早く結果に結び付けたい。去年も序盤があまりよくなくて、『勝ち点を拾っておけばよかった』と後から思うシーズンだったので、そうならないようにしないといけないですね。ひとつキッカケがあれば勢いがつくと思う。今は我慢のしどころですね」と若き守護神も勝負どころでしっかり踏ん張る覚悟だ。
そういったタフさと逞しさを身につけたのが、やはり東京五輪とカタールW杯という大きなターゲットを続けて逃した悔しさをバネに自己研鑽を図ったからだろう。大迫は「日本代表はずっと求めているところ」と強いこだわりを持って闘い続けている。もともとはあまり感情を表に出さないタイプだったが、飽くなき闘争心を感じさせるようになった点も成長のひとつと言っていい。
2026年北中米W杯で8強の壁を破る原動力になろうと思うなら、もっともっとチームメートを鼓舞し、アクションを起こせる守護神にならなければいけない。今の大迫敬介は確実に変貌を遂げつつあるのだ。
伸び盛りの人材をここで呼ばなければもったいない。おそらく今回も谷との競争になるだろうが、あとは森保監督の判断次第。新体制の陣容が楽しみだ。
取材・文=元川悦子
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By 元川悦子