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プレー人口と代表の強さは比例する!? 日本代表が強くなるために必要なこと

2018.06.18

 いよいよ今月、ワールドカップ ロシア大会が開幕します。多くの人が注目するサッカーの祭典ですが、日本の対戦国はすべて格上です。現在の日本のFIFAランキングは60位。セネガルは28位、コロンビア16位、ポーランド10位です。(2018年5月17日時点)。

 FIFAランキングがかなり下の日本ですが、サッカーコンサルタントの幸野健一さんによると、FIFAランキングと競技者人口の比率には大きな関係があるといいます。

(取材・文:鈴木智之)

■前回王者ドイツは20%超え!それに対して日本は…

「2018年5月時点でのFIFAランキングは、1位ドイツ、2位ブラジル、3位ベルギー、4位ポルトガル、5位アルゼンチン、6位スイス、7位フランス、8位スペイン、9位チリ、10位ポーランドとなっています。ドイツは前回のワールドカップで優勝した国であり、ブラジルは過去最多5回の優勝経験を持っています。ポルトガルは2016年の欧州選手権で優勝しましたし、アルゼンチン、フランス、スペインもワールドカップの優勝経験があります。FIFAランキングの10位以内に入っている国は、自他共に認めるサッカー強国と言えるでしょう」

 FIFAランキング上位国の総人口をサッカー競技者人口(各国サッカー協会の加盟登録者人数)で割った、競技者人口比率を参照すると、興味深いデータが浮かび上がってきます。

「FIFAランキング1位のドイツは、競技者人口比率が20.21%。つまりドイツ国民の5人に1人がサッカー協会に登録して、サッカーをプレーしている計算になります。この数字は子ども(ジュニア)から大人(シニア)まで含まれているので、文字通り老若男女がサッカーをそれぞれのレベルに合った環境でプレーしているわけです。ドイツのブンデスリーガの観客動員も欧州で一位であり、競技者人口比率も世界で一位。総人口8000万人のうち、1600万人がサッカーの競技者として登録されています。2位ブラジルの1300万人と比べても、飛び抜けて多い数字です。まさにワールドカップ優勝、サッカー世界一にふさわしい国と言えるでしょう」

 翻って日本はどうでしょうか。残念なことにFIFAランキングは60位まで下がってしまいました。日本の競技者人口比率は3.8%。人口1億2600万人に対して、480万人ほどが日常的にサッカーをプレーしている計算になります。

「日本は人口が1億人を超えています。サッカー強国では、ブラジルの2億人に次ぐ規模です。しかし競技者人口比率が3.8%と少ない。上位の国の顔ぶれを見る限り、競技者人口比率が6%を超えて初めて、その国のナンバーワンスポーツ、誰もが身近にそのスポーツを楽しんでいると言える環境になります」

■サッカー強豪国になるためにはA代表の強化だけではダメ

 ワールドカップで結果を出すためには、その国のA代表だけを強化すれば良いわけではありません。代表チームとは、その国のサッカー選手の中から選ばれた人達です。1万人の中から11人を選ぶのと、100万人の中から11人を選ぶのとでは、どちらが質の高い選手を選抜できるでしょうか? 分母は大きいに越したことはありません。

「いま日本のサッカーに関わる人達の関心はワールドカップに向いていると思いますが、日本代表は山の頂上の一角にすぎません。山の頂上を支える土台、裾野を広げることが大切なことであって、それがサッカーをプレーする人を増やすこと。つまり日本の競技者人口比率をあげることなんです。そのために何をするべきか。まずは誰でも、どこでもサッカーを楽しむことのできる環境。そして一度始めたサッカーを辞めずに、私のように50歳を越えても毎週末プレーできるような環境づくりが必要です」

■ランク1位のドイツが感じる危機感とは?

 ドイツほど競技者人口の多い国でも、危機感を感じています。ドイツサッカー協会の指導書によると、「これから少子化が来るのは確定した未来であり、サッカー選手の人口が減ることが確実視されている。そのため一度サッカーを始めた子が途中で辞めたり、ドロップアウトさせず、成人になるまで続けることができるような指導、環境が重要になる」という記述があります。

「日本もドイツと同じ先進国なので少子化は避けられない未来です。そのため、一度サッカーを始めた子を途中で辞めさせたりせずに、続けさせる環境を作ること。中学、高校、大学の区切りや受験で引退などはせず、続けていくのが当たり前の環境になり、競技者人口が増えた時、日本のFIFAランキングが上がり、ワールドカップでも結果が出るのではないでしょうか」

 その国のサッカーを強化するためには、トップだけでなくボトムを引き上げることが大切です。トップとはA代表、Jリーグの強化。ボトムはジュニアや育成年代をはじめとする、グラスルーツの環境整備です。その両輪が揃うことで、ワールドカップ優勝という目標に向けてまっすぐ進むことができるのではないでしょうか。後編では、どのようにサッカー環境を作り、プレイヤーの増加につなげていけばいいかという提言を紹介します。

幸野健一(こうの・けんいち)


サッカーコンサルタント、アーセナルサッカースクール市川代表
10歳よりサッカーを始め、17歳のときにイングランドにサッカー留学。以後、東京都リーグなどで40年以上にわたり年間50試合、通算2000試合以上プレーし続けている。
日本のサッカーが世界に追いつくためにはどうしたらいいかを考え、育成年代を中心にサッカーに関する課題解決を図るサッカーコンサルタントとして活動中。
2014年4月「アーセナルサッカースクール市川」代表に就任。スクールの運営でも手腕を発揮している。

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