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闘将化した冨安健洋の圧倒的統率力…キャプテン・遠藤も絶賛する「抜群の安定感」

2023.10.18

 2022年6月に0-3で完敗したチュニジア相手にリベンジを期し、17日の一戦に挑んだ日本代表。5-4-1のブロックを敷いてきた相手は確かに強固な守備と屈強なフィジカルを前面に押し出してきた。日本は序盤攻めあぐんだ印象だったが、徐々に久保建英を軸に突破口を見出していく。

 スタメンに抜擢された旗手怜央と中山雄太の左のタテ関係に久保が絡み、そこに守田英正が連動して流動的に攻めを構築していくのは三笘薫がいる時とは異なる形。左で崩して右の伊東純也が仕留めるといったパターンも2点目のシーンで具現化し、2-0で勝利。今後へさらなる期待を抱かせた。

 こうした中、守備陣は相手をシュート1本に抑えた。終了間際の後半アディショナルタイムに左クロスからFWハイセム・ジュイニにポスト直撃の決定機を作られたのは課題だが、それ以外は最終ラインがしっかりと試合を引き締め、6月のエルサルバドル戦以来のクリーンシートを達成した。

 重要な立役者の1人が冨安健洋だろう。FIFAワールドカップ(W杯)カタール2022を不本意な形で終えることになり、その後はケガで長期離脱していた男が戻ってきたのは9月シリーズ。ドイツ・トルコ2連戦で圧巻パフォーマンスを見せると、今回の10月シリーズもカナダ戦前半とチュニジア戦にフル出場。冷静沈着な状況判断とリスク管理、左右両足で蹴り込む長短の精度の高いパス、多彩な展開力など、数々の要素で圧倒的存在感を見せつけたのだ。

 「彼もケガがあったり、代表ではなかなか結果が残せないという思いがあっただろうけど、前回のドイツ戦からチームに自分のよさをかなり還元してくれている。アーセナルでやっている1対1の部分だったりとかを代表でもそれを継続して示してくれている。センターバック(CB)で出てるのも大きいかもしれないし、今日のパフォーマンスも含めてすごく安定感が出てると思います」とキャプテン・遠藤航は太鼓判を押す。一方で、CBコンビを組む板倉滉も「抜けた身体能力、危機察知能力を持ちながら、常に状況を把握して動く素早さとか、すごいなと実際にやりながら感じています」と絶賛していた。

 「この男がいるだけで、ここまで守備の安心感が増すのか」と驚き半分に見ている人々も少なくないはず。一時は代表キャリアの危機に瀕したと言っていい状況から、冨安は不死鳥のように蘇ったのである。

 さらに特筆すべき点が「闘将化」だろう。今回の冨安は鬼気迫る様子でチームメートを鼓舞する様子が印象的だった。特に目を引いたのが、チュニジア戦後半33分に町田浩樹が競り合ってファウルを受けたシーン。彼は主審に向かって猛抗議し、怒りを露にしたのだ。

 「ちょっと感情を出し過ぎるのもDFはよくないんで、そこのコントロールをうまくやらないといけないというふうには思います」と本人は反省気味に語っていたが、第1次森保ジャパン時代の冨安はここまで気持ちを強く押し出すタイプではなかった。

 吉田麻也ら先人たちが去った新生ジャパンでは「自分が守備陣を引っ張らないといけない」という思いが強まったからこそ、そういった行動になっているのだろう。

 「麻也さんはピッチ内だけじゃなく、ピッチ外でもキャプテンシーを発揮してくれていました。でも僕はそんなに特別に意識することなく、僕は僕のやることをやるという感じですね」と本人はそこまで気負いはない様子。

 しかしながら、「ラインコントロールは自分の役目だと思っているし、試合の流れを見て行くところ行かないところを前に伝えることをやらないと、FWまでの距離が遠くなって難しくなる。あとは試合の終盤の締め方。今回も得点チャンスは何回もあったんで、そこで仕留められれば、試合も相手も殺せる。そういうチームになるように仕向けていきたいですね」と統率役としての自覚を日に日に強めているのは確かだ。

 やはりアーセナルという世界最高峰クラブでの経験値は非常に大きい。それを日本代表に還元して、本気で2026年北中米W杯で頂点に立ちたいというのが、冨安の偽らざる本音なのだろう。

「シンプルにアーセナルでやっていることを還元したいという思いが強いですね。アーセナルで学んでいることがトップトップだと思っていますし、信じているので。アーセナルで求められているレベルはおそらく普通ではない。シンプルにつぶせるところでつぶせていなかったり、決めるべき時に決められないとか、本当に細かい部分なんですけど、それを自分自身にも求めていますし、周りの選手にも求めていきたいと思っています」

 冨安はこうも発言していたが、プレミアリーグのトップクラブで生き抜くというのは寸分のミスも許されないということ。それを代表全員が実践していけば、W杯8強どころか、その上も夢ではなくなる。高い高い領域を本気で追い求める24歳のDFの真摯な姿勢がチーム全体に広がり、スタンダードが上がれば理想的。彼には「最終ラインの闘将」として、つねに厳しく、激しく、戦い抜いてほしい。

取材・文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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