前日会見での遠藤航 [写真]=須田暉輝
FIFAワールドカップ26出場権の獲得が懸かるバーレーン戦が20日、埼玉スタジアム2002で行われる。
日本代表は1998年のフランス大会から7回連続で大舞台に立っているが、最終予選で王手をかけながらストレートに決められなかったのは、FIFAワールドカップ2014ブラジルの時だけ。今回のチームは『W杯優勝』という大目標を掲げているだけに、足踏みは許されない。アジアでは”横綱相撲”を見せて、堂々と切符をつかみ取る必要がある。
そのためにも、キャプテンを務める遠藤航には強いリーダーシップが求められる。今回の最終予選は極めて順調に推移しているため、彼が進んでアクションを起さなければいけない事態は起きていないが、本拠地に満員の大観衆が集まる大一番は特別なプレッシャーがかかるだろう。
ボランチでコンビを組むと予想される守田英正も「普段と基本的に変わらないでいいと思うんですけど、ほんの少しだけ熱意とか集中力や闘志を背負ってやることが大事だし、いいプレーにつながると思います」と話していたが、そういった雰囲気作りをしていくことが、統率者に託されたタスクだ。
振り返ってみれば、FIFAワールドカップロシア2018出場を決めた2017年8月のサウジアラビア戦は主将だった長谷部誠(現日本代表コーチ)が右ひざ手術から復帰したばかりで本調子でない中、強行出場。チーム全体を奮い立たせ、浅野拓磨と井手口陽介の2ゴールが生まれる機運を作った。
前回大会に当たっても、予選序盤の出遅れで崖っぷちに立たされた時、主将の吉田麻也は「もしカタールに行けなかったら責任を取る」とまで発言。凄まじい危機感と責任感を抱いて最終ラインをけん引。2022年3月のオーストラリア戦までに立て直し、三笘薫の2発による出場決定にこぎつけた。
そういった歴代リーダーの姿を目に焼き付けてきた遠藤は、自分なりのやり方でチームをまとめていくはず。本気でワールドカップ制覇を目指す集団の長に相応しい立ち振る舞いを見せなければならない。
「個人的にはそこまで大きなプレッシャーをすごく感じているわけではなくて、前回最終予選を戦った時と同様の思いというか、とにかくワールドカップ出場をまずは決めたいという思いでキャプテンとして挑んでいます。最終予選の難しさもわかっている分、経験がある上で挑めているのは大きなアドバンテージ。目の前の一戦で全力を尽くして勝利をつかみ取りたい」と遠藤自身は前日会見で自然体を強調。彼らしいアプローチで強い日本を示していく構えだという。
個人的なところに目を向けると、彼は目下、“リヴァプールのクローザー”。存在感は残しているものの、プレータイムは昨シーズンに比べると激減しているのも事実だ。
ユルゲン・クロップ前監督の信頼を勝ち取った昨シーズンはプレミアリーグで29試合に出場(うち先発20試合)。1722分間ピッチに立ったが、アルネ・スロット監督体制の今シーズンは先発ゼロで、135分しか出場していない。その分、国内カップ戦の出番は増えているものの、全体的な活躍度は下がっていると言わざるを得ない。
チーム自体もチャンピオンズリーグをはじめとしたカップ戦はすべて敗退。4冠を期待されたビッグクラブに残されたのはリーグ戦だけとなった。となれば、ここから今シーズン終盤の遠藤の出番が増えるとは考えにくい。ここからの彼はより厳しい状況に立たされそうだ。
「試合数とかはこの歳になればかなり経験をしているので、試合勘は特に気にする必要はないと思う。ある程度、自分のパフォーマンスと言うのは、この最終予選でも出せると思っているので。大事なのは、普段の練習からしっかりいい準備をして、チャンスをもらえたら、結果を残すために最大限やるだけだと思います」
遠藤は今シーズン序盤の2024年9月にこう語っていたが、半年間、同じ状況が続くのはやはり厳しい部分もあるはず。それでも、本人が言うようにいい準備を続け、高い基準をピッチ上で示さなければ、周りも納得しないだろう。今回のバーレーン戦で「やはり遠藤がいないと日本代表は成り立たない」というくらいの堂々たるプレーを示してくれれば、森保一監督を筆頭に周囲も安堵するに違いない。
最終予選を突破した場合、本大会までの準備期間は1年3か月。遠藤の場合はリヴァプールに残るのか、それとも新天地に赴くのかという決断を迫られるだろう。後者を選択するにしても、代表で光り輝いていていなければ、30代ボランチに色よいオファーは届かない。だからこそ、代表活動の試合をこれまで以上に大切にしていかないといけない。
もちろん“フォア・ザ・チーム精神”が最優先だし、キャプテンとしての献身性や犠牲心を前面に押し出すことも重要。だが、彼はデュエルやボール奪取など守備面以外をもっと押し出していい。アジア相手の試合ならそういう機会も少なくない。最終予選残り4試合の遠藤にはゴールに直結する仕事も大いに期待したい。
さしあたってバーレーン戦では、昨年9月の最終予選初戦となった中国戦での一発目を思い出して、キャプテンにはアグレッシブにゴールを狙ってほしい。
取材・文=元川悦子
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By 元川悦子