奥抜(左)と中村(右) [写真]=Getty Images
2024年の幕開けを飾る『TOYO TIRES CUP 2024』タイ代表戦が日本代表としては初となる元日に開催される。試合直後にAFCアジアカップ2023のメンバー発表が控えており、当落選上の面々にとって非常に重要なアピールの場になる。
森保一監督もすでにチームの骨子は固めていると見られるが、タイ戦のパフォーマンス次第で数人を入れ替えることも視野に入れているはずだ。
とりわけ、左足首のけがで離脱中の三笘薫が君臨する左サイドアタッカーに関しては、慎重な見極めが必要になる。
今回は10月のカナダ戦で左足首を負傷し、12月に入って復帰した中村敬斗、同シリーズで追加招集されながら体調不良で出番なしに終わった奥抜侃志の2人が招集されている。
トップ下やFWもできる南野拓実、11月のシリア戦で左に入った浅野拓磨もいるが、このポジションを主戦場とする若い2人のパフォーマンスはチェックしなければならないだろう。
おそらくタイ戦は奥抜がスタートから出ることになる見通しだ。
「前回、自分がプレーできなかったので、レベルの高いところでどれだけ通用するかを試しながらやっていきたい。ドイツに行ってから縦への突破や推進力、上下運動も日本にいた時よりもできるようにはなりましたし、守備面でも成長したと思います」と奥抜は自身のストロングを強く押し出す構えだ。
個の打開力に秀でるドリブラーという点で言えば、奥抜は中村敬斗よりも三笘に近い。今夏からプレーするニュルンベルクでも、サイドに張って1対1で仕掛けるプレーを求められているという。その能力が認められ、今シーズン前半戦全17試合に先発。3ゴールというまずまずの数字を残している。
「代表では単にサイドに張ってプレーするというより、中に入ったり、連動して動く感じ。『流動性を持ってやってほしい』と言われている」と本人は言うものの、三笘のアジアカップ参戦に暗雲が立ち込めている今、個の力で局面打開できるドリブラーはやはり必要。奥抜には積極的な仕掛けで勝負してほしいところだ。大宮アルディージャからわずか1年半で代表まで駆け上がった男の底力を今、ここで示すしかない。
一方の中村、は完全復活を印象付けることがタイ戦最大のテーマだ。
2023年3月のウルグアイ戦で初キャップを飾ってから代表4試合に出場し、4ゴール。ハイペースで得点を積み重ねている。
もともと年代別代表時代はFWでプレーしていた選手だけに、シュート力の高さは折り紙付き。タイ戦に向けた練習でも次々とゴールをゲットしており、決定力の高さは大きな魅力と言っていい。
「三笘選手と僕は、お互いゴールに向かうという趣旨は一緒ですけど、僕の特徴は逆サイドからのクロスに入っていくことや、連携しながらの組み立て、ペナルティエリア内でのアイデア。チームのタスクを果たしたうえで、自分の武器を発揮していければいいかなと思います」と本人も語っている通り、三笘や奥抜のようなドリブラーではない。だからこそ、森保監督はここまで「三笘とは異なるタイプの左サイド」として重用してきたのだろう。
タイ戦では出場時間が限られるかもしれないが、数少ないチャンスを決め切るという彼自身のストロングを示し、さらに数字を上乗せできれば理想的だ。
別メニューの続く浅野、上田綺世の両FWが欠場濃厚とみられるだけに、中村敬斗のフィニッシャーとしての非凡な能力がより重要になる。右の伊東、堂安律らの上げるクロスに飛び込んでシュートを決めるような形が出ればベスト。ゴールという結果でアジアカップへの扉をこじ開けてほしい。
いずれにせよ、2人のカタールの行方は三笘のケガの状態、11月のミャンマー戦で先発した相馬勇紀の扱い次第という部分も大きい。FIFAワールドカップカタール2022メンバーの2人は実績面で上回るため、奥抜と中村敬斗はそれを上回るような迫力や勢い、伸びしろを示さなければならない。
2023年代表戦の4ゴールの中村敬斗はかなり近いところまで来ている印象だが、奥抜にも切れ味鋭い突破という伝家の宝刀がある。それぞれに最高のパフォーマンスを見せつけ、森保監督を悩ませる状況に持っていく必要がある。
新年早々、聖地・国立競技場で満員の大観衆を驚かせるのは奥抜か、それとも中村敬斗か。“ポスト三笘”を巡る左サイドのバトルは見逃せない。
取材・文=元川悦子
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By 元川悦子