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中盤が抱える課題を改善できるか…日本代表復帰の田中碧に託された“調整力”と“前向きなエネルギー”

2024.03.20

[写真]=三島大輔

 3月21日・26日の2026年北中米ワールドカップアジア2次予選・北朝鮮2連戦は、サッカーの枠組みを超えて国際的にも関心が高まっている。東京・国立競技場でのホーム初戦に向けて、19日には北朝鮮が来日し、緊張感が一気に高まってきた。

 日本代表も18日の初日練習に間に合わなかったキャプテンの遠藤航、2019年12月のEAFF E-1選手権以来の代表復帰となった小川航基らが19日に合流。鈴木彩艶を除く24人が参加した同日のトレーニングでは、冒頭30分を非公開にして北朝鮮対策を入念に徹底。まさに臨戦態勢に突入したと言っていい。まさかの8強止まりに終わったアジアカップではロングボールや空中戦の対応、失点の多さなど数多くの課題に直面した。そこを一つひとつキッチリと改善しなければ、北朝鮮に隙を突かれるのは間違いない。

 イランに逆転負けを喫した後、守田英正が苦悩を吐露した中盤のバランスや距離感に関しても、修正しなければいけない重要ポイントの一つではないか。縦に速いスタイルをリヴァプールで突き詰めている遠藤航、ボールを握りたい他のMF陣との間で間合いやテンポが微妙にズレていたのも事実だ。インドネシア戦とバーレーン戦で旗手怜央が出ていた時間帯はある程度うまくいっていたが、彼がいなくなった途端やはりギクシャク感が見て取れた。「それぞれが一番生きるポジションに立ってプレーするところが一番ですし、それぞれ要素が出ると思う。動きすぎて、逆にグチャグチャにならないようにやっていけばいいかな思います」とイラン戦に出ていた伊藤洋輝も語っていたが、そのすり合わせは早急に着手しなければいけないテーマに違いない。

 そんなチームにとって朗報なのが、田中碧の復帰だろう。今年元日のタイ戦で先制弾を叩き出した男は当然、アジアカップにも参戦すると思われたが、まさかの選外。1月の欧州冬の移籍市場でのステップアップを目指して、あえて代表辞退を選び、森保一監督もその意見を尊重したと言われている。その後、ドイツに戻った田中は1月21日のリーグ再開初戦、ヘルタ・ベルリン戦からコンスタントにスタメン出場。存在感を発揮しているが、1月中の移籍は叶わず、今季ラストまでデュッセルドルフ残留が決まった。本人としてはやはり苦い思いを抱いたはずだが、めげることなくチームの1部昇格を目指して奮闘しており、ここまでリーグ戦では6ゴールと目に見える結果を残している。

「結果が出ることはもちろん嬉しいですし、メンタル的にすごくポジティブになるのは、サッカー選手である以上、当然のことだと思いますけど、そこが全てではないですね。ここ最近、自分が出ているのはアンカーなので、あまり得点するチャンスはない。どちらかというと、後ろから出すパスでアシストできてることの方がポジティブです」

 田中碧はこう語っていたが、所属クラブでアンカー経験を積み重ねていることは代表にとって前向きな要素と見ていい。これまで森保ジャパンが4−1−4−1の布陣を採る際、アンカーに入るのは遠藤とほぼ決まっていたからだ。守田が入る形も何度か試してはいるものの、指揮官にしてみれば、守備の強度やデュエルの強さ、ボール奪取力という部分でどこか不安な部分があるのだろう。そういう状況だけに、田中碧がこの位置をしっかりこなせるようになれば、遠藤の負担も減り、違った中盤の関係性も構築できる。そうなれば、チームにとっての安心感も高まるはずだ。

 もちろん田中碧がインサイドハーフの一角に入ってプレーする従来の形も有効だ。カタールW杯アジア最終予選で見せた通り、守田は田中とインサイドハーフを形成した時は、お互いに思い切ってプレーでき、遠藤もより前向きな守備に専念できる。北朝鮮という非常にタフな相手との対戦を踏まえると、今回も中盤3枚で行く可能性は少なくない。むしろ、その方が中盤の安定感が増し、ボール支配率も高まるという見方もできそうだ。

「タフな戦いになるというのは想像できますし、アウェイで勝てていないということも聞いています。そういった意味で覚悟を持ってやらなきゃいけないのは確か。今のところ2連勝してますし、ここでしっかりともう2連勝できれば、2次予選突破を決められると思うので、そういった意味では特にホーム、まずは初戦、勝ち切ることが必要かなと思います」と田中碧自身も改めて気合を入れていた。

 アジアカップに参戦しなかった分、彼はより多くのものをチームにより還元する責務がある。「(アジアカップの)試合は見てましたけど、自分の口から何か言うことはない。ピッチに立っている人しか分からないことがあるから」と多くを語らなかったが、彼なりに日本代表に前向きなエネルギーを与えたいと思っているはず。それをピッチ上で具現化し、勝利へと導いてくれれば理想的。攻守両面でインパクトを残せるこの男の本領発揮を楽しみに待ちたい。

取材・文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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