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“世界を獲りにいく”視点で再考すべき「基準」 U-20日本代表に“足りなかったもの”

2023.05.29

U-20日本代表はグループステージで敗退に [写真]=Getty Images

 日常の戦いには長けているが、非日常の攻防には弱い。U-20日本代表が『FIFA U-20ワールドカップアルゼンチン2023』グループステージ3試合で見せたのは、少しナイーブさも感じるそうした一面だった。

 イスラエルとの第3戦はそうした意味で象徴的なゲームだったかもしれない。「日本と似ている」という分析を冨樫剛一監督もしていたし、選手たちからも同様の言葉が聞こえてきた。しっかりビルドアップの形をもってボールを動かし、日本でよく言う「良いサッカー」を志向してくる。個人を押し出し、中盤省略も辞さないセネガルとコロンビアとは違うというわけだ。

 ただ、どうも違和感のある見解だった。確かに外骨格というか、枠組みの点で日本とイスラエルは似た部分のあるチームである。しかし根底にある思想というか文化のようなもののギャップは大きく、日本とは本質的な意味では異質な集団に思えたからだ。

 試合の前半は、普段日本でやっているようなサッカーの延長線上にあった。気持ちよくボールを保持し、相手の戦術に合わせて守備も展開。セネガルのような無軌道なパワフルさや、コロンビアのような個人の駆け引きとセンスで局面を打開されてしまうような感覚もない。良い形で1-0と折り返した。

 ただ、後半に入ると「選手たちは圧を感じていた」という指揮官の言葉通り、国内の試合では体感できないレベルの圧力をイスラエルがかけてくる。感情的なプレーは退場者という形で日本に優位性をもたらしたかに見えたが、それもそうはならなかった。むしろよりエモーショナルになった相手に吞み込まれていく。

 連戦の消耗という一面もあったと思うが、それは相手も同じ条件。今大会初先発だった選手たちが次々に足が止まっていった流れを見れば、連戦のせいというより純粋に世界大会の強度で戦うためのフィジカル的なベースが足りなかったと見るべきだろう。3試合を通して、5人交代にもかかわらず、後半のパフォーマンスが落ち込んでしまったのがチームの現実だ。

 ボールを「奪う」力の不足も明らかだった。FWを含めて献身的な姿勢自体は持っている選手が多い。ただ、コロンビア戦で特に目立ったように、個人の対応でボールを奪い切れずに運ばれる場面も頻出。ボールを奪いに行って奪えない状況の多さが、引いて守る時間の増加にもつながり、消耗にもつながる悪循環があった。

 冨樫監督は「サッカーはもちろん技術だけでもいけないし、戦術だけでもいけないし、やはり世界と戦ううえで避けては通れないものというのがやっぱりある」と、そうした不足を改めて痛感した様子だった。逆に言えば「この3カ国とやれてよかった」(冨樫監督)」という言葉が出てくるのも、そうしたギャップを痛感したからこそだろう。

 今回の日本が突破圏外のチームだったかと言えば、そうではないだろう。選手個々の地力の高さを感じる場面はむしろ少なくなかった。展開としても、このグループであっても突破できた可能性は十分にあったと思う。ただ、幸運の女神の味方があれば突破していたというのは、いつか世界を獲ろうという国の目指す基準ではあるまい。足りなかったものを直視するべきだ。

 個々人の感じたギャップは成長の糧としてもらいつつ、日本サッカー界としてはあらためて国内での様々な「基準」について、世界を獲りにいくという視点から考え直すべきだろう。

取材・文=川端暁彦

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By 川端暁彦

2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

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