日本代表MF鎌田大地 [写真]=Getty Images
すでにFIFAワールドカップ26アジア最終予選進出を決めている日本代表にとって、6月の2次予選2試合はチャレンジの場。森保一監督は6日のミャンマー戦で、まずは攻撃的3バックの土台作りにフォーカスしつつ、出番の少なかった面々にチャンスを与えることにした。
前川黛也、橋岡大樹、小川航基らフレッシュな選手たちに交じって、FIFAワールドカップカタール2022で中心選手の一人だった鎌田大地も、昨年11月のミャンマー戦以来の代表スタメンを飾った。
「やっぱり代表のユニフォームを背負ってやるのは特別なこと。しっかり感謝しながらやっていけたら」と本人も神妙な面持ちで語っていたが、AFCアジアカップカタール2023含め、7カ月も代表を離れた間には、思うところがあったに違いない。
今シーズン加入したラツィオではマウリツィオ・サッリ監督の下、新天地適応がスムーズに進まなかった。本人としては、前々からの希望だった6番ポジションで勝負できることを前向きに捉えていたが、想像以上の壁に苦悩したはずだ。2024年3月にイゴール・トゥドール監督に代わってからは立場が激変。コンスタントな活躍が叶ったが、残留方針を固めていたものの、新契約の条件でクラブと選手側で合意に至らず、複雑な胸中のまま、代表に合流してきたのである。
「フランクフルトでやっている時とはリーグも違えば、サッカーも違う。選手としてはフランクフルトの時よりは良くなったと思っている。そういう部分を生かして、代表で求められていることをしっかり表現できたらいい」と新たな決意を胸に、6日のピッチに立った。
この日の鎌田に託されたのは、ともに中盤を形成する守田英正、旗手怜央と流動的にポジションを変えながら、攻守両面に絡んでいくこと。離日前の練習時はボランチに入っていたため、6月シリーズは引き気味の位置で勝負することになると思われたが、シャドーの一角からスタートすることになった。
「自分にとってはチームでよくやっているポジションではあるので、代表に来て、やることは多少変わってもプレーすることは難しくない。心地いいと感じます」と鎌田はやりやすさを覚えていた様子だ。
実際、攻撃時は守田がアンカーとして中盤の守備を広くカバーし、鎌田と旗手は前目の位置に出ていってチャンスを作っていた。特に鎌田は左寄りにプレー。左ウイングバックの中村敬斗が思い切って仕掛けられるようにカバーし、自らも敵のいないスペースを見出して侵入。非常にいい距離感で効果的な仕事を見せていた。
その流れから前半の2ゴールをお膳立てしてみせる。17分の中村の先制点のシーンは中央でボールを持った瞬間、左の大外から動き出していた背番号13を見逃さずにスルーパスを供給。決定的なシーンを演出した。34分の2点目も中村との連携が起点。ペナルティエリア内で横パスをもらった鎌田は鋭い反転から右足を一閃。これは惜しくも左ポストを叩いたが、堂安律がこぼれ球をプッシュした。
「前(のポジション)で出たら、得点を取ったりアシストしたりがこういう相手だと求められるし、そういうところばかりが目立つと思う。自分はゴールが取れなかったけど、ある程度、チャンスにも多く絡めていたし、自分としては悪くなかったと思います」と本人も納得の表情を浮かべる。62分にベンチへ下がったが、久しぶりの代表復帰戦で、イタリアで磨いてきた戦術眼やインテリジェンスを発揮したと言っていい。この男がいるとゲームが落ち着くと感じた人も多かったのではないか。
5-0の勝利に貢献した鎌田。ただ、相手がミャンマーであることを忘れてはいけない。それは彼自身も強調している点だ。
「相手が今のレベルだから分からないこともたくさんある。もう少し強い相手とやっていくとより明確になると思うけど、今はボールを持てる相手とやっているし、どれだけ前に人数を出して攻撃的にできるかが大事」
本人も語るように、相手が強くなっても同じことができるように精度を上げていきたいと考えている。最終予選になれば、自ずとそういう環境が訪れる。そこで鎌田が余裕を持ったパフォーマンスを示してくれれば、日本はアジアカップのような苦労はしないはず。そう仕向けてくれれば、指揮官にとっても有難い限りだ。
そのためにも、11日のシリア戦をしっかり消化し、来シーズンの身の振り方を早急に固めることが肝心。恩師であるオリヴァー・グラスナー監督が指揮を執るクリスタル・パレス行きが確実視されるが、ここでもまたドイツ、イタリアとは異なるサッカースタイルへの適応が求められる。ラツィオで苦労した経験を生せれば、次はもっと早く輝けるはず。そうあってほしい。
鎌田がトップ・オブ・トップに辿り着くことで、日本の2026年ワールドカップの成功に近づく。そのくらいのキーマンだと自覚を持ってプレーしてもらいたい。
取材・文=元川悦子
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By 元川悦子