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「五輪はキャリアにとって大事な大会」 パリ参戦意欲満々、斉藤光毅の現在地

2024.07.02

[写真]=元川悦子

 パリオリンピック2024に挑むU-23日本代表のメンバー発表がいよいよ3日に迫った。

 これまで大岩剛監督はオーバーエイジ枠を活用し、遠藤航といったA代表のトップ選手を呼んでメダルを狙う希望を示していたが、招集は難航。オーバーエイジなしで本番に挑む確率も高まっている。

 そういった状況だけに、国際経験値が高く、過去の年代別世界大会に参戦しているパリ世代の存在はより重要になる。

 その筆頭なのが斉藤光毅。2021年には、いち早くベルギー2部のロンメルへ完全移籍し、2022年からはオランダ1部のスパルタ・ロッテルダムへ2年間のレンタル移籍。すでに3シーズンのヨーロッパ経験がある。しかも彼は2017年U-17ワールドカップ、2019年U-20ワールドカップに参戦している。これだけの実績があるのはパリ世代では久保建英と彼だけと言ってもいいくらいの突出したキャリアを築いている。

「オリンピックというのは、周りからの見られ方が180度変わる可能性がある大きな大会。チームとしてメダルを取れれば、本当にすごいことになる。自分がステップアップする上でも重要だし、キャリアにとっても大事になる大会。そこで自分は一番分かりやすいドリブルの仕掛けを見せたいと思っています」

 激しい雨に見舞われた6月28日夜、古巣である横浜FCのサッカー教室に参加した斉藤は目をギラつかせていた。

 4月から行われたパリオリンピック予選を兼ねたAFC U-23アジアカップはクラブ事情で参戦が叶わなかったが、現在は去就未定の状態。7月1日にはマンチェスター・シティや所属元のロンメルを保有するシティ・フットボール・グループ(CFG)に戻って、移籍待ちの若手選手とともに調整をスタートさせるという。そんな時だけに、CFG側もパリオリンピックを「斉藤光毅を世界にお披露目する絶好のチャンス」と捉えているはずだ。7月下旬までに新天地が決まった場合、新たなクラブからオリンピック派遣にストップがかかる可能性がないとも言えないが、今のところは順当にメンバー入りすると考える。

 実際、同じヨーロッパでのオリンピックだった2012年のロンドン大会ではオーバーエイジ枠で参戦した吉田麻也が直後にサウサンプトン入りした例もある。飛躍を目論む20代前半の選手にしてみれば、オリンピックが大きなアピールの場であることは事実。このチャンスを逃す手はない。

 斉藤のドリブル技術や局面打開力というのは、6月12日のU-23アメリカ戦でも実証済み。開始早々から左サイドを切り裂き、PKを奪取し、藤尾翔太の先制点をお膳立てした。ピッチに立ったのは前半45分のみだったが、Player of the Matchにも輝くなど、違いをもたらせる選手として強烈なインパクトを残した。

「仕掛けという部分では、剥がせた部分が何回かあって、得点につながるPKも取れて、そこは手ごたえがあったんですけど、その後、ボールを失う場面、カウンターを受ける場面もあった。そういう課題はしっかりと修正していかないと世界では命取りになる。自分としても突き詰めてやっていきたいと思いました」と、本人も自戒を込めて語っていた。

 彼にとってドリブル突破というのは、幼少期から培ってきた強み。2つ上の兄と学校に通う道すがらや公園で勝負を繰り返し、負けじ魂を爆発させてきた。その中で試行錯誤を繰り返し、「抜ける間合い」を見出していったことで、世界まで駆け上がることができた。

 そのストロングをオリンピックの大舞台で見せつけ、ヨーロッパ5大リーグなど格上クラブへの移籍をつかみ取り、秋から始まるFIFAワールドカップ26アジア最終予選に挑む日本代表に名乗りを挙げる。そんなシナリオが現実になれば最高だろう。

「自分の夢はチャンピオンズリーグ決勝で点を取ること。伊藤洋輝選手がジュビロ(磐田)からシュトゥットガルトU-21へ行ってから、わずか3年でバイエルン行きを勝ち取ったように、サッカーの世界は活躍していれば何が起きるか分からない世界。自分も世界の強豪と言われるチームに行って活躍したいと思っていますし、そうなれるように頑張りたい」と語気を強めていた。

 むしろ、そうなっていかなければ、タレントがひしめく日本代表の左サイド争いに参戦するのは難しいと言えるかもしれない。今の森保ジャパンは三笘薫筆頭に、この1年で急成長した中村敬斗、韋駄天・前田大然がいて、さらにマルチ型の旗手怜央や相馬勇紀もいる最激戦区。そこにパリ世代の平河悠らも名乗りを挙げようとしているのだから、斉藤としてもここで一気にギアを上げる必要がある。

 もともと下馬評は低かったパリ世代だが、ここ1年で急成長し、主力級が不在でもアジア王者を勝ち取るところまで来た。この勢いに乗って、本大会でパラグアイ、マリ、イスラエルという強豪の集まるグループを突破できれば、東京オリンピックでは届かなかったメダルまで辿り着ける可能性もないとは言えない。斉藤がそのけん引役になれれば、本当に世界が180度変わることもあり得る。

 自身が育った横浜FCの少年たちからエネルギーをもらい、偉大な先輩・カズからも背中を押された斉藤が果たして何を見せてくれるのか。そこに期待しつつ、まずは3日の発表を待ちたい。

取材・文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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