大会史上初めてファーストレグでの【4点ビハインド】をひっくり返してパリ・サンジェルマンを撃破したバルセロナ。【決勝ラウンド歴代2位】の大差(10-2)でアーセナルを葬り去ったバイエルン。セビージャに競り勝ち、初出場で8強に進んだ【史上7チーム目】となったレスター。マンチェスター・C相手に鮮烈な逆転勝利を飾った【平均年齢22歳】のモナコ……。
ベスト16の8試合で大会史上最多の【62ゴール】が生まれた今シーズンのチャンピオンズリーグは、来たるベスト8でも必ず何かが起こる。白熱必至の準々決勝4試合を、“気になる数字”とともにプレビューしてみよう。
■ユヴェントスvsバルセロナ
今大会、最強の“矛”と最強の“盾”が激突する。セリエA最少失点で首位を走るユヴェントスは、CLでも今シーズンここまで8試合でわずか【2失点】。これに対し、リーガ・エスパニョーラ最多得点のバルセロナは、【26得点】でCL最多得点チームでもある。リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの“MSN”は、レオナルド・ボヌッチ、アンドレア・バルザーリ、ジョルジョ・キエッリーニのイタリア版“BBC”が織りなす鉄壁の守備をいかにして崩すか。
ユーヴェはロースコアゲームに持ち込んで手堅く勝ち切りたいところ。というのも、CL通算60試合15得点のゴンサロ・イグアインが、グループステージの成績(38試合13得点)と裏腹に、決勝ラウンドでは【22試合2ゴール】となぜか振るわないからだ。また、バルサが今シーズンCLのホームゲームで【4戦4勝、21得点1失点】と圧倒的な強さを示していることを考えても、欧州カップ戦で【21戦連続無敗(12勝9分)】のホームで戦えるファーストレグで彼らは絶対に先手を取る必要がある。
対するバルサは、やはりメッシのゴールで“カテナチオ”のカギを開けたい。現在CL通算【94ゴール】でクリスティアーノ・ロナウド(95)と歴代最多スコアラーを争うメッシは、出場した113試合のうち【52.2%】にあたる59試合で得点している。うち決勝ラウンドでネットを揺らしたのは21試合で、【20勝1分0敗】という不敗神話を持っているのだ。幸い、ここまで【8アシスト】でCLのシーズン最多アシスト記録を更新しているネイマールが隣にいるのも心強い。
■バイエルンvsレアル・マドリード
欧州チャンピオンズカップ時代を含め、準々決勝進出はレアル・マドリードが【34回目】で、バイエルンが【28回目】。これは歴代1位、2位の回数である。チャンピオンズリーグにフォーマットが変わった後に限ってもバイエルンが最多の【16回目】、レアルが【15回目】でバルサと並んでこれに次ぐ。またミュンヘンで行われる今回のファーストレグは両者が相見える【23回目】の対戦で、これも欧州カップ戦における最多。ヨーロッパが誇る“真の名門対決”と言っていい。
過去22試合の戦績は【バイエルン11勝、レアル・マドリード9勝、2分】で、歴史はドイツ王者に分があることを示す。さらにバイエルンのベンチには、選手で2回、監督で3回と歴代最多【5回】のビッグイヤー獲得歴を持つカルロ・アンチェロッティがいる。最後の優勝はレアルを率いた13-14シーズンだったが、奇しくもそのとき助監督だったのがジネディーヌ・ジダン。今回は師弟対決となるが、“師”は元教え子と古巣クラブを知り尽くしているはず。白い巨人の連覇を阻む相手として、CLを知り尽くしたクラブとボスのタッグはまさにうってつけだ。
ただし、UEFA主催大会で【13試合連続無敗(8勝5分)】というクラブレコードを更新中のレアルには、CL歴代トップスコアラーのC・ロナウドがいる。CL決勝ラウンドで彼が決めてきた【44ゴール】は同歴代2位のメッシ(37)を大きく引き離し、「準々決勝」のラウンドに限っても【15ゴール】は歴代最多。欧州カップ戦におけるドイツ遠征は【30試合で4勝】と苦手のレアルだが、“チャンピオンズリーグ男”のゴールで先勝できれば一気に優位に立てる。
■ドルトムント対モナコ
今大会で台風の目となっているモナコは、爆発的な得点力が売りだ。今シーズンここまで、全公式戦51試合で【133ゴール】は、バルセロナ(140)に次いで欧州5大リーグのクラブで2番目の数字である。
勢いの原動力になっているのは、なんと言っても若い力。【18歳63日】で今シーズンCLの最年少スコアラーとなった“ネクスト・アンリ”ことキリアン・ムバッペを筆頭に、ファビーニョ(23歳)、ティエムエ・バカヨコ(22歳)、ベルナルド・シルヴァ(22歳)、バンジャマン・メンディ(22歳)、トマ・ルマル(21歳)などが躍動しており、16強の第2戦でマンチェスター・Cを破った瞬間にピッチ上にいたフィールドプレーヤーの平均年齢はなんと【22歳】だった。
ただ、若さで言えばウスマン・デンベレ(19歳)やクリスティアン・プリシッチ(18歳)、ユリアン・ヴァイグル(21歳)らを擁するドルトムントも負けていない。今大会で、スタメンの平均年齢が最年少だったのはグループステージのスポルティング戦におけるドルトムントで【23.6歳】だった。また、攻撃力に関してもモナコに負けず劣らず。今大会ここまで【25ゴール】はこちらもバルサ(26)に次ぐ2位で、大会最多【14人】のスコアラーを誇る攻撃陣はどこからでもゴールを脅かせる。
ベスト8に残ったチームで最もフレッシュな2チームが、自慢の攻撃力を存分にぶつけあうカードになりそうだ。
■アトレティコ・マドリード対レスター
16強のセビージャ戦に続き、レスターは準々決勝でもスペイン勢と戦う。ただし、完全に“ポゼッション対カウンター”の構図だったセビージャ戦とは打って変わって、アトレティコ・マドリー戦は似た者同士の“カウンター対決”だ。アトレティコはここまで8試合で【11得点4失点】、対するレスターは【10得点8失点】で、ゴール数は8強に残ったチームの中でワースト1、2。得点者の数もアトレティコが【5人】、レスターが【6人】と最低限の人数で、同じ【4ゴール2アシスト】のアントワヌ・グリーズマン、リヤド・マフレズがそれぞれのチームで得点シーンの大半に関与している。両軍ともに、このキーマン対策が重要になりそうだ。
セビージャとの第1戦に敗れた翌日にクラウディオ・ラニエリを電撃解任したレスターは、助監督だったクレイグ・シェイクスピアがベンチを預かってから公式戦7試合で【6勝1敗】と強さを取り戻した状態でこの試合に臨む。ただし、05-06シーズンのビジャレアルに続いて【史上2チーム目】となるCL初出場でのベスト4進出というミラクルストーリーの続きを紡ぎ出す上で、アトレティコはこの上なく不吉な相手となる。過去、レスターは欧州カップ戦に3度出場したことがあるが、実はうち【2回】で彼らを敗退に追いやったのがアトレティコだったのだ(1961-62のカップ・ウィナーズ・カップ、1997-98のUEFAカップ)。「二度あることは三度ある」のか、それとも「三度目の正直」か……。
文=Footmedia