ベスト4を賭けた戦いは残り2試合となった。14日、そして15日に戦う4チームのうち3チームは昨シーズンの各国リーグ王者たち。意地とプライドがぶつかり合う熱戦が繰り広げられるのは間違いないだろう。果たしてセミファイナルへの切符を掴むのは――。
◆バルセロナvsバイエルン
CL準々決勝に勝ち残った8チームのうち、ビッグイヤーを獲得した経験があるのはバルセロナとバイエルンの2チームだけ。その彼らがポルトガルの地で相まみえる。
欧州制覇までは、あと3勝。とはいえ、両雄のバトルは“優勝決定戦”と言っても過言ではない。というのも、直近3度の対戦では、2008-09シーズンの準々決勝と2014-15シーズン準決勝はバルセロナ、2012-13シーズンの準決勝はバイエルンに軍配が上がり、いずれも勝者が欧州制覇を成し遂げているからだ。
さらに、CLの決勝ラウンドでナポリを下した過去2つのチーム、2011-12シーズンのチェルシーと2016-17シーズンのレアル・マドリードは最終的に優勝を飾っている。バルセロナにとっては、このバイエルン戦で勝利を収めれば、優勝への視界が一気に開けてくるだろう。
ただ、今のバイエルンは絶好調だ。昨年12月のCLトッテナム戦から、公式戦27試合連続(26勝1分け)で負けがなく、目下18連勝中。連勝期間中に挙げた得点は「56」と、平均3ゴール以上を叩き出している。
1カ月ぶりの公式戦となった8日のチェルシー戦でも、「試合勘が鈍っているのでは?」という周囲の懸念を一蹴するかのように4-1と圧勝。試合終盤まで手を抜くことなく、圧巻のゴールショーを披露した。その姿は、ナポリに3-1の勝利を挙げながらも、終盤に入ってからは足が止まり、何度もゴールを脅かされたバルセロナとは実に対照的だった。
イギリスの大手ブックメーカー『ウィリアム・ヒル』も、バイエルン優勢を予想している。ベスト4への勝ち抜けオッズ(8月11日時点)は、バルセロナが2.25倍であるのに対して、バイエルンが1.57倍。さらに優勝予想オッズでも、バルセロナが8.00倍で4番人気、バイエルンが4.00倍で2番人気(1番人気はマンチェスター・Cで3.25倍)と大きな開きがある。
そんな下馬評を覆す選手がいるとしたら、やはりFWリオネル・メッシしかいないだろう。今シーズンはリーガ・エスパニョーラで25ゴール21アシストを記録。欧州5大リーグで最も多くの得点を生み出した背番号10は、ラウンド16セカンドレグのナポリ戦でも1ゴールをマーク。ハンドの判定で得点を認められなかったシュートを含めれば、2度ゴールネットを揺らしている。
バイエルンに対しても、2009年と2015年の対戦で1度ずつドブレーテ(=1試合2得点)を記録。メッシが得点を挙げれば勝ち抜け、そして前述のとおり、最終的には優勝を飾っており、この試合でも絶対的エースの活躍がカギを握るだろう。
対するバイエルンも、今シーズンの公式戦44試合出場で53ゴールを挙げるFWロベルト・レヴァンドフスキに大きな注目が集まる。ポーランド代表ストライカーはすでにブンデスリーガとDFBポカールで得点王となり、CLでもランキングトップの13ゴールをマーク(2位はすでに敗退しているドルトムントのFWアーリング・ハーランドで10ゴール)。得点王の3冠をほぼ確実なものとしている。
「メッシとレヴァンドフスキ、どちらが現在世界最高なのか?」。大一番を前にしてそんな議論が熱を帯びているが、その答えは得点数だけでなく、チームの勝ち上がりにも左右されるはずだ。チームとしても3冠を目指すレヴァンドフスキが闘志を燃やさないはずがない。サッカーは“11人対11人”のスポーツとはいえ、両エースの対決は目が離せないだろう。
なお戦術的な見どころとしては、サイドの攻防が挙げられる。4-2-3-1を基本システムとするバイエルンに対し、バルセロナがナポリ戦で採用した4-3-1-2で臨むと、バイエルンの両サイドバックには対面する選手がおらず、自由な攻撃参加を許すことになる。特に左サイドを担当するMFアルフォンソ・デイヴィスは、ラウンド16のチェルシー戦でも再三にわたるオーバーラップで相手の脅威となっていた。爆発的なスピードを誇るこの19歳を放置しておくと、バルセロナも痛い目にあうのは目に見えている。
そこでキケ・セティエン監督は、中盤に4人のMFを並べる4-4-2(ダイヤモンド型の中盤が有力)の採用を検討しているという。ただその場合は、メッシ、FWルイス・スアレス、FWアントワーヌ・グリーズマンの“MSG”をスタートから同時起用できない。相手の長所を消しにいくのか、あるいは自分たちのの得意なやり方で臨むのか。指揮官の決断も勝敗を分けるポイントとなりそうだ。
◆マンチェスター・Cvsリヨン
純粋な力比べをしたとき、圧倒的な差があるのはむしろこの試合だろう。『ウィリアム・ヒル』の勝ち抜け予想オッズ(8月11日時点)を見ても、マンチェスター・Cは1.12倍、リヨンは5.5倍となっている。
ただしシティが、ユヴェントスを撃破してこのラウンドまでたどり着いたリヨンを格下に見ることはないだろう。そもそも、今回の試合は彼らにとって“リベンジマッチ”だということを、どれほどのファンが覚えているだろうか。
両チームは昨シーズンのCLグループステージで初対戦。ホーム&アウェイの2試合を戦ったが、シティは1分け1敗で一度も勝てなかった。特にアウェイゲームは1-2で敗れ、前年度(2017-18シーズン)からCL4連敗を喫した。イングランド史上初の不名誉な記録を樹立している。ホームゲームでも2度にわたってリードを奪われ、83分のFWセルヒオ・アグエロの得点で引き分けに持ち込むのが精一杯だった。ここ2シーズンのCLで、シティが90分のゲームに勝てなかった相手はリヨンだけなのだ。
名勝負を演じたチームからは、ブルーノ・ジェネシオ監督が昨シーズン限りで勇退。FWナビル・フェキル(→ベティス)、MFタンギ・エンドンベレ(→トッテナム)、DFフェルランド・メンディ(→レアル・マドリード)といった選手たちも退団したものの、シティとの2試合で3ゴールを奪ったFWマクスウェル・コルネをはじめ、GKアントニー・ロペス、DFジェイソン・デナイヤー、MFフセム・アワールなどシティ撃破の原動力となった選手たちが数多く残っている。
またリヨンにとっては、FWメンフィス・デパイの復活が大きい。昨年末に前十字じん帯を負傷したエースは、コロナ禍による中断が追い風となってCL再開前に戦列復帰を果たした。するとユヴェントスとのラウンド16セカンドレグでは、“パネンカ”によるPKで先制点をマーク。ベスト8進出の原動力となった。今シーズンのCLは出場した全6試合でゴールを奪っており、シティにとっては最も警戒しなければならない選手だ。
とはいえ、シティにとって最大のポイントはどう得点を奪うか。リヨンは堅守速攻を基本戦術とし、守備時には対人能力に優れた3枚のセンターバックと両ウイングバックが5バック気味で守る。かといって、ただ引くだけでなく、選手同士がコンパクトな距離を保ち、奪えるチャンスがあれば全力でボールへアタックしにいく。連動した守備の練度は高い。
7日のユヴェントス戦では2失点を許したが、1つは微妙な判定によるPK、そしてもう1つはFWクリスティアーノ・ロナウドによるスーパーミドルで奪われた得点だった。相手に崩されて与えたゴールはひとつもない。スタメン11人中7人がイエローカードを貰ったように、激しく粘り強い守備はリヨンの真骨頂でもある。欧州最強の攻撃力を誇るシティといえども、攻略するのは容易ではない。
それでも、MFケヴィン・デ・ブライネのスペースを探し出す眼と、ピンポイントのパスを出せる技術があれば、局面を打開することは難しくないかもしれない。チーム最多の公式戦31ゴールを奪うFWラヒーム・スターリングも好調をキープ。レアル・マドリードを相手に2試合連続ゴールを決めたFWガブリエル・ジェズスも貫禄が出てきた。レアル戦でセンターフォワード(偽9番)に抜擢されたMFフィル・フォーデンをはじめ、MFリヤド・マフレズ、MFベルナウド・シルヴァ、MFダビド・シルバと多士済々のレフティーたちも控えている。ペップ・グアルディオラには有り余るほどの選択肢があるのだ。
ただ“背番号9”の不在はペップにとって痛手かもしれない。90分の一発勝負というフォーマットを考えても、リヨンはまず自陣に守備ブロックを敷いてくるだろう。ゴールを狙おうにもエリナ内にはスペースがほとんどなく、攻撃が手詰まりになる可能性がある。そうなった時、密集を苦にせず、ワンチャンスをゴールに結びつけることができるアグエロは非常に頼りになる選手だ。しかし、ひざのケガでこの試合も欠場が濃厚となっている。
シティが早い時間に先制点を奪うことができれば、その後は面白いようにカウンターが嵌り、大差がついてもおかしくない。だがリヨンが先制したり、前半を0-0のスコアレスで終えたりすれば、勝負の行方は一気に分からなくなるだろう。
フィジカルの強い選手が多く、戦術的な守備も可能で、カウンターも鋭い。リヨンはシティが最も苦手とするタイプのチームだけに、相手をどう仕留めるのか。この試合でもやはリ、ペップの采配が一つのカギとなりそうだ。
(記事/Footmedia)
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