[写真]=Jリーグ
10月26日、令和最初のJリーグYBCルヴァンカップ決勝戦がキックオフを迎える。ファイナルの舞台へ駒を進めたのは、北海道コンサドーレ札幌と川崎フロンターレ。クラブ史上初のタイトル獲得か、J1王者が勝負強さを見せつけるのか……。大注目の一戦を前に両チームのキーマンたちをおさらいしよう。
文=土屋雅史
北海道コンサドーレ札幌
GK 菅野孝憲
生年月日:1984年5月3日
身長/体重:179cm/75kg
出生地:埼玉県
ポジション:GK
背番号:1
利き足:右
経歴:ヴェルディJrユース → 東京ヴェルディ1969ユース → 横浜FC → 柏レイソル → 京都サンガF.C.
今シーズンのルヴァンカップは全12試合にスタメンフル出場を果たし、ファイナル進出へ大きく貢献してきた中で、直近のセレッソ大阪と対戦したJ1第29節では加入2年目にしてとうとうリーグ戦デビュー。試合には敗れたものの、個人としては2度のファインセーブを含めて抜群の安定感を披露した。至近距離からのシュート対応と、混戦へ躊躇なく飛び込めるアグレッシブさは35歳の今でも国内有数の能力を誇る。日頃からベンチスタートでも、仲間がゴールを決めた際には誰よりも速く歓喜の輪へとダッシュして、笑顔でスコアラーを称える姿にプロサッカー選手としての矜持が滲む。おそらく今回の決戦も、先発であってもベンチであっても、札幌は常にチームを最優先に考える金髪の守護神に守られているはずだ。なお、柏レイソル在籍時に経験した2012年度の天皇杯と2013年のヤマザキナビスコカップ(当時)のファイナルではどちらも勝利を収めており、その“勝ち運”も今回の大舞台で改めて発揮したい。
MF 深井一希
生年月日:1995年3月11日
身長/体重:177cm/72kg
出生地:北海道
ポジション:MF
背番号:8
利き足:右
経歴:コンサドーレ札幌U-12 → コンサドーレ札幌U-15 → コンサドーレ札幌U-18
昨シーズンに続き、今シーズンもJ1で十分に通用するパフォーマンスを続けているが、そのポテンシャルを考えれば今のプレー水準は当然のレベルだ。度重なる膝の負傷に悩まされてきたキャリアの不運を乗り越えて、ようやく日本屈指のボランチへの道を再び歩み出した感がある。最大のストロングでもある相手ボールを奪い切れる守備力に加え、左右にきっちり散らせる展開力も兼備。ミシャスタイルのボランチとしては、青木拓矢(浦和レッズ)と青山敏弘(サンフレッチェ広島)のハイブリッド版と言っても過言ではないだろう。念願の初タイトル獲得を懸けたファイナルに、U-12から札幌に在籍してきた深井が立つことは、クラブにとっても小さくない意味があることは言うまでもない。個人としてもU-18在籍時の高円宮杯U-18サッカーリーグ2011 チャンピオンシップでは、途中出場したもののサンフレッチェ広島ユースに敗れて日本一を逃しており、その時と同じ埼玉スタジアム2002でのリベンジも今回の一戦には秘められている。
FW 鈴木武蔵
生年月日:1994年2月11日
身長/体重:185cm/74kg
出生地:ジャマイカ
ポジション:FW
背番号:9
利き足:右
経歴:韮川西小サッカースポーツ少年団 → FCおおたJrユース → 桐生第一高 → アルビレックス新潟 → 水戸ホーリーホック → アルビレックス新潟 → 松本山雅 → アルビレックス新潟 → V・ファーレン長崎
大舞台になればなるほど、その実力はのびやかに解き放たれる。思い出すのは桐生第一高校3年時。選手権の群馬県予選でなかなかゴールに恵まれず、特にファイナルでは幾度となく決定機を逃し続け、場内のため息を誘っていたにもかかわらず、同校にとって初出場となった全国大会の初戦でいきなりハットトリックという印象的な活躍を見せ付け、鈴木武蔵の名を日本中に知らしめた。また、リオデジャネイロ・オリンピックでも久保裕也の代表辞退を受けて追加招集されると、ナイジェリア戦でゴールを記録。大きなステージで何かを引き寄せる“星”を持っていることは、過去のキャリアからも証明されている。札幌には今シーズンから加入すると、ミシャスタイルへ早々にフィットし、念願のA代表も経験。得点ランクトップの7ゴールを挙げているルヴァンカップでは、準決勝第2戦のガンバ大阪戦で決勝点を叩き出し、チームを初のファイナルへ導いた。選手権の準々決勝で敗れ、高校サッカーに別れを告げた思い出のスタジアムで、赤黒の9番を纏ったストライカーは北の大地へ初タイトルをもたらせられるか。
川崎フロンターレ
DF 登里享平
生年月日:1990年11月13日
身長/体重:168cm/68kg
出生地:大阪府
ポジション:DF
背番号:2
利き足:左
経歴:EXE’90FC → 香川西高
単騎でもコンビネーションでも仕掛けられるスタイルを武器に、左サイドバック、左サイドハーフに加えて、右サイドバックまで器用にこなすレフティの存在感は、タレントの居並ぶ川崎にとっても唯一無二のもの。とりわけ風間八宏監督体制下の2016年J1ファーストステージ第9節・ガンバ大阪戦で初めて起用された右サイドバックは、本人こそ「普段使い慣れていない筋肉が痛くなりました」と笑っていたものの、その後のJリーグにおけるレフティが右サイドバックを務めるパターンの先駆けであったことは特記しておきたい。クラブ在籍年数は既に11年目を数え、中村憲剛に次ぐ古参ながらチーム屈指のムードメーカー。昨年、一昨年とリーグ優勝のセレモニー時には目立つ位置をきっちり確保し、秀逸なパフォーマンスを見せてくれた経緯を考えると、今回も悲願のカップタイトルを獲得した際には、表彰式でもこの男から目が離せない。ちなみに普段の彼はしっかり挨拶ができ、しっかり会話ができる“超”が付くほどの好青年。メリハリのある人間性こそが、サポーターからもチームメイトからも愛されるゆえんだろう。
MF 田中碧
生年月日:1998年9月10日
身長/体重:177cm/69kg
出生地:神奈川県
ポジション:MF
背番号:25
利き足:右
経歴:さぎぬまSC → 川崎フロンターレU-12 → 川崎フロンターレU-15 → 川崎フロンターレU-18
小学校3年生から川崎のエンブレムと育ってきた21歳が、いよいよ本格的なブレイクスルーの時を迎えたのがこの2019年。チームで最も層の厚いボランチのレギュラー争いで、強烈なライバルたちを差し置いてスタメンの座を勝ち獲ると、昇格から2年間のトレーニングで積み上げていった攻守に自ら関わっていくアグレッシブな姿勢で、一気にサポーターのハートも鷲掴みに。直近のJ1第29節・ガンバ大阪戦では、途中出場ながら中盤をすぐさま個で制圧しつつ、終盤は右サイドバックまでこなすなど、圧倒的な存在感を放っていた。また、昨シーズンはリーグデビュー戦でプロ初ゴールを叩き出せば、今年6月のトゥーロン国際大会でベストイレブンにも選出。さらに今月のブラジル遠征でも、敵地でU-22ブラジル代表相手に鮮烈なミドルを2発ぶち込み、歴史的な勝利を手繰り寄せており、大一番での“持っている”感も見逃せない所。過去にチームが4度挑んだルヴァンカップのファイナルでは1つの得点もなかっただけに、生え抜きのヤングスターが“初ゴール”と“初優勝”の二兎を力強く追い求める。
MF 中村憲剛
生年月日:1980年10月31日
身長/体重:175cm/66kg
出生地:東京都
ポジション:MF
背番号:14
利き足:右
経歴:小金井第二中 → 久留米高 → 中央大
今さらプレースタイル云々を語るのは失礼に当たるだろう。「中村憲剛はルヴァンカップを掲げられるのか」。注目ポイントはこの1点のみに絞られる。誤解を恐れずに言えば、2000年の決勝進出は望外だったと表現できるかもしれない。川崎が真剣に頂点を狙う体制が整ったのは、やはり“中村憲剛以後”。ただ、届かない。2007年は19歳だった安田理大に鮮烈に撃ち抜かれ、2009年は18歳だった米本拓司の才気に沈む。セレッソ大阪と互いに初タイトルを懸けた2017年も1分と92分で散る。いつも表彰台を見上げてきた。箕輪義信、寺田周平、佐原秀樹の川崎山脈。前線で躍動するジュニーニョや黒津勝、チョン・テセ、小林悠。最後方からチームを支える川島永嗣や谷口彰悟。サイドを駆け上がる森勇介に車屋紳太郎。パートナーを組んできた谷口博之と大島僚太。そして何より、盟友の伊藤宏樹。共に苦杯を嘗めた顔ぶれは、そのままクラブの歴史に重なる。3度のすべてでピッチに立ち、3度のすべてで阻まれた戴冠へと昇る道へ、38歳最後の公式戦を終えた14番は歩みを進めることができるのか。その答えは土曜日、明らかになる。
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※決勝戦の模様はフジテレビ系列にで全国生中継!!