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先制アシストも、悔やまれる決定機逸…10番・堂安律が語る北朝鮮戦の収穫と反省点

2024.03.22

決定機を外してしまった堂安 [写真]=金田慎平

「アジアカップが終わってから、もちろん冨安(健洋)とも意見出し合いましたけど、日本代表として戦っている以上、熱量のことを話し合っている時点で少しレベルの低い集団になっているんじゃないかなと思います。そのベースがないと、北朝鮮の相手には、本当に食われる展開になる。自分たちからアクションを取っていけるようなサッカーを仕掛けていきたいなと思います」

 3月21日のFIFAワールドカップ26アジア2次予選兼AFCアジアカップサウジアラビア2027予選・朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)代表戦(東京・国立)を翌日に控え、エースナンバー10を背負う男・堂安律はいきなり堂々と苦言を呈した。

 優勝候補筆頭と言われながら、イラク、イランの両中東勢に敗れ、強さを出し切れなかった屈辱的な大会から約2カ月。堂安自身も強い危機感を抱きながら、ドイツでピッチに立ち続けた。

 リーグ戦ではフランクフルトやレヴァークーゼンからゴールを奪い、ヨーロッパリーグでもタフな戦いを続ける中で、やはりサッカーは勝利への意欲や貪欲さ、闘争心が一番重要だと痛感したのだろう。ゆえに、あえて日本代表にカツを入れるべく、こういった発言をしたのだろう。

 10番の飽くなき向上心、長友佑都という大ベテランの合流などでピリッとした空気になった日本代表はこの日、鋭い出足を見せた。開始早々の2分には、前田大然のボール奪取をきっかけに田中碧がいきなり先制弾をゲット。これをアシストしたのが堂安だった。

「(南野)拓実君が決めるかなと思ったんですけど、こぼれてきて、相手のDF陣が下がっているのは分かっていたんで、碧がいることは見ていなかったけど、あそこに落とせば誰かがいるだろうって信じながら、蹴りました」と本人は冷静な判断に基づいたプレーだったことを明かす。

「前半やっていて調子がいいなという感じがあった」とも言うように、北朝鮮戦の彼は直近のレヴァークーゼン戦のような軽快な動きを披露。菅原由勢とのタテ関係から何度かチャンスも作っていた。だからこそ、南野からのラストパスに反応した前半終了間際の決定機は決めたかった。

「拓実君からの素晴らしいボールでファーストタッチも完全に止まってよかったですけど、シュートが甘かったのか、キーパーのファインセーブなのか、それとも動かしてもよかったのか…。あれを自分が決めていれば後半はもっと楽な展開になっていただけに、チームに迷惑をかけたと反省しています」と外した本人が誰よりも悔やんだビッグチャンスだったと言える。

 こういうシーンをモノにできないと、相手に巻き返されるのがサッカーだ。案の定、後半の北朝鮮はなりふり構わず攻め込んできた。アジアカップでイラクやイランが見せた蹴り込み作戦を展開され、日本は守勢を強いられる。前半3本のシュートを打っていた堂安もこうなると後ろに下げられ、仕事らしい仕事ができなくなってしまった。

 結局、ラスト15分強というところで谷口彰悟と交代。5バックにして守り倒すスタイルにシフトし、1-0で勝ち切るチームを外から見守ったが、「後半はタテパスを入れていこうという意識が強すぎて、相手の罠にはまってしまった」と反省。もっと試合巧者にならなければ、強い日本を取り戻すことはできないと彼自身、痛感したに違いない。

 しぶとく耐えて勝ち点3をつかみ、最終予選突破に前進したことは確かに収穫だ。ただ、堂安が思い描く理想像はもっと高い。少なくともホームで格下と対峙した場合には、もっと内容的にも圧倒し、ゴールを量産して勝てるようにならないといけない。

 日本代表を強く老獪な集団に引き上げるべく、背番号10はもっともっと強いリーダーシップを示すべきだ。彼自身がゴールという結果を残すのはもちろん、ピッチ上で周囲に指示を出し、戦い方をまとめるくらいのアクションを起こしてもいいはずだ。

 圧倒的な個の打開力でゴールに突き進める伊東純也というピース不在の右サイドに関しても、まだまだやれることはある。菅原に空いたスペースに侵入させ、自らは中に切り込むといった攻撃パターンは数多く見られたが、2人の関係性をより研ぎ澄ませ、お互いが生かし生かされる形を築いていくことが肝要だ。

「由勢も攻撃参加はアジアカップの時よりかなり増えたと思うし、対戦相手どうこう考えず自分たちのやるべきことはやれたかなと思います」と堂安も手ごたえを口にした。そうやって周囲と連動しながらプレーすることで、彼自身のゴール数も増えてくるはずだ。

 国際Aマッチ48試合出場8ゴールというのは、30得点以上を奪ってきた本田圭佑や香川真司ら歴代アタッカーたちと比べるとやはり物足りない。「点の取れる10番」へと変貌すべく、闘争心あふれる男にはギラギラ感を押し出し、高い領域へと上り詰めてもらいたい。

取材・文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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