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[初対談で誓う2017リベンジ宣言] 高山薫 × 菊地俊介「勝つ喜びを、もう一度。」①

2017.05.18

[写真]=兼子愼一郎

湘南ベルマーレらしさとは何か。「積極的にプレーをすること」だと高山薫は言う。湘南ベルマーレの良さはどこか。「練習でも試合でも常に100パーセントな姿勢を持つこと」だと菊地俊介は言う。悔しさが残る昨シーズンを経て、あらためて想うチームのこと。「今年は1試合1試合が大事になる―」湘南ベルマーレの誇りを胸に、走り続ける2017シーズンが幕を開けた。
インタビュー・文=青柳舞子

Jリーグサッカーキング5月号[湘南ベルマーレ特集]共走-KYOUSOU-

ベルマーレらしさとは積極的にプレーをすること


今回は湘南ベルマーレ特集の巻頭対談となります。お二人の対談は初めてですか?

高山 はい。俊との対談は初めてだよね。

菊地 そうですね。これまでは同期との対談が多かったので、新鮮です(笑)。

高山 うん、新鮮(笑)。

早速ですが2017シーズンが始まりました。現在の心境を教えてください。

高山 チームを立ち上げてから、キャンプを経て、開幕戦まではあっという間だったので「始まっちゃった」という感じでした。アウェイでの開幕というのが記憶にないんですよ。(菊地選手に向かって)ある?

菊地 アウェイでの開幕はないですね。

13年に日産スタジアムで開幕戦を戦っているので4年ぶりでした。

高山 そうなんですか。アウェイで開幕戦を戦ったイメージが本当になかったので、当初は開幕をしたけど開幕した感じは、あまりなかったですね。ただアウェイだったけど、意外と試合に入りやすかった。

菊地 アウェイでの開幕は初めてでしたが、僕も試合には入りやすかったですね。

今シーズンの開幕にあたり特に取り組んできたことはありますか?

高山 チームとしては、今まで積み上げてきたことに加えてプラスアルファを、という形で練習を行ってきました。縦に速い、カウンターだけがベルマーレのスタイルではないので、例えば攻撃面では、もっと多彩にできる練習をして、これまでの“湘南スタイル”に上積みをしてきたという感じです。個人的なことで言うと、苦しい経験をした昨シーズンはベルマーレらしさが全く出せなかった。じゃあベルマーレらしさは何かというと、うまくなるとかではなくて、積極的になることだと思うので、そこは常に意識をしてやっています。

菊地 個人としては、まずケガをしないこと。昨年、ケガ(3月に右ひざの前十字じん帯を損傷し長期離脱となった)をしてしまったので、ケガをしたところの補強を意識してやってきました。なので、今年はケガをせずに、シーズンをとおしてチームに貢献したいと思いながらやっています。

高山 新しく入ってきた選手はまず“ベルマーレのスタイル”に馴染むことは大事だと思うんですが、特に声を掛けて……というのは、ないよね。

菊地 練習の中で新加入の選手が既存の選手たちを見て、こういうふうにやるんだと学んでいく感じなんですよね。

高山 うん、そう。このチームはすごく入り込みやすいと思うので、特に声を掛けなくても、というのもあると思います。

菊地 基本的にみんな優しいですしね。

高山 うん、優しい。

菊地 僕がベルマーレに初めて来たのは、大学生の時だったんですけど、練習で(雰囲気が)いいなってすごく感じて「ここでやりたい」と思って決めましたもん。

[写真]=兼子愼一郎

雰囲気の良さはベルマーレの特徴の一つだと感じますが、ピッチの中では厳しい一面が出ることもあると思います。

高山 もちろん、ありますよ。選手個々のことで言えば、今はそこまでピッチ内外で変わるタイプは少ないですが、例えば(山田)直輝は普段は大人しいけど、グラウンドでは声を出すタイプだしね。

菊地 そうですね。(秋元)陽太くんもそうですけど、そういう選手がいるほうがチームとしてもいいことですよね。

高山 確かに、そうだと思う。自分たちのことで言うと、どう? (声を)出してはいるよね。

菊地 はい。出していることは出しているんですけど……届いているかな。

高山 俺は(声を)出すようになった。昔よりはずっと。

菊地 薫くんの声は聞こえますよ。

高山 本当?

菊地 うん。聞こえますよ。でも、みんなが本気でサッカーをやっているから、誰かが先導しなくても、厳しい部分が自然に出てくるのかなとも思います。

雰囲気も含めたベルマーレのスタイルの継続は、どのようにしているのですか?

高山 それはやっぱり、曺(貴裁/監督)さんの存在が大きいと思います。

菊地 そうですね。ミーティングとか。

高山 間違いなくそこだよね。選手だけで何かをしようとしても、ここまで同じ方向を見てやれないと思う。ただ、曺さんは「選手たちが自主的にやるように」というメッセージも込めているとも思うんです。

菊地 それは僕も感じますし、そういう雰囲気を曺さんがつくりますよね。

高山 そう。最終的には「俺がいなくてもやってほしい」と。だから俺たち自身も、曺さんに言われなくてもできるようになりたいと思いますし、考えますし。

[写真]=兼子愼一郎

お二人の中では「自分たちでやる」という意識も強くあるんですね。

菊地 はい。4年目なので、曺さんの考えや意図も分かってきていると思います。

高山 俺も曺さんとは長いので、意図は理解していると思います。監督の意図を新加入選手などに教えることはありますか?

菊地 ありますよね。

高山 うん、ある。厳しいことを投げかけられて、あきらかに凹んだりすることもあるんです。俺たちも、それは経験してきていることで、そういう時は俺や俊だけじゃなくて、周囲の気づいた人が「こういう意図があるんじゃないか」と声を掛けますね。何より曺さんは厳しく言って、そこで捨てたりする人ではないですから。

菊地 そうなんですよね。俺も(厳しく言われた)経験がありますし。

高山 そう。だから厳しく言われて落ち込んでも、変に心配することでもないんです。やっぱり曺さん自身が選手に厳しく言って終わらせることはないので。

菊地 フォローがありますもんね。

高山 うん。だから俺たちが声を掛ける時もあれば、あえて言わない時もあるし。そんな曺監督からの言葉で印象に残っているものはありますか?

高山・菊地 それは……。

高山 ……ない。

菊地 えっ?

高山 いや、全くないんじゃなくて、特別な一つが出てこないです。グッときたのはいっぱいあって……一つの言葉って言うと難しい。一言とか二言ではないんだよね。

菊地 ああ、そう、そうですね。印象に残るという意味とは違いますけど、個別で呼ばれて泣かされるというか、泣いてしまったことはあります。それは印象に残っていますが、言葉でって言うと難しいですね。

お二人とも涙した経験があるんですね。

菊地 ありますよ。薫くんあります?

高山 ある。心を打たれるというかやられるよね。たぶん、みんな泣いてると思う。

菊地 基本的には一対一でサッカーのことから話していく感じで。

高山 そこからメンタルに、どんどん入ってくる。

菊地 そうなんです。

高山 それが曺さんのすごいところで、嫌な感じではなくて、かなりグッとくる。そのスタイルは、ずっと変わらないしね。

菊地 はい。そこは変わらないですね。

[写真]=神山陽平

曺監督との信頼関係が見えますが、同時に監督と選手の距離感が近いとも感じます。

高山・菊地 近いですね。

高山 距離は近いですよ。僕はプロになってから反さん(反町康治/現松本山雅FC監督)、曺さん、ネルシーニョ(現ヴィッセル神戸監督)の下でやってきたんです。

菊地 その三人すごいですね。

高山 そう、すごいでしょ。反さんは「ザ・監督」という印象で、どちらかと言うとプライベートでの絡みなどはなかったんですよ。今は逆に他のチームなので、会ったらそういう話をさせてもらうようになったんですけど。やっぱり「監督」という印象で、ネルシーニョも「監督」という感じでした。でも、曺さんは普通にリフティングとかも入ってきちゃう時もあって(笑)。

菊地 そう。ありますよね(笑)。

高山 だから(距離感が)近いですよね。でも、いくら近くても、やっぱり「監督」ですし、敬意は抱いています。

菊地 曺さんは「監督」ですよね。一対一で話すのも、何回話しても緊張しません?

高山 する。でもそれが、またいいんじゃないのかなって思う。

キャプテンと副キャプテンということで、特に言われていることなどはありますか?

高山 それはないですね。俺も俊も、その立場を与えることで成長できると考えてのことだと思うんです。「自分らしくやってほしい」と思ってくれているから、逆に言われることはないよね。

菊地 (うなずきながら)、「こういうふうに」っていうのはないですね。

高山 「こういうふうにやれ」とか「やってくれ」というのはないんですよ。では、どんなキャプテン・副キャプテンであろうと考えていますか。

高山 今年は思ったことを発信しようと考えています。思ったことは声に出して言おうと。昨年はどちらかと言うと、チームも勝てていない状況の中で、キャプテンだから言ってるって思われるのが嫌だったんですね。それで言えない……という感じだったんですけど、今年はもう、そういうことを考えないでいいかなと。もっとピュアにいこうかなって。

菊地 ピュアですか(笑)?

高山 うん(笑)。ありのままじゃないですけど、それが自分の成長にもつながると、昨年一年を経て思ったことですね。では、菊地選手から見た「高山キャプテン」はどんなキャプテンでしょう?

菊地 昨年はケガをしていてチームを外から見ることが多かったんですけど、薫くんがすごく責任を感じているんだろうなって思って見ていました。自分自身も、すごくもどかしかったですけど。

高山 そう?

菊地 はい。今年、曺さんからキャプテン・副キャプテンの話があった時に、その場に一緒にいましたけど、リベンジの気持ちもすごくあると思いますし、僕から見た薫くんは頼れるキャプテンです。

高山 これは、この対談で聞く質問じゃないです(笑)。

菊地 (笑)。声や言葉でわぁっと伝えるタイプじゃなく、どちらかと言うと薫くんは背中で引っ張るタイプ。ベルマーレのサッカーの象徴というか。僕はポジション的にも後ろから薫くんが走っているところを見るんですけど、その背中を見て僕らも走れるという面もあるんですよ。

※この対談は3月9日に行われたものです。高山選手は、3月25日に行われた2017明治安田生命J2リーグ第5節・ジェフユナイテッド千葉戦で右ひざ前十字靭帯損傷で全治8カ月と発表されました。高山選手の一日も早いご回復を編集部一同、お祈りしております。

[初対談で誓う2017リベンジ宣言] 高山薫 × 菊地俊介「勝つ喜びを、もう一度。」②
[初対談で誓う2017リベンジ宣言] 高山薫 × 菊地俊介「勝つ喜びを、もう一度。」③

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