多額のお金が動くチャンピオンズリーグ
チャンピオンズリーグ(CL)は、まさしく「金のなる木」である。今年6月にUEFAが公表した声明によれば、2018-19シーズンのCL、ヨーロッパリーグ(EL)、UEFAスーパーカップで生み出される商業収益は、推定32億5000万ユーロ(約4194億円)にものぼるという。そこから大会運営費などの諸経費を引いた25億5000万ユーロ(約3289億円)が、予選出場チームを含むUEFA主催大会の全参加クラブに行き渡る賞金となる。
そして、賞金総額のうち8割近くにあたる19億5000万ユーロ(約2517億円)が、CL本戦に出場するクラブ、つまりヨーロッパの選ばれし32チームに割り当てられる。まずは4本の柱からなる、その内訳から見ていこう。
(1)本戦出場給(全体の25%=4億8800万ユーロ)
(2)大会成績給(全体の30%=5億8500万ユーロ)
(3)UEFA係数給(全体の30%=5億8500万ユーロ)
(4)マーケットプール(全体の15%=2億9200万ユーロ)
(1)の「出場給」はグループステージに参加するだけで入ってくるお金で、32クラブに均等分配される。つまり、今シーズンなら出場するだけでまずは1525万ユーロ(約19億7000万円)が確実に手に入る計算だ。続く(2)の「成績給」もその名の通り。具体的には、下記のように額が設定されている。
・グループステージで1勝するごとに270万ユーロ(約3億4800万円)、ドロー1試合につき90万ユーロ(約1億1600万円)
・ラウンド16進出=950万ユーロ(約12億2600万円)
・準々決勝進出=1050万ユーロ(約13億5500万円)
・準決勝進出=1200万ユーロ(約15億4900万円)
・決勝進出=1500万ユーロ(約19億3600万円)
・優勝=400万ユーロ(約5億1600万円)
このように勝ち進むほどボーナスが増えていく仕組みで、優勝まで辿り着けば、出場給と合わせて概算で7500万ユーロ(約97億円)前後になる。
次の(3)「UEFA係数給」は、今シーズンから新たに導入された指標。出場32クラブが過去10シーズンで収めた成績を係数化し、そのランクに応じて手に入る金額が変動する。最上位のチーム(現在はレアル・マドリード)で3546万ユーロ(約45億7600万円)、最下位のチームで110万ユーロ(約1億4000万円)が支払われる。
最後の(4)「マーケットプール」は、テレビ放映権料の分配金。こちらはシステムが少々複雑で、まずはテレビマーケットの規模に応じて国ごとに分配率が決まっており、それを同一協会内のクラブが、参加チーム数や成績(試合数)によって分け合っている。つまり、フットボール人気が高く、かつ出場クラブ(または上位進出クラブ)が少ない国のチームほど、マーケットプールを“総取り”できるというわけだ。
以上が賞金の分配ルールになるが、上記の肝になるのは、CLが“出るだけで大儲けできる”大会だということだろう。たとえ6戦全敗でグループステージ敗退を喫したとしても、UEFAからもらえる出場給や放映権料、さらにホームゲームの入場料やグッズ売上などクラブ個別の収益も合わせれば、少なくとも30~40億円は確実に入ってくる計算になる。
そして、上を見ればこちらは青天井である。上位に進めば進むほど、加速度的に“うまみ”も増していく。公表されているデータで言えば、2016-17シーズンに最も“稼いだ”クラブはユヴェントスで、その額は1大会の歴代最高額となる1億800万ユーロ(約139億円)にのぼった。2位がレスターで8168万ユーロ(約105億円)、3位がレアル・マドリードで8105万ユーロ(約104億円)。前述の通り、ここに各々のチケット代などが加算されるのだから想像を絶する金額になる。
なお、この16-17シーズンは賞金総額がおよそ14億ユーロ(約1800億円)だったが、冒頭に挙げたように今シーズンは19億5000万ユーロ(約2517億円)にアップする見込みだ。つまり各クラブの“手取り”もさらに増えることが予想され、もしかすると150億円の大台を超えるかもしれない。
少し乱暴な表現だが、言ってみれば、CLでたった1シーズン躍進を見せただけで、クリスティアーノ・ロナウドやギャレス・ベイル、ポール・ポグバといった100億円クラスのビッグプレーヤーを獲得する資金が賄えてしまうのだ。他のトーナメントと比べても、そのインパクトは明らか。たとえばアジア最強クラブを決めるACLで優勝しても5億円弱、ワールドカップを制した国でも40億円強の賞金額であることを思えば、CLのビジネス的な価値の大きさがよくわかる。
そう考えると、各国リーグで毎年のように「CL出場権」をめぐる争いが優勝争いと同じくらいの盛り上がりになるのも納得だろう。CLの舞台に立つということは、ビッグクラブにとっては経営上の“死活問題”であり、中小クラブにとっては“一攫千金”の大チャンスなのである。
文=大谷駿
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