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【特別対談】外池大亮×川端暁彦…育成年代の試合放送が持つ意義「日本サッカーの未来のために」

2016.08.11

 8月、日本の学生たちは「夏休み」の真っ盛り。サッカーに励む少年たちにとって、夏は各種大会で自分の力を試す期間でもある。生まれて初めて「全国大会」を体感したのが夏休みだったという選手も多いだろう。

 今年の夏、日本クラブユース選手権(U-18)大会を皮切りに、SBSカップ国際ユースサッカー、日本クラブユース選手権(U-15)、U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジと多くの試合を放送するスカパー!の担当者に話を聞いてみた。

 そもそも育成年代の試合を露出する意義とは何か。その狙いはどこにあるのか。そして放送に込める願いとは。担当者の名前は、外池大亮氏。かつて湘南ベルマーレ、横浜F・マリノス、ヴァンフォーレ甲府などで活躍した元Jリーガーである。

取材・文=川端暁彦
写真=新井賢一

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川端暁彦(以下、川端)  そもそも、スカパー!さんが育成年代の試合を多数放送されるようになった理由はどのあたりにあるのでしょうか。

外池大亮(以下、外池)  特別に何かがあったわけではなく、シンプルな理由です。スカパー!は、オフィシャルブロードキャスティングパートナーとして、明治安田生命J1、J2のリーグ戦を全試合放送、そしてJ3リーグに関しても「それもやりましょう」と続けてきました。こうやって多くの試合の中継を実施することが、それだけで大変なことだったのは確かに間違いありません。ただ、単に試合を「流す」だけでなく、一緒に何かを育んでいく姿勢が大事なのではないかとも思っていたんです。CSR(企業の社会的責任)としてもそうですし、「もっと向き合って考えていこうよ」という思いがありました。

川端  現場での声を拾いながら検討していったということですね。

外池  クラブの皆さんにとって、トップチームの勝ち負けは絶対に大事なことです。でも、それだけではないんですよね。各クラブがどこにプライオリティーを置いているのかと言えば、「地域の中でどう生きて、どう認められるのか」とか「サッカーを通じてどう人を育てるのか」という部分だったりする。そこをすごく大切にしているんです。見せる側の人間としては、「そこを見せないでどうするんだ?」、「どうして今まで取り上げなかったんだ?」と思うようになったんです。

川端  自然と表に露出してくる部分以外にもフォーカスしましょう、と。

外池  方向性が決まってからはトントン拍子でしたね。今までも単発でJユースカップの放送をさせてもらったりはしていたんです。最初は「頼まれたから放送しました」という部分もあったかもしれません。でも、そうじゃないでしょう、と。放送する側としてもっと主体的に、しかもピンポイントではなく体系化してサッカー界のピラミッド全体を見えるようにして、縦のつながりやストーリーが浮かび上がるように取り上げていきたいと思ってやっています。そしてそれは、スカパー!だからこそできることだという自負もありました。

川端  やってみての反応、手応えはいかがですか?

外池  まず、クラブの皆さんに喜んでいただけましたよね。クラブが大事にしているものと、その思いを僕らがちゃんと知る機会にもなったと思います。クラブに関わる人達はトップチームだけで生きているわけじゃない。それはJリーグができて23年が経ったからこその部分でもあります。それを見せていけることに大きな意義を感じます。サポーターの皆さんにも“応援する理由”をもっと深く持ってもらえればと思っていますし、そこにも意義を感じています。

川端  もっと好きになってもらいたいということですよね。

外池  まさにそのためにやっているんだとも思っています。育成年代の部分をサポーターの皆さんに紹介できるということには本当に大きな意義があるはずです。サッカー界として、サッカーを知らない人たちに広く伝えたいという思いがあり、観客動員を増やしていく試みを行うのは当然のことです。ただその一方で、コアなサッカーファン、サポーターの皆さんの数を増やしていくことも重要だとも思っているんです。コアな人たちは“発信者”にもなってくれます。そういう皆さんに寄り添っていくことはスカパー!としてだからできることだという思いもあり、育成年代の試合やその取り組みを発信していくことに大きな意味を感じながらやらせてもらっているわけです。

外池 大亮(とのいけ だいすけ)/1975年横浜市生まれ。早稲田大学を卒業後の1997年にベルマーレ平塚(現・湘南ベルマーレ)に加入。以降、横浜F・マリノス、大宮アルディージャ、ヴァンフォーレ甲府、サンフレッチェ広島、モンテディオ山形、湘南ベルマーレで活躍し、2007年に現役を引退。大手広告代理店の勤務を経て、13年にスカパーJSAT株式会社へ入社。

外池 大亮(とのいけ だいすけ)/1975年横浜市生まれ。早稲田大学を卒業後の1997年にベルマーレ平塚(現・湘南ベルマーレ)に加入。以降、横浜F・マリノス、大宮アルディージャ、ヴァンフォーレ甲府、サンフレッチェ広島、モンテディオ山形、湘南ベルマーレで活躍し、2007年に現役を引退。大手広告代理店の勤務を経て、13年にスカパーJSAT株式会社へ入社。

川端  改めて個別の大会についても所感をいただければと思うのですが、まずは8月11日から静岡県内で開幕するSBSカップ国際ユースサッカーです。U-19日本代表に加えて、コスタリカとスロバキアのU-19代表、そして地元の静岡ユース(静岡県U-18選抜)の4チームが出場する大会です。

川端  これはU-19年代の現在地が見える大会だと思っています。メンバーを見れば、Jクラブのアカデミーに所属している選手やその出身選手だけでなく、高体連(高校の部活動)に所属している選手も、大学サッカーの選手もいます。その集合体としてどれだけできるかという見方もありますし、個々の選手がどんな表情でどんなプレーをするのかという注目の仕方もできるでしょう。

川端  年代別代表は世代のオールスターチームみたいな一面もありますよね。

外池  そうなんです。6月に放送させていただいたインターナショナルドリームカップU-16をご覧になった方は、そちらと比べてもらっても面白いかもしれないです。U-16日本代表はほとんど全員がJクラブのアカデミーに所属している選手たちで構成されていましたが、U-19になると高体連の選手が占める割合がグッと増えてきます。そういう変化も感じられるのではないでしょうか。

川端  その変化は確かにありますよね。U-19日本代表のGK廣末陸(青森山田高)、DF杉岡大暉(市立船橋高)などはFC東京のU-15からU-18に昇格できなかった選手ですし、DF原輝綺(市立船橋高)も中学時代は無名選手でした。こうやって伸びてくる選手たちが出てきているわけですから。

外池  大学サッカーの位置づけもそうだと思っているんですが、「上に昇格できなかった」というような大きな挫折は、逆に言うとメンタルを育てるきっかけにもなりますよね。それが日本サッカーの強さだとも思います。戦える力を身に付けることにもつながります。Jクラブのアカデミーがすべての年代を網羅的に育成していることが、もしかすると一つの理想論なのかもしれません。ただし、Jリーグのクラブ数も50を超え、それぞれのクラブの体力にも限界がある中で、高体連や中体連、街クラブ(Jクラブ以外のクラブチーム)、そして大学の存在は大きいと思います。そこが担っているものを伝えることも、日本サッカーが進むべき未来へのヒントにもなるのではないでしょうか。理想論を押しつけるのではなく、日本サッカーの“今”をしっかり見てもらいたいですね。

川端  もう一つ、SBSカップは国際試合ならではの部分もあります。

外池  世界の中の日本が見えるという楽しみは当然あります。歴史ある大会ですし、歴史があるからこそ呼べるような選手が来る。過去にはクライファート(元オランダ代表)やロナウジーニョ(元ブラジル代表)も出場していますからね。

川端  そして大会ならではの楽しみとしては、静岡ユースとの対決もあると思います。毎回、日本代表との試合は本当に白熱して盛り上がりますよね。

外池  そうそう、サッカーに対して特別な誇りを持つ静岡という土地の力と思いが見える大会ですからね。SBS(静岡放送)さんがここまで大会をやってきたのは、「静岡の」サッカー文化を育てようという熱い意志があったからだと思います。世界と日本、そして日本のローカルが通貫して見える大会というのがSBSカップの醍醐味なんです。

川端  8月末には、小学生年代のU-12ジュニアサッカーワールドチャレンジの放送も行われます。

外池  ここは何と言ってもFCバルセロナU-12チームの来日が見どころでしょうね。僕もジュニア年代でコーチをやらせてもらっているのですが、パッと集まってきた小学生の着ているユニフォームを観ると、地元のFC東京と並んで多いのがバルセロナなんです。一つの目標であり、最大の夢を抱かせるチームなんだと思います。当然、小学生年代の選手であれば、「やってみたい」とか「見てみたい」と思うチームでしょうね。

川端  今年は“街クラブ選抜”も参加しますね。

外池  主催者と一緒に考えさせてもらって始めた試みです。中西哲生さんと鈴木隆行さんに監督をしていただいて、全国の小学生にバルセロナやマンチェスター・シティと対戦するチャンスを設けて、夢を持ってもらおうという狙いでした。こうやって単に放送するだけではなく、「新しいことをやっていきましょう」と主体的に運営に携わっていくのも、僕たちのやっていることです。

川端  いろいろな意味で未来の見える大会ですよね。

外池  昨年はU-12ベトナム代表が大活躍しました。「こんなに力があるのか。日本もアジアの中での立場が危うくなるかもしれない」と思われた方もいるんじゃないでしょうか。あの年代を見るからこそ、先についても考えられる部分がありますよね。昨年はJクラブのアカデミーが4強に一つも残れませんでしたが、同じように少し淡泊な負け方をしてしまっていたのは気がかりな部分でした。そうした細かいところも視聴者の方に感じていただけるようにしたいですね。昨年はアカデミーに精通している樋口靖洋さん(現Y.S.C.C横浜監督)に解説をお願いして育成の部分を掘り下げてもらいましたが、今年も指導者の方々への何か気づきになるような放送にしたいと思っています。

川端暁彦(かわばた あきひこ)/1979年大分県中津市生まれ。サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』 元編集長で、2013年よりフリーランスに。日本サッカーのユース世代からJリーグまで幅広く取材し、古巣を始めとして『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカーダイジェスト』『ゲキサカ』など各種媒体に寄稿している。

川端暁彦(かわばた あきひこ)/1979年大分県中津市生まれ。サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』 元編集長で、2013年よりフリーランスに。日本サッカーのユース世代からJリーグまで幅広く取材し、古巣を始めとして『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカーダイジェスト』『ゲキサカ』など各種媒体に寄稿している。

川端  メンタリティの違う海外勢と当たることで日本の小学生に変化を期待できる部分もあります。

外池  昨年の準決勝は面白かったですよね。「絶対に一対一では負けない」という闘志を剥き出しにする東京都トレセンのサイドバックと、それに対して「絶対に抜いてやる」と何度も仕掛けていくバルセロナのウイング。ああいう戦いが選手を育てるんだなと思わされました。それを感じてもらうための“入口”を用意したいと思ってやっています。

川端  Jクラブのアカデミー組織を紹介する番組『Jのミライ』も、まさに“入口”の番組ですね。

外池  まさにそういうことで、先日放送させていただいたFC東京の回では、学校との折衝の部分から伝えさせていただきました。学校訪問のようなことをJクラブがやっていること自体はサポーターの多くは知っていると思うのですが、それがどのように行われているかとなると、そこまでご存知ないと思うんです。クラブが育成や普及事業において、地域のなかで試行錯誤しながらすごく頑張っている部分、それでいて陽の当たらない部分なども、うまく紹介していければと思っています。

川端  いろいろな角度からJリーグと日本サッカーの魅力を伝えていきたいということですね。

外池  スカパー!としては個別の大会を単に伝えることで終わるのではなく、U-12からトップチームまで連なっていく縦軸を意識しながら伝えいきたいと思います。U-12の選手たちがどう大きくなっていくかを見せたいですし、逆にU-12の選手のひたむきさからトップの選手について何かを感じてもらうことがあってもいいかもしれませんよね。それを見せていけることは、僕のようなサッカー、そしてサポーターに育ててもらった人間として大きな価値を感じています。地上波でそれをやるとなると難しいと思いますし、スカパー!だからできることがあるんだと信じて本気でやりたいと思っています。

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■スカパー!Jリーグ ユースページ■
http://r.ca-mpr.jp/s/315/?i4a=3640

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By サッカーキング編集部

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