ピッチレベルで激しさを感じることができる市船vs柏戦 [写真]=川端暁彦
■そもそも「プレミアリーグ」とは……?
高円宮杯U-18サッカーリーグプレミアリーグ。回文のような正式名称を持つこの大会は今年で創設から5年目を迎える。日本全国を東西二つのブロックに分割し、各10チームずつがエントリー。ホーム&アウェイ方式(全18試合)で覇を競いつつ、その東西王者が最終的にチャンピオンシップを争うという形式で、4月から12月まで開催されている。
東西の下位2チームは自動降格となっており、全国を9地域(北海道、関東、九州など)に分けて行われているプリンスリーグからの昇格チームと入れ替えとなる。優勝争いと残留争い、そして年間を通じたホーム&アウェイ方式という意味でも「高校生がJリーグに行ったあとの予行演習」(流経大柏高校・本田裕一郎監督)という意味付けを隠し持った大会とも言えるだろう。また普段のカップ戦が別個に行われている高校サッカーのチームと、Jリーグの育成組織や地域のクラブといったクラブチームがフラットな立場で激突できる舞台という意義も大きい。
■しかし、とてもシビアです
とはいえ、10チーム中2チームが落ちるリーグ戦というのは冷静に考えると、相当にシビアであり、「生き残っていくのが、まず本当に難しいリーグ」(流経・本田監督)である。EASTに関しては大会創設時の「オリジナル10」のうち、連続残留を続けているのは青森山田、流経大柏、そして清水エスパルスユースの3チームのみ。この3チームとも優勝の栄誉を争った経験と同時に過酷な残留争いにさらされた経験を持っているのは象徴的だ。
昨季の優勝チームである鹿島ユースとて例外ではない。熊谷浩二監督が「謙遜でも何でもなく、目標は残留」と掲げるが、これも「社交辞令ではなく本当に気を抜ける相手が一つもない」(FC東京U-18・佐藤一樹監督)大会ゆえだろう。だからこそ、良い経験を積める場になるということでもあるが、秋口に入ると暗い表情が続く関係者も少なくない……。
■埼スタより「アウェイ」?
「去年の青森では控え部員の応援に圧倒されてしまった」と肩を落としたのは、昨季から参入してきたFC東京U-18の選手だった。ホーム&アウェイ方式で行われるこの大会では、長駆遠征しての公式戦という従来は観られなかった「経験」がある。それぞれの練習場で行われることが多いだけに、いわば自分の「庭」での戦い。応援の力もあれば、気候やグラウンド状態などに関するホーム・アドバンテージ(アウェイ・ディスアドバンテージ!?)もある。
各チームから恐れられているのはEASTで言えば、流経大柏のホーム戦。歴戦の清水サポーターから「埼スタのアウェイより圧力があった」という名言を引き出したこともある一体感のある後押しは圧巻だ。スタジアムではない、狭いグラウンドだからこそ引き出される迫力もあるだろう。またWESTで定評があるのは東福岡の「学園祭アウェイ」。年度や巡り合わせにもよるのだが、学校行事の一環に公式戦が組み込まれた場合の盛り上がりは別格。普段は男子校の東福岡に「女子」がやって来る機会でもあり、参戦したサポーターがそろって「あれほどのアウェイを感じたことはない」と口にする機会である。
そのほかにプレミアリーグで起こる「アウェイの洗礼」としては、「定期試験中のため、声出し応援禁止だった」などがある。別に洗礼ではないが、会場でもらえるメンバーリストが、学校の定期試験の裏紙だったりして解ける自分に安堵する(or解けない自分に絶望する)といったイベントが起きることもある。
■そんなわけで、初心者観戦ガイド
秘境のような会場も多いので、心理的ハードルは高いかもしれないが、いまはネット社会。Google先生のような存在もあり、気持ちがあれば何とかなるはずだ。観戦用スタンドがなく、グラウンドレベルの観戦になる会場も多いが、これも「監督目線」「選手目線」を体感できるので、初めてなら、なおさら面白いはず。慣れてくると、スタンドから観ている感覚で、脳内にて映像を組み替えることもできる(……人もいる)ので、チャレンジしてみるといい。
もちろんプロの興行ではないので、「お客さん」の存在を前提に考えられた大会ではない。飲食などを期待してはいけない。物販は大会公式プログラムくらいだが、OB選手のインタビューや詳密なチーム紹介もあるので買って損はないはず。担当するホームチームがいろいろなオマケをつけてくれることもある。普段は入れない学校の敷地で私立校が持つ施設の豪奢さに圧倒されるも良し、Jクラブの練習グラウンドならトップチームの練習や試合などとハシゴを考えてみるのもいいかもしれない。
行く会場は何かしら縁のあるチームを観に行くのが一番だと思うが、あえて選ぶならEASTの千葉ダービー(流経×市立船橋×柏レイソルU-18)、WESTの大阪ダービー(ガンバ大阪×セレッソ大阪)は「ハズレ」の心配がない鉄板カードだろう。前者はとにかく熱くて激しいバトルを間近で体感できるし、後者については説明するまでもあるまい。
年々地味に集客が増えていることからも分かるように、行って楽しく観て楽しい大会であることは確か。「Jリーグの予行演習」という意味で言っても、第三者の「目」が多くある中でプレーする経験は選手にとってもプラス。全試合入場無料の上、全会場でホストチームがウェルカムの体制を作ってくれているはずなので、気楽に足を運んでみてほしい。
文・写真=川端暁彦
By 川端暁彦