待ちに待った世界の舞台　U20日本代表、いざ「全員初めてのワールドカップ」へ

　現地時間5月20日、20歳以下の世界一を決する『FIFA U－20ワールドカップアルゼンチン2023』が開幕した。ハビエル・マスチェラーノ監督に率いられた地元のアルゼンチンは、ウズベキスタンとの初戦で10番を背負う期待のMFバレンティン・カルボーニ（インテル）のスペシャルな活躍などで2－1と快勝。「世界一」を目指す各国の若き逸材たちが競い合う舞台が始まったことを印象付けた。

　そして若き日本代表の戦いも、現地時間21日18時（日本時間22日6時）から開幕を迎える。前回大会はコロナ禍によって中止になったため、4年ぶりの世界舞台。U－17ワールドカップもコロナ禍で開催されていないこの世代にとっては、「全員が初めてのワールドカップ」（冨樫剛一監督）となる。

「きっと緊張しないはずがないんです。ワールドカップですからね」。そう言って笑った冨樫監督は「慎重になり過ぎないように」という点と「戦う姿勢のところ」を改めて強調するとしつつも、「相手や状況、時間に応じて色々な戦い方ができるのがこのチームの強み」と、固定的なゲームプランではなく、柔軟性を持って戦うことも強調した。

　指揮官が「色々な戦い方、立ち位置を取れるように準備はずっとしてきた。相手によって状況によって、誰をピッチに立たせるかで色々な力を出せるようになっている」と胸を張るように、チーム結成以来追求してきた戦術的な幅の広さは一つの武器となる。システムも4－2－3－1と4－3－3だけでなく、3バック（5バック）も選択肢にあり、前線の組み合わせも多彩なオプションがある。

　3月のアジア予選には不参加だった欧州組3名の合流も心強い。世界大会を見据えて弱みでもあった高さを補えるDFチェイス・アンリ（シュトゥットガルト）、世界的名門のセカンドチームで早くも存在感を見せている福井太智（バイエルン）、そして高校サッカー選手権での活躍も記憶に新しい個性派ストライカーのFW福田師王（ボルシアMG）が新たにチームへ加わった。

　J1リーグで試合出場を重ねたDF高井幸大（川崎フロンターレ）など既存メンバーの底上げも進み、懸念されたMF山根陸（横浜F・マリノス）、FW坂本一彩（ファジアーノ岡山）といった負傷者も大会の開幕には間に合った。「あとは監督の采配次第」と冗談めかす指揮官が、良い意味で頭を悩ますことのできる状態にチームは仕上がったと言えそうだ。

　15日に行われたアルゼンチンとの練習試合（アジア予選終了後、唯一の国際試合）でも、「1年前に（同じアルゼンチンと）やったときよりもやれた」（MF佐野航大／ファジアーノ岡山）といった手応えを個々の選手は掴みとっている。

　初戦はアフリカを圧倒的な強さで制した難敵セネガルが相手となり、高さを含めてタフな攻防が予想される。ただ、冨樫監督は相手の強さは認めつつ、「まず選手たちが自分の持っているものを出せるかどうか。それを出せさえすれば、間違いなく自分たちの成長を感じられる試合になる」と強調した。

　主将のMF松木玖生（FC東京）も硬くなってしまったアジア予選の初戦の反省も踏まえつつ、「ノビノビとプレーできるようにしたい」と言う。また、落ち着いて試合を運ぶために重要になりそうな先制点については「自分が決めますよ」とニヤリ。確かな自信をのぞかせた。

　待ちに待った世界舞台で、新世代の日本代表の冒険が始まろうとしている。

取材・文＝川端暁彦