3日間のトレーニングキャンプを行ったフットサル日本代表候補 [写真]=SHOKO
9月25日から28日の3日間、JFA夢フィールドでフットサル日本代表候補合宿が行われた。招集メンバーの平均年齢は22.6歳。14名中7名が初選出とフレッシュな顔ぶれとなった。
今回のトレーニングキャンプはAFCフットサルアジアカップ2024一次予選に関わる活動とは異なり、来年2月に開催予定の2024アジアインドア・マーシャルアーツゲームズなど先々を見越し、日本代表の層を厚くすることに主眼が置かれた。
初日の活動はミーティングから始まり、2日間の4セッションで日本代表のプレーモデルや戦術が落とし込まれた。3日目に行われたFリーグ ディビジョン1所属のフウガドールすみだとのトレーニングマッチは2-3で敗戦。しかし、多くの指導者が見学に訪れるなど、充実したキャンプとなった。中村充、本石猛裕、ナカマツルアンの3名はアジアカップ一次予選のサポートメンバーに選ばれ、国内合宿の最終日まで継続してトレーニングに参加した。
好調のY.S.C.C.横浜でスターティングメンバーに名を連ねる安井嶺芽は、今回が初選出。高校時代は帝京長岡高校サッカー部に所属し、齋藤日向や土岡優晟、中井駿斗ら現在Fリーグで活躍する選手たちとともに全日本ユースフットサル大会で優勝した経験を持つ。高校卒業を機に競技から離れることを決めていたが、多摩大学体育会フットサル部からの誘いを受け、悩んだ末にフットサルの道に進んで大学フットサル日本一も経験。今回の代表候補には本石や荒川勇気ら大学時代から面識がある選手も多くすんなりなじむことができたというが、トレーニングについては「普段やっていない形の練習でいつもの1週間ぐらいの疲労感がくるほど強度も高く、だいぶ苦労している」と振り返る。
今季のFリーグの中で、YS横浜のファーストセットは完成度が高く対戦相手の脅威になっているが、安井はセットを組む堤優太、高橋響、菅原健太のような個性が際立ち分かりやすいストロングポイントを持つ選手とは異なり、選手間のバランスを取る潤滑油のような存在だ。自身については「僕は特徴のある選手ではなく、周りの選手のいいところを引き出すことを考えながらプレーしている。その選手の特徴を生かすことが自分の良さにもつながるが、代表活動の短い時間の中で特徴をつかむことには難しさも感じている」と分析。堤や齋藤といった近しい選手がフル代表で国際経験を積む中、今後の目標を問うと「今の体型では、フル代表に入ったとしても何もできないと感じている。体重を増やすことでもう一歩踏ん張ったり、体を張ったりできるようになると思うので、まずひとつ体づくりには取り組みたい。あとは今は動画などで特徴をつかむことができるので、短期間で組む選手の良さをとらえるためにコミュニケーションを取って考えを共有して、見る範囲を広げていけたらと思う」と展望を語った。
同じく初招集のナカマツルアンは、9月上旬に日本国籍を取得したばかり。ブラジル生まれ、日本在住のナカマツは、小学5年生のときにブラジルへの移住を考え8カ月滞在。そのときに初めてフットサルに触れた。計画が変わり日本に帰国した後に父親が「日本一のチームがある」と探してきたのが、Fリーグで15回の優勝を誇る名古屋オーシャンズ。セレクションを受けて名古屋オーシャンズU-15に加入した。サテライトに昇格した初年度からフットサル日本代表入りを目指していたといい、2年の月日をかけて日本国籍を取得。帰化後2週間での代表候補選出に家族も喜んでいる。
積極的なプレーが持ち味で「うまくいかないときでもやり切るメンタルを持ち、ミスをしても積極的にいくと決めている」と話すナカマツだが、初めての代表活動は「一度もやったことのない戦術は頭で理解していると思っても、いざピッチに立つと臨機応変に対応するのが難しい」と戸惑いもあるようだ。「木暮監督からもアドバイスを受けたが、頭を使う部分、戦術理解を高めていきたい。あとはシンプルに個人の能力を上げる。ひとりでも局面を打開できるような選手になりたい」と話し「まだ具体的ではないが、できれば海外で活躍できるような選手になりたいと思っている。もちろんワールドカップにも出たい」と意欲を見せた。
およそ1年9カ月ぶりの招集となった名古屋オーシャンズの甲斐稜人は「以前とはプレーモデルが変わっていることを(9月に行われた)ブラジル遠征の試合映像を見ても感じていたが、僕自身の順応するスピードをもっと早くしないと、と思っている。ハーフを越えてしまえば自分の得意な形を出しながらプレーモデルに合わせられるところもあるが、まだ理解できていない部分もある。セッションを重ねるごとに『今のは合っていたな』と思うことも少し増えたが、まだまだ足りない」とトレーニングを振り返る。
2021年のインタビューでは「3年後のW杯を目指す」と話していたが、現状については「代表のやり方が完全に変わっているので、僕が以前考えていた基準とは異なりフラットな状態だと思っている。戦術をいかに早く理解できるかで呼ばれるメンバーも変わってくると思うが、まだ自分は足りていないというのが正直な感想」と話す。しかし、今年2月に名古屋に移籍しフットサルに専念できる環境に身を置いたことで、目標に向けて逆算して取り組めるようになったという。リーグ戦で出場機会を得られなかったシーズン序盤には、トレーナーに協力をあおぎ自主的にトレーニングを増やすなど「一次予選に向けて代表活動がある4カ月後にはいい状態、いいコンディションでプレーをする」という目標に向けて準備をしてきた。思い描いていたとおり代表候補には選出されたが「まだ足りない部分があるのでアジャストしていかなくてはいけない」とあくまでもストイック。来年9月のW杯に向けても逆算した目標設定をしているといい、代表定着を目指す。
弱冠15歳でフル代表候補に選出された羽生恒平は「めちゃくちゃびっくりした」としながらも「家族とも『Fリーグのそれぞれのチームで活躍している選手ばかりだから、一緒にトレーニングできることは貴重だ』と話して臨んだ」と話す。初めて触れた日本代表のトレーニングは「強度もとても高いし、自分のチームとの戦術の違いもある。自分の強みを出したり、周りの選手とうまく合わせたりすることの難しさを感じている」。初めは緊張して誰とも話ができなかったが、徐々に緊張が抜けリラックスしてプレーができるようになった。今年5月にU-19フットサル日本選抜に選ばれ、6月にはFリーグデビュー戦で初ゴール。最年少出場と最年少得点、ふたつの記録を更新した。「出場機会を増やすためにこの1年が勝負」と話していたが、自身の目標を大きく上回る代表候補選出。これから3大会、4大会とW杯を目指せる年齢だが、一番の目標は「長くフットサルをプレーし続けること」だという。「トップチームでも代表合宿でも、どこに行っても新しい発見がある。今の年齢からレベルの高い先輩たちのプレーに触れることで、自分が年を重ねてからのプレーや立場を理解することにつながっていくと思う。いろいろなものを吸収して自分のものにできれば、これから先のFリーグでの活躍やフル代表にもつながっていくと思うので努力し続けたい」と前向きだ。
▼フットサル日本代表候補合宿参加メンバー
GK
井戸孔晟(Y.S.C.C.横浜)
入江悠斗(フウガドールすみだファルコンズ)※
FP
PIVO 荒川勇気(ペスカドーラ町田)
ALA 中村充(立川アスレティックFC)
ALA 安井嶺芽(Y.S.C.C.横浜)※
ALA 齋藤日向(シュライカー大阪)
PIVO 菅原健太(Y.S.C.C.横浜)※
PIVO 本石猛裕(バルドラール浦安)
FIXO 橋本澪良(バサジィ大分)※
FIXO 井口凜太郎(シュライカー大阪)※
ALA 甲斐稜人(名古屋オーシャンズ)
FIXO 倉科亮佑(ペスカドーラ町田)
ALA ナカマツルアン(シュライカー大阪)※
ALA 羽生恒平(フウガドールすみだファルコンズ)※
※初選出
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By サッカーキング編集部
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