日本代表の中盤で存在感を示しているMF鎌田大地(クリスタル・パレス/イングランド)
FIFAワールドカップ26アジア最終予選(3次予選)も後半戦に突入。その一発目が11月19日のアウェイ・中国戦(厦門)だった。
9月のホーム初戦で7-0と圧勝している相手だが、中国は3連敗後の2連勝で復調気配。しかも真っ赤な大サポーター、国歌斉唱時のブーイング、ピッチ幅の狭さ、そして試合中の観客乱入など予想外の要素も重なり、日本にとっては簡単な試合ではなかった。
案の定、序盤は相手の激しい当たりや球際に苦しみ、シュートチャンスを作れない。久保建英のスルーパスに中村敬斗が反応してシュートを放った25分の決定機まで、チャンスらしいチャンスはほとんどなかった。
しかしそういう時、今の日本にはリスタートという武器がある。前回の中国戦でも久保の左CKから遠藤航がヘッドで先制弾を決め、大勝の火付け役となったが、今回も39分に同じ久保の左CKから小川航基が頭で合わせて1点をもぎ取ることに成功。さらに前半アディショナルタイムにも伊東純也の右CKを町田浩樹がフリックし、ファーに飛び込んだ板倉滉が豪快なヘッドで加点。中国はリスタートの恐ろしさを思い知ったことだろう。
それでも後半頭に相手は一矢報いることに成功。1点差に詰め寄ったが、日本は伊東のクロスを再び小川が沈め、3-1と突き放す。その後は相手の守備強度も落ち、ボール保持もスムーズになった。
森保一監督はこのタイミングで鎌田大地と三笘薫を投入。そこで異彩を放ったのが背番号15。シャドーに位置しながら、ボランチをサポートしてタメを作れる鎌田がいることで、遠藤航・田中碧のボランチコンビもより落ち着きを見せるようになり、連動性のある攻めも見られるようになった。
鎌田自身は「3−1である程度、ボールも握れていて、相手も疲れている状態だったので、守備の部分とボールを落ち着かせることを監督からは言われていました。相手も前半みたいにプレッシャーに来れていなかったので、自分たちもボールを持てたんじゃないかと思います」と謙遜気味に振り返ったが、鎌田がいるかいないかでこうもゲームの流れが変わるのかと痛感させられた。
とりわけ、インパクトが強かったのが、81分の崩し。ピッチ中央で板倉→遠藤→板倉→鎌田→遠藤→田中碧→鎌田→田中碧と流れるようなパスがつながり、最終的に田中碧がシュートを放ったシーン。高度な連携連動の中心には鎌田がいた。田中碧がストロングであるフィニッシュに持ち込むチャンスがここまで皆無に近かっただけに、これは紛れもなく鎌田効果だと言える。
終盤に絶妙なスルーパスで古橋亨梧の決定機をお膳立てしたシーンも彼の真骨頂。結局はオフサイドとなったが、「ボールを持ってる時に亨梧くんが何回も動き出しているのは皆んなが分かっているし、どこかのタインミングで1回は使わないといけないなと思っていたので。あのタイミングで1回使えた。ああいうのを続けていくことが大事」と、本人も納得の表情を浮かべていたが、変幻自在のボールさばきには改めて恐れ入るという印象もあった。
結局、11月シリーズの鎌田は104分間の出場で、自身のゴールこそなかったが、2点に関与した。今回の最終予選は先発3回・途中出場2回で完全にシャドーの軸のひとりと位置付けられている。途中から使われなくなり、終盤はメンバー外となった3年前の2022年カタールW杯最終予選とは全く違った存在感を示している。カタールで「次は自分が代表を引っ張る」と決意を口にした通りの責任感を、確実にプレーで表現しているのだ。
改めて考えてみても、今年1〜2月のアジアカップで日本が苦しんだのは、鎌田不在のマイナス影響が大きかった。当時の鎌田はラツィオで出番を失っていて、森保監督もコンディション面やチーム内の立場を考え、メンバー外という選択を決断したが、その判断は裏目に出たと言わざるを得ない。相手がロングボールを蹴り込んできて、中盤のバランスが崩れるたび「鎌田がいればもっとゲームを落ち着かせてくれるのに…」と感じた人はチーム内外で少なくなかったはずだ。
しかし鎌田は「最終予選がここまでうまくいってるのはチームの皆んなの努力のおかげだと思うし、これが当たり前じゃないことを自分たちは理解しないといけない。まだW杯出場も決まっていないし、油断せずに、次の代表までは時間が空くので、また自チームで頑張らないといけない。一人ひとりがレベルアップできるようにやっていかなきゃいけない」と語り、さらなる個の成長に思いを馳せた。
実際、新天地のクリスタル・パレスではチームの不振もあって厳しい立場に立たされている。11月9日のフルアム戦の退場によって、ここから3試合は出場停止。その間に恩師であるオリヴァー・グラスナー監督が解任させられる可能性もゼロとは言い切れない。
何か問題が起きると「新戦力の鎌田が期待外れ」といった現地報道が流れ、スケープゴートにされがちな面もある。イタリア時代から同じような経験をしている分、慣れっこになっているところはあるだろうが、巻き返しを図らなければいけないのは事実だ。
「期待されて入ってきたことは理解してるし、そういう扱いを受けるレベルの日本人選手がいっぱい出てこないとダメだなと。もちろん難しい時期もありますけど、プレーが良ければすぐそんなのは変わる。自分自身もいい方向に変えられるというのは今までも証明してきているし、自信もあるので、やっていくだけだなと思います」
逆風も糧にもう一皮剥けられるのか。ここから鎌田大地の真価が問われる。
取材・文=元川悦子
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By 元川悦子