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アジアカップ過去最低成績…W杯出場権逃したフットサル日本代表 日本の歩みを止めないために

2024.04.29

グループステージ敗退が決まりピッチに座り込む山田凱斗 [写真]=AFC

 17日に開幕したAFCフットサルアジアカップタイ2024は28日、イランの優勝で大会全日程を終えた。

 9月にウズベキスタンで開催予定のFIFAフットサルワールドカップの予選を兼ねた今大会。連覇を狙ったフットサル日本代表はグループCに属し、グループステージ3戦で1勝1分1敗の3位。日本フットサル史上初、アジアカップでのグループステージ敗退となり、ワールドカップ出場を逃した。

 オリベイラ・アルトゥール、清水和也の主力2選手が現地合宿中に負傷で離脱し、仁部屋和弘、安藤良平のベテラン勢を追加招集。さらにGKフィウーザ・ファビオも負傷による影響で登録を外れ、サポートメンバーとして帯同していたピレス・イゴールが登録された。

 ディフェンディングチャンピオンとして臨む大会は波乱含みの開幕を迎え、キルギス代表との初戦で3点を先行される。日本は石田健太郎をGKに置きパワープレーを開始し、38分に新井裕生、39分に堤優太が得点を挙げ1点差に迫るが、追撃及ばず2大会連続の黒星スタートとなった。
 
 2戦目の韓国代表との対戦では3セットをローテーションする戦い方へと変え、5-0で完封。スコアでは差をつけたものの、ジャッジや第2PKでの2得点にも助けられ、必ずしも攻撃面がフィットしたとは言い難い試合内容となった。

 1勝1敗で迎えたグループステージ最終戦。勝てば準々決勝進出というシンプルな結果を求められた日本は、タジキスタン代表と対戦した。12分、金澤空のアシストから石田健太郎が先制して第1ピリオドを折り返すが、26分に失点。14分と多くの時間が残されていたが、その後は1点が遠く、1戦目で機能したパワープレーでも追加点を奪うことができずに1-1のドローで試合終了。前回王者がグループステージで姿を消すこととなった。

木暮賢一郎

フットサル日本代表を指揮した木暮賢一郎監督 [写真]=AFC

 2016年のアジアカップでは、5位決定プレーオフでワールドカップ出場を逃した日本代表。奇しくもその試合中継の解説を担当していたのが、現在の日本代表を指揮する木暮賢一郎監督だった。当時「日本フットサル界にとって最も悲しい日」とコメントを残したが、12年ぶりに自力でのワールドカップ出場をつかみ取るチャンスのあった今大会はグループステージ敗退。「最も悲しい日」が更新されてしまった形だ。

 木暮監督は「結果に象徴されるように、誰もが分かっているちょっとした細かいところを自分たちのものにできなかった。何かひとつというよりは、ちょっとしたハマりが悪いというか、そこが我々にとって大きなダメージになってしまった」と試合を振り返る。

 2018年から日本代表のコーチを務め、フットサル日本女子代表監督やU-20フットサル日本代表監督を歴任。2021年11月にフル代表の監督に就任して以来、育成や指導者との交流、国外のサッカー協会の視察や強豪国とのマッチメイクなど、日本フットサル界の発展に大きく寄与した。その取り組みが高い評価を受けていたことは事実だが、木暮監督が常々「種まき」と表現してきたプロジェクトは、なぜ花開かなかったのだろうか。

 グループステージの最終戦後、北澤豪・前JFA(日本サッカー協会)フットサル委員長は「チームづくりの段階でのプロセスはいい状態できていたので、疑う余地があったわけではない。ただ、どの大会もそうだと思うが、初戦の入り方は重要だった。けが人やインターナショナルマッチデーの関係で選手を呼べない影響で、当初予定していたプランとは異なるものとなったが、言い訳にはできない」と大会を総括。しかし、プロジェクト進行中の今年3月に組織が再編されたJFAからはフットサル委員会がなくなり、今後は技術委員会の中のフットサル・ビーチサッカー部会が代表チームの編成や評価を行っていく。

 ワールドカップ出場権獲得が最低限クリアするべきミッションであったはずの日本。ここまで行ってきたプロセスは評価に値するものではあるが、強豪国の強烈な個に対応するためのクワトロをアジアカップのグループステージでも取り入れた是非や、グループステージ最終戦での先制後、守備を固める選択や選手起用もあったなかで追加点を狙ったことの是非は、適切にレビューされるのだろうか。

新井裕生

大会3得点を挙げた新井裕生 [写真]=AFC

 今回のメンバーのなかでは代表招集経験の少ない新井は、昨季のFリーグ得点王に輝いた実績も評価され、今回の選出を受けた。若手選手の出場機会を創出し、日本の強化を目指すプロジェクト「Fリーグ選抜」の一期生でもある新井は「Fリーグ選抜は日本代表で活躍することが使命でもあったし、ワールドカップで大きく貢献をするのがF選抜を作った意味でもあった。その経験を経て、いろいろな人の期待が懸かった試合でピッチに立って、こういう結果になってしまった。悔しいし、今すぐ前を向くのは難しいかもしれないが、少しでもFリーグやフットサル界の発展につながるような選手、人になりたい」とコメントを残した。

 本来、F選抜は2020年のワールドカップを視野に発足したプロジェクトだ。しかし、コロナ禍での延期を経て2021年に行われたリトアニアでのワールドカップにはF選抜出身選手は選出されず、今大会ではワールドカップ出場を逃している。当時、プロジェクトを推進した日本フットサル連盟や日本フットサルリーグからは、F選抜に対する総評は公表されていないままだ。

 2016年にワールドカップ出場を逃し、2020年からの数年はコロナ禍で国際的な活動の制限を受けた。そして、12年ぶりに自力でのワールドカップ出場を手にするはずだった今大会でグループステージ敗退。日本フットサルが歩みを止めず、失った時間を取り戻すために、JFAとしての総評や今後の指針の発表に注視したい。

取材・文=SHOKO

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