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2026年北中米W杯へ上々の再スタート! 完全復活した冨安健洋の重要性

2023.09.13

日本代表DF冨安健洋 [写真]=Getty Images

 ワールドカップ(W杯)4度制覇の強豪・ドイツ戦の4-1に続き、12日のトルコ戦(ヘンク)も4-2で勝利した日本代表。欧州での9月シリーズを連勝で締めることができ、日本代表の森保一監督も「ドイツ戦で勝利を深め、トルコ戦でさらに多くの選手がコンセプトを試合の中で確認できたのは非常に大きなこと。自信を深めることができた」と前向きにコメントしていた。

 トルコ戦に関して言えば、ドイツ戦から10人という大幅メンバー変更の中、伊藤敦樹、中村敬斗といった第2次森保ジャパン発足後の新戦力がゴール。初招集の毎熊晟矢もいい味を出していた。前半のうちに3-0にした後、リスタートとカウンターから2点を失ったのは反省点だが、伊東純也の古巣凱旋PKで4点目を奪い、決着をつけたのは大きかった。

 その直後からピッチに立った冨安健洋もクローザーとして堅守を披露。最終ラインに安定感をもたらし、逃げ切りの原動力となった。

「ケガで何人かが交代する難しいアンラッキーな日ではありましたけど、締める時間帯だったのでゼロを意識して入りました。正直言って、3-0の後はちょっと緩みが出たのかな。アーセナルでもよくやるんですけど、試合を殺しきる、決めきるところはやっていかないと。僕がピッチにいたら、後ろから締めるところはもっと意識してやっていきたい」と彼は険しい表情で語っていた。

「欧州勢と敵地で連勝というのも当たり前になるべき」とも強調する冨安のスタンダードは極めて高い。それが名門・アーセナルで熾烈な競争にさらされる男の基準なのだろう。

 そんな冨安だが、ご存じの通り、新生ジャパン発足後は今回が初参戦。2022年カタールW杯までの4年間ももちろん主軸だったが、2021年夏にアーセナルへ赴いてから左右にふくらはぎや右ひざを痛め、長期離脱を繰り返してきた。2022年は厄年と言っても過言ではないほどで、肝心のカタールW杯のスタメンはクロアチア戦1試合のみ。その大一番も不安定なパフォーマンスを露呈し、本人は「今大会はトップパフォーマンスを出せた試合は1つもなかった。ケガを含めてホント、嫌になりますね」と顔をゆがめたのだ。

 このままでは万全の状態での代表復帰は難しい…。そんな観測も強まる中、今年3月・6月と第2次森保ジャパンの活動が着々と進んだ。指揮官も冨安不在を想定し、谷口彰悟を呼び戻し、伊藤洋輝をCBで併用するなど対応策を講じてきた。

 しかしながら、今回の2連戦で戻ってきた冨安の存在感たるや、想像を絶するものがあった。ドイツ戦では板倉滉とCBコンビを組み、クラブの同僚、カイ・ハフェルツに仕事らしい仕事を一切させず、間一髪のシーンでは体を投げ出して阻止。そのうえで伊東純也、上田綺世のゴールにつながる起点のロングフィードを出した。攻守両面で勝利に貢献した彼に対しては絶賛の嵐だった。

「A代表に入って初めてCBを組みましたけど、個々でも負けず、人数をかけて守れるということはトライできたと思います。トミの機動力含め、守備陣の運動量がなければ守れなかった試合だった」と相棒・板倉も素直にリスペクトを口にした。

 加えて言うと、コンディション面の懸念も見事に払拭してみせた。中2日のトルコ戦で短期間ながら出場し「連戦OK」とアピールしたことで、今後のアーセナルや代表でも中2〜3日の過密日程を消化できるはず。「事あるごとにケガで離脱する」といったネガティブなイメージを打ち消し、完全復活を印象づけたことで、冨安率いる日本代表守備陣は安定感と柔軟性を増していくに違いない。

 周囲の高評価を目の当たりにしても、冨安本人は決して浮かれてはいない様子だ。

「トルコ戦も4-2という結果はスッキリしないですね。より上を目指しているからこそ、ゼロで抑えて4-0、5-0で勝てればよかったと思います。この代表期間にも言いましたけど、W杯までの後3年で『勝ち癖』をつけることが大事。全部勝てればいいですし、そこを目指さないといけないと思っているので」とどこまでも高い意識を示し続けているのだ。

 キャプテン・遠藤航も6月の就任時に「W杯優勝を目指す」と公言したが、冨安の高い意識や質の高いパフォーマンスを見ていれば、それもあながち不可能ではないように思えてくる。今回の2連勝は確かな成長の証明ではあるが、それを積み上げていかなければ頂点には近づけない。日頃、アーセナルでタフな競争にさらされている冨安は誰よりもその重要性を熟知している。貴重な経験値を今後も代表に注入し続けてくれれば、チームの成長曲線はさらに引き上げられるだろう。

「次の10月の代表まで7試合くらいあって、(UEFA)チャンピオンズリーグも入ってくるので、タフな日程にはなりますけど、まずはしっかりとフィットした状態でいることが大事。それとサッカーが変わるので、高い要求に応え続けることが必要です。少しでも多くの試合に絡んでいけるように頑張りたい」と本人は強い意気込みを示していた。

 代表とは違い、今季アーセナルでは左サイドバック(SB)が主戦場。けれども、全ての経験値が冨安健洋の血となり肉となる。

 カタールW杯での大きな挫折を乗り越え、ようやく代表でリスタートした24歳の大器はここから歩みを一気に加速させていくに違いない。

取材・文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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