初得点に期待がかかる堂安 [写真]=Getty Images
FIFAワールドカップ26アジア最終予選前半戦を終えて勝ち点13で首位を独走している日本代表。11月19日の中国代表戦から後半戦に突入するが、相手も前回対戦を踏まえて対策を講じてくると見られる。
「5戦目、6戦目になっていくにつれて緊張感が薄れていっているところもあると思うので、もう一回気を引き締めて。中国もアウェイですし、前回負けているので、かなり迫力を持ってくると思う。しっかり準備します」と17日から厦門入りしている堂安律は今一度、気合を入れていた。
福建省の厦門という町で日本代表が戦うのは初めてのことだが、高温多湿でスコールにも見舞われたジャカルタに比べるとかなり過ごしやすい。18日は北風が吹き、最高気温も21度と肌寒さを感じるほど。19日の試合当日も冷たい雨の予報で、ピッチ状態はやや心配されるものの、選手たちが動きやすい環境なのは間違いない。
試合会場の厦門白鷺体育場は6万人収容。インドネシア代表戦とほぼ同規模の大観衆の中での一戦になりそうだ。親日的なムードだったジャカルタとは異なり、今回は完全アウェイの状況下での戦いになると予想される。そういう時こそ、負けん気の強いエースナンバー10の爆発力に期待がかかるのだ。
最終予選突入後、ここまで全5試合で先発している堂安。6月シリーズからトライしている右ウイングバック(WB)にも確実に順応し、攻守両面でハードワークを披露。状況に応じてシャドウにも入り、日本の快進撃に貢献している。
その反面で、ゴールという結果が出ていないのは物足りないところ。ご存じの通り、今はアタッカー陣が揃って好調で、南野拓実が3点、鎌田大地が1点、久保建英が1点とシャドウ陣は揃って得点を挙げている。右WB要員を見ても伊東純也、菅原由勢がそれぞれ1点をマーク。堂安だけが空白状態を強いられているのである。
ここまで最終予選で出番がなかった菅原が前の試合で豪快な一撃を決めたことは、堂安にとって大きな刺激になったはず。
「由勢のゴールは素晴らしいことだと思いますし、彼にとってもチームにとっても大きなゴール。またスタメン争いも激しくなってくると思うので、切磋琢磨しながらやっていきたい」と競争を前向きに受け止めていた。
2022年カタールW杯ではドイツ・スペイン代表相手に値千金のゴールを奪うなど、ここ一番の勝負強さを持つ堂安だが、2024年は1月のAFCアジアカップ・ラウンド16・バーレーン代表戦、6月の2次予選・ミャンマー代表戦とシリア代表戦の3点しか挙げていないのは、やはり数字的には乏しい印象は拭えない。
2018年ロシアW杯直後に同じタイミングで代表定着した南野がすでに24ゴールと中村俊輔に並ぶ歴代10位の得点数に到達。やはり堂安にももっともっとゴール数を引き上げてもらいたいところ。もちろんWBは低い位置に下がって守備をする負担も大きくなる分、ゴール前でプレーする南野のようにはいかないのだろうが、「そろそろ堂安にも最終予選初得点を奪ってほしい」という期待が高まるのも当然と言っていい。
そのためにも、バイタルエリアに侵入する回数を増やし、フィニッシュの迫力を高める必要がある。最終予選突入後の日本は慎重な入りを強いられることが多く、スタメンの堂安はどうしても守備のリスク管理を考えて低い位置にとどまることが多くなりがちだ。それでも工夫やアイディア次第で右サイドの攻めを活性化することはできるだろう。
さしあたって中国戦だが、ここまでの彼らは4バックがベース。日本対策として5バックにシフトする可能性は低いため、10月のオーストラリア代表戦や直近のインドネシア戦のようにベタ引きの相手を攻略する苦労はそこまで感じることなく戦えそうだ。
おそらく今回は右シャドウに久保建英が出るだろうから、堂安は久保とポジションを入れ替えながらよりゴールに近い位置に入り込める。中央にも複数枚のDFが陣取っているだろうが、それを個人技や連携でかいくぐってフィニッシュに持ち込めば、待望の1点を手にできる確率はグッと上がるのだ。
所属のフライブルクでは同じ右WBに入っていても、一気呵成にゴール前に走り込んで得点する形が生まれている。それを代表でも実践しようと思うなら、やはり左サイドで作って右で仕留める形も構築していくべき。守田英正や町田浩樹、三笘薫、南野らが近い距離でプレーできれば、右の堂安の決定機は確実に多くなる。チームとして10番に点を取らせる形を作ることにも意識的に取り組んでほしい。
前回最終予選では一時、代表メンバー落選も味わった堂安。あれから3年が経過し、今の彼は大黒柱の1人にはなったと見ていい。ただ「日本を勝たせられる選手」になるには、まだまだやるべきことが少なくない。中国戦から始まる最終予選後半戦で“持ってる男”本領発揮を楽しみに待ちたいものである。
取材・文=元川悦子
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By 元川悦子