8月下旬に開催された新体制発表会見。登壇した選手はすべて外国籍選手となった[写真]=フォトレイド
9月7日に大阪府のJ-GREEN堺で行われたWEリーグクラシエカップ、ちふれASエルフェン埼玉(EL埼玉)戦。リーグ屈指の強豪・INAC神戸レオネッサの先発メンバーは昨シーズンからガラリと変わっていた。女子日本代表「なでしこジャパン」の中軸を担うFW田中美南(ユタ・ロイヤルズFC)とGK山下杏也加(マンチェスター・シティ)に加え、パリ五輪でブレイクしたMF北川ひかる(BKヘッケン)、そして若手のDF竹重杏歌理(テルスターVrouwen)とMF天野紗(ハンマルビーIF)の主力級5人が一気に海を渡ったからだ。
代わって加入したのは、FWカルロタ スアレス、MFパオラ ソルデヴィラ、DFカルラ モレラのスペイン人選手3人と、昨シーズンはジェフユナイテッド市原・千葉レディースでプレーしたジャマイカ代表DFのヴィアン サンプソン、韓国人のMFイ スビンの海外勢5選手と、U-20代表GKの大熊茜。EL埼玉戦では、U-20女子ワールドカップでメンバー入りして不在だった大熊を除く5人が先発、あるいは途中出場でピッチに立った。試合結果は0-1。得点機が乏しく、連係ミスも目立って、お世辞にもほめられた試合内容ではなかった。「ゴールチャンスをつくれなかったのは課題」とジョルディ フェロン監督。2シーズンぶりに主将に就任したDF三宅史織も「自分たちが良くなかった」と唇をかんだ。
それでも、従来のWEリーグにはなかった国際基準を披露してくれるのではないかとワクワクさせるチームである。長身でボールが収まるスアレス、攻守にハードワークするソルデヴィラ、俊足のモレラ、屈強なサンプソンに足元が巧みなスビン。「5人5様」の特色がかみ合えば、とんでもないスケールのプレーが生み出される可能性がある。
それを引き出すのは、三宅をはじめ、守屋都弥や成宮唯、土光真代ら、実績のある日本人選手の務めだ。成宮は「特徴のある選手が入ってきたので、使う側の選手になれれば……」と強調。守屋は「昨シーズンまでとは違った点の取り方ができる」と力を込める。
WEリーグ初年度に優勝しながら、2季目、3季目は2位に終わり、三菱重工浦和レッズレディースの後塵を拝してきた。シーズン終盤に勝ちきれない試合が続いたのが主な理由。対戦相手に対策を練られてなかなか得点を奪えず、自慢の堅守が耐えられなくなるケースが目立った。
しかし、今シーズンは──。三宅は「未知の可能性を秘めているチーム」と形容する。未知とは、計り知れない潜在能力を秘めているということ。グローバル化した新たな布陣が機能して攻撃的なサッカーを披露できれば、今一つ盛り上がりに欠けるWEリーグの活性化にもつながるのではないか。そんな甘い期待を抱かせるチームでもある。スタジアムで、未知と遭遇してほしい。
取材・文=北川信行