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歴代“背番号10”が勝ち得たアジアタイトル 堂安律、今大会のけん引役になれるか

2024.01.13

堂安律 [写真]=金田慎平

 2023年6月のエルサルバドル戦から9連勝と“史上最強”の呼び声高き第2次森保ジャパン。14日のベトナム戦から幕を開けるAFCアジアカップカタール2023でも優勝候補筆頭と目されている。とはいえ、この大会が一筋縄ではいかないのは過去の歴史が物語っている。

 2019年のUAE(アラブ首長国連邦)大会で、準優勝に終わった瞬間をピッチで味わった堂安律は、その事実を痛感している1人である。

「毎回、日本が優勝候補と言われていると思いますけど、直近2大会は優勝できていないというのは情けない結果だと正直、思います。頭の中ではそろそろ圧倒的なナンバーワンにならなきゃいけないと感じています。ただ、その片隅には『そんなに甘い大会にならない』というのもある。理想と現実が違うのもわかっていますけど、僕らは理想を求めて大会に臨んでいくつもりです」と10番を背負っては初のビッグトーナメントとなる大会へ、改めて気合を入れ直した。

 思い起こすこと5年前。堂安は南野拓実とともに第1次森保ジャパンの看板アタッカーと位置づけられた。が、日本は初戦のトルクメニスタン戦でいきなり失点。波乱含みのスタートを余儀なくされる。厳しい展開を最終的にひっくり返し、堂安自信もダメ押しとなる3点目をゲット。何とか白星発進することができた。これで彼自身、弾みがつくのではないかという期待も高まった。

 しかし、日本は得点力不足に悩み、堂安自身もゴールを重ねられないまま上のステージに進んでいく。準々決勝のベトナム戦ではVARチェックに助けられる形でPK弾を決めたものの、ラストの決勝ではカタール相手に不発で終わってしまった。日本もタイトルを逃し、残ったのは不完全燃焼感ばかり。本人も苦い経験を忘れたことはないはずだ。

「前回は本当に不甲斐ない大会でした。いいものを残せなかった。20歳くらいで調子に乗っていたし、今、会ったら、一発叩きたいくらいです」と、堂安は空回りした若き日の反省を胸に2度目のアジアカップを迎えるのだ。

 そこから彼のA代表キャリアが本格的に始まったが、正直言って、苦悩の方が多かったのではないか。それでもFIFAワールドカップカタール2022のドイツ、スペイン戦での劇的ゴールを経て、10番を与えられるまでになった。エースナンバーを手にした今、堂安は5年間の成長と経験値を大舞台で示すしかない。

 日本は1992年広島大会、2000年レバノン大会、2004年中国大会、2011年カタール大会と過去4度のアジア制覇を果たしているが、各大会で10番を背負ったのはラモス瑠偉、名波浩、中村俊輔、香川真司。絶対的エース級のパフォーマンスを披露した。名波と中村は大会MVPにも輝いている。堂安が偉大な先人たちと並ぶことができるか否か。そこは今大会の非常に重要なポイントと言っていい。

「これまで日本が優勝した時は、10番の選手が活躍しているというのを僕自身、強く感じている。自分もチームに一番貢献している選手になりたいと思っています。それに今回は10番をつけてからの一番大きな大会。みんなを黙らせるいい機会なので、結果にフォーカスしてやりたいです」と堂安は野心家らしい言い回しで活躍を誓っていた。

 ベトナム戦はベンチスタートと予想する。右サイドは伊東純也がスタートから出ることになるだろう。三笘薫という左の槍が負傷離脱している今、森保一監督としては右の槍は外せないと考えているに違いないからだ。

 こうした中、背番号10に求められるのは、攻撃陣に活力を与え、ギアを一気に上げる仕事。この役割を彼はカタールW杯でも元日のタイ戦でも確実にこなしており、全く問題ないだろう。

 実際、堂安は出てくるだけで攻撃チャンスを増やし、ゴールへの迫力も高め、ここ一番でゴールを奪ってくれる。それを短時間でこなすというのは、まさに職人芸だ。出場時間が少ないことに関しては本人も不本意だろうが、その分、凄まじい集中力が出る。そういうガツガツした姿勢こそ、最大の魅力だ。

 2023年に代表デビューした中村敬斗が5戦5発という驚異的な結果を残しているだけに、堂安も負けてはいられない。目に見える数字を積み上げてさえいれば、彼の10番に異議を唱える人は一切いなくなるだろう。そのくらい突き抜けた存在感をカタールの地で示してほしいものである。

 タイ戦でのトップ下、12日のトレーニングで練習していた右インサイドハーフを含め、今大会では堂安はさまざまなポジションでプレーする可能性もある。そういった意味でも彼の一挙手一投足は興味深い。

 アジアの難敵を面白いようにかく乱し、次々とゴールを奪っていく背番号10の雄姿を待ち望む人も少なくない。まずはベトナムで強烈なインパクトを残すことに集中してもらいたい。

取材・文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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