U23日本代表を牽引することが期待される細谷真大[写真]=Getty Images
4月に迫ったAFC U-23アジアカップカタール2024。2024年パリ五輪アジア最終予選を兼ねている同大会で4位以内に入らなければ、世界切符を手にすることができない(4位はアフリカ4位のギニアと大陸間プレーオフ)。8.5枠に広がった2026年のFIFAワールドカップ(W杯)北中米大会に比べるとはるかに狭き門なのは間違いない。
3月22日のU-23マリ代表、25日のU-23ウクライナ代表2連戦に向けたメンバー発表会見で、山本昌邦ナショナルチームダイレクターが「危機感しかない」と険しい表情を浮かべた通り、今回のU-23日本代表は非常に厳しい状況に立たされているのだ。
まず大会期間がインターナショナルマッチデーではないということで、クラブ側の派遣義務はない。欧州組の鈴木唯人(ブレンビー/デンマーク)、三戸舜介、斉藤光毅(ともにスパルタ・ロッテルダム/オランダ)らの参戦は難しそうで、ベストメンバーを組むのは不可能だろう。加えて言うと、パリ世代の国際経験不足という不安要素がある。彼らはコロナ禍真っ只中で20歳前後を迎え、2021年U-20W杯が中止に。もちろんアジア最終予選も戦っておらず、日の丸をつけて大舞台を経験していない選手が多いのだ。
それだけに、数少ないA代表経験者の細谷真大には大きな期待が寄せられる。AFCアジアカップカタール2023にも参戦し、FWの先輩・上田綺世からシュートや駆け引きなどのアドバイスを直々に受けたこの男には、攻撃陣の大黒柱として力強くチームをリードしてもらわなければならないのだ。
本人も「アジアカップで改めて感じたのはゴールに絡むこと。それがFWとしては全てだと思うので、そこを1から見つめ直したい。決めきるところだったり、ラストパスを要求するタイミング、動きの質はもっと上げられると思うので、今季はトライしたいですね。クロスからの得点も今後、増やしていきたいと考えてます。代表もクロスからの得点が多いですし、自分のパターンを広げていきたい。J1では去年の14ゴールをしっかり越えたいですし、チームを勝たせるゴールによりこだわっていきたい」とシーズン開幕前に力を込めていた。
そこから約1カ月が経過し、柏レイソル自体は第4節終了時点で2勝1分1敗の8位。直近の16日の名古屋グランパス戦を0-2で落としたものの、残留争いを強いられた昨季よりはいいスタートを切っている。
しかしながら、細谷自身はノーゴール。3月2日のヴィッセル神戸戦の木下康介の決勝弾の起点となる動きを見せるなど、得点に全く絡んでいないわけではないが、エースFWである以上、ゼロというのは気になるところ。同じU-23日本代表の藤尾翔太が2点、荒木遼太郎も3点と気を吐いている状況だけに、彼にはそろそろ本領発揮してほしいところだ。
「今季はまだゴールがないのが現状なので、まずはしっかりチームのために走りながら、足りてないゴールってところに自分自身、しっかり向き合っていきながら、結果にこだわっていきたいと思っています。そのためにも周囲との距離感を近くして攻撃に厚みをもたらすことが大事。クロスの入り方にもまだまだ課題があるので、改善していかないといけないですね」と細谷はやるべきことを明確に見据えている様子だ。
U-23日本代表に行けば、周りにいるメンバーも違うし、連携面も変わってくる。いい距離感を保つ、自分のタイミングでラストパスを要求する、クロスへの入りを工夫するといったことは環境が変わってもやらなければいけないこと。どうすれば一番点を取れるのかをチームメートに伝え、配球してもらえるように仕向けていくことが肝要。短い活動期間でベストなコンビネーションを構築するのはハードルが高いが、率先して取り組んでいくしかない。
1つ朗報があるとすれば、同じ柏の関根大輝のメンバー入りだろう。今季拓殖大学から柏入りした関根は昨年のアジア大会参戦組。決勝の韓国戦ではアジア最高峰レベルの厳しさを痛感。それを糧にして、最終メンバー滑り込みを狙っている。そのためにも、エース・細谷と生かし生かされる関係性を築くのが理想的。本人も意欲を燃やしているという。
「自分は常連組の中に入り込んでいく身。いろんな選手とコミュニケーションを取っていかないといけないし、自分がプレーしやすい環境を作っていかなきゃいけない。レイソルでは真大君の動きはつねに見てますし、練習の時からもいろんな要求を受けている。代表でもその関係を持ち込んで、自分のパスから真大君がゴールするような形ができれば理想的だと思います」と187センチの長身右SBは野心をむき出しにしていた。
彼らが揃ってマリ・ウクライナ2連戦で躍動し、パリ五輪切符獲得の原動力になってくれれば、日本サッカー界にとって間違いなく朗報だ。パリ世代が今のA代表を突きあげなければ、日本のレベルアップはない。それを強く自覚しながら、特に細谷にはアジアカップの経験値を同世代に還元しつつ、チームを勝たせるゴールという目に見える結果が強く求められる。今こそ絶対的エースストライカーの底力を見せつけるべき時だ。
取材・文=元川悦子
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By 元川悦子