GK新井章太が2本のPKストップでヒーローとなった [写真]=Getty Images
120分を終えて3−3のタイスコア、さらにPK戦はサドンデスまで突入。2019年のルヴァンカップ決勝はJリーグ史に残る“名勝負”となった。その名勝負において、栄えある最優秀選手賞に輝いたのが川崎フロンターレの守護神・新井章太だ。北海道コンサドーレ札幌の5人目・石川直樹、そして6人目・進藤亮佑のPKを連続でストップし、川崎にルヴァンカップのタイトルもたらした。
緊迫した展開が続くPK戦、川崎の4人目・車屋紳太郎のキックは惜しくもクロスバーを叩いてしまう。「どこかで誰かは外すので、それがたまたまうちだっただけ。紳太郎が落ち込んでいたので、『大丈夫だ。止めるから』と声をかけました」。“決められたら負け”という絶体絶命の状況の中でも、「プレッシャーは相手選手の方が強かったと思うし、それをうまく利用した」と新井。2本連続のPKセーブで川崎を救い、川崎を優勝へと導いた。
進藤のPKを止めて優勝が決まると、新井は数秒間佇んだ後にウイニングボールを抱えながら猛然とダッシュ。ハーフウェイライン目掛けて見事な“トライ”を決めてみせた。「絶対にみんなこっちに来るのは分かったので、とりあえず全員かわして目立とうかなと(笑)ボール持って走ってたらラグビーみたいな感じがして……。最近よく(ラグビーを)見ているので、あの映像が頭に浮かんでやりました」と明かした。
2013年に東京ヴェルディから加入した新井は川崎在籍7年目。西部洋平やチョン・ソンリョンらの存在で、長らくセカンドGKとしてベンチを温めてきた。今季もなかなか出場機会が巡ってこない中、9月14日に行われたJ1第26節のジュビロ磐田戦で完封勝利に貢献する。すると今日まで正GKの座を譲ることなく、ルヴァンカップ決勝という大一番で見事な活躍を披露した。試合後のミックスゾーンでは大勢の記者に囲まれる中、大事なウイニングボールを自身の隣に置きこう語った。
「出れない時期もありましたけど、毎日毎日サッカーのことを考えて『自分が上に行くんだ』という気持ちを常に持っていれば、こうやって神様は見てくれるんだなと思いました。これは他の選手にも伝えていきたいと思います」
取材・文=三島大輔
By 三島大輔
サッカーキング編集部